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20代 男性のご相談

電撃傷って、どんな病気?

医師の回答

電流による組織の損傷です。

〜電気が体に流れると、皮膚の奥や内臓に深刻なダメージが残ることも〜
電流による組織の損傷です。皮膚のみならず、神経・血管、筋肉などにも損傷がおよぶことがあります。
また、不整脈を起こすこともあり慎重な経過観察を要します。

電撃傷(でんげきしょう)とは、体に電流が流れることで皮膚やその奥の筋肉、神経、内臓に損傷を与える外傷の総称です。家庭用の100Vコンセントから落雷まで原因は幅広く、見た目は小さなやけどに見えても内部では深刻な障害が進行している場合があります。事故直後に症状が軽くても、後から心臓や腎臓に影響が出ることがあり、非常に注意が必要です。
たとえば、家庭内のコンセントや電源コードの損傷による感電、電動工具使用時の事故、子どものコードかじりやコンセントへのいたずら、さらには落雷による外傷などが代表的です。落雷による電撃傷は、最重症のタイプに分類されます。

【主な原因】

  • コンセントや電源コードの破損・接触

  • 電動工具の使用中の感電事故

  • 子どものコードかじりやコンセントへのいたずら

  • 落雷による直撃または近接被害

  • 水に濡れた状態での電気接触

電撃傷が起こりやすい部位は、電流が入った「入電部」と出た「出電部」で、手や足、口の周囲などに多く見られます。乳幼児や高齢者、体が濡れた状態で電気に触れた方は、特に重症化しやすいとされます。
経過としては、事故直後に白っぽい皮膚や小さなやけどが見える程度でも、時間がたつと筋肉の壊死や不整脈、神経障害、腎臓障害などが進行する場合があります。悪化因子としては電圧の高さ、水濡れ、通電時間の長さ、ストレスや感染などが挙げられます。外見の軽さに惑わされず、早期に受診・治療を行うことが生活の質や命を守ることにつながります。

✅ 使用される治療・ケア(電撃傷/感電傷)

① 【基本情報と特徴】
▶ 電撃傷は、電流が身体を通過したことで起こる熱傷+電気的損傷+全身臓器障害を含む広範な障害です。

低電圧(家庭用100~200V) 皮膚表面の熱傷が主体。多くは軽症だが小児や湿潤部位では重症化も 特に入浴中・湿手での使用に注意
高電圧(600V以上) 電流の深部通過により筋壊死・不整脈・呼吸停止・骨折など重篤になり得る 産業・感電事故などが多い
閃絡電撃(アーク放電) 電流が直接触れずとも、空気中を通って熱傷を起こすことあり(例:雷) 衣服着用部にも熱傷あり得る


② 【初期対応(現場での応急処置)】

電源の遮断 感電現場に接触しない! → 安全を確認してから傷病者へ接近
意識・呼吸確認 心停止・呼吸停止があれば直ちに心肺蘇生(CPR)開始/119番通報
体温低下の予防 重症例では低体温になりやすいためタオル・毛布で保温
火傷があれば流水冷却 表面の熱傷部位は他の熱傷と同様に15〜30分の冷却が有効(ただし全身状態優先)
創部の被覆 清潔なガーゼ・タオルで保護(出入口部位がある)

③ 【皮膚症状(電撃熱傷)への治療】

電流進入・出力部位 黒褐色・乾燥・硬い壊死組織が典型的 III度熱傷と同様に壊死切除+植皮が必要なことが多い
周辺の浅在熱傷 発赤・水疱などが混在 軽度であれば保湿+抗菌外用(ゲーベン等)+湿潤環境保持
深部損傷の可能性 外見に乏しくても筋肉・腱・神経が損傷していることも MRI・エコー・血液検査で評価。外科的介入も検討

④ 【全身管理(必須)】

心電図・不整脈監視 電撃後24時間は心室性不整脈・QT延長などのリスクあり、モニタ管理が基本
筋壊死(クラッシュ症候群) 筋肉損傷によりミオグロビン尿症→急性腎不全の危険あり。CK・Cr・尿検査+十分な輸液管理が必須
電解質異常 カリウム・カルシウムなどの電解質逸脱により心停止リスク。電解質管理を継続的に実施
頭部外傷・骨折 電撃による転倒・痙攣での打撲・骨折(特に肩・腰)も多い。画像検査で確認
呼吸障害(特に高電圧) 胸部筋肉麻痺や横隔膜損傷による呼吸不全 → 人工呼吸管理が必要なこともあり

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:入電部と出電部の皮膚変化や、しびれ・けいれんの有無を確認します。事故状況の聴取が診断に直結するため、どのように電気に触れたかを詳しく説明することが大切です。
  • 心電図:心臓に電流が走った場合、不整脈や一過性の心停止が起きることがあります。心電図は来院直後からモニタリングを行い、異常があれば即時対応します。
  • 血液検査:筋肉が壊死するとミオグロビンが血中に流れ出し、腎臓に障害を起こします。腎機能(クレアチニンなど)や筋肉の酵素(CK値)を測定し、異常を早期に把握します。
  • 尿検査:ミオグロビン尿の有無を調べることで、筋肉損傷の程度や腎臓への影響を推定します。採尿は事故後すぐから繰り返し行われる場合があります。
  • 皮膚の評価(視診+場合によって生検):見た目の軽い熱傷に見えても、皮膚や筋肉の深部壊死が進んでいることがあります。壊死組織があれば外科的切除や植皮術を検討します。
  • 画像検査(必要時):CTやMRIで神経や深部組織の損傷を評価することもあります。特に落雷や高電圧による外傷では有用です。

🩺 電撃傷(でんげきしょう)の類似疾患

熱傷(やけど)

⇒火や熱による損傷ですが、電撃傷と同じように皮ふや深部組織が傷つきます。

化学損傷

⇒薬品による組織の破壊で、見た目や深さが電撃傷に似ることがあります。

凍傷

⇒寒さによって皮ふや組織が壊れる点で、皮ふの色や組織障害の進み方が似ています。

放射線障害

⇒放射線で皮ふや組織が破壊される病態で、進行が遅い場合もありますが組織損傷の性質は共通しています。

予防のポイント
コンセントや電源コードの破損を定期的に点検する
濡れた手で電気製品やコードに触れない
電動工具や家電は説明書に従って安全に使用する
子どもがコードを噛んだりコンセントに触れたりしないよう環境を整える
雷が近づいたら屋外作業を中止し、安全な建物内に避難する
水回り(浴室・台所)では感電防止に注意する
異常を感じたら必ず受診し、心電図などの内部評価を受ける

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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