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20代 男性のご相談

化学損傷って、どんな病気?

医師の回答

酸やアルカリによる皮膚の損傷です。

〜薬品による皮膚のやけど。「すぐに洗い流す」がカギです〜
化学損傷(かがくそんしょう)は、酸やアルカリ、強い薬品などが皮ふや目、粘膜にふれて起こるケガです。
やけどのように赤みや痛み、水ぶくれを起こすことがあり、場合によっては深くまで傷つけてしまうこともあります。
目や広い範囲にかかったときは特に危険です。まずは大量の水でしっかり洗い流し、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。

化学損傷(かがくそんしょう)とは、酸やアルカリ、溶剤などの化学物質が皮膚や粘膜に触れて起こる損傷や炎症の総称です。一般的に「化学熱傷」とも呼ばれ、火による熱傷と同様に赤みや水ぶくれ、ただれなどの皮膚障害を引き起こします。薬品によっては皮膚が白く変化し、感覚が鈍くなる場合もあり、見た目以上に深部まで損傷することがあるため注意が必要です。特にアルカリ性物質は皮膚の奥まで浸透しやすく、重症化する傾向が知られています。

たとえば、酸性物質(塩酸・硫酸・酢酸)、アルカリ性物質(水酸化ナトリウム・アンモニア)、有機溶剤(アセトン・トルエン・漂白剤)などが原因となる代表例です。それぞれ皮膚表面の凝固壊死、深部への融解壊死、皮脂を奪う作用など異なる病態を呈します。

【主な原因】

  • 酸性薬品による皮膚表面の凝固壊死

  • アルカリ性薬品による深部までの融解壊死

  • 有機溶剤による皮脂の脱落とバリア機能低下

  • 誤使用・職業曝露・家庭内での薬品事故

好発部位は、手や前腕、顔、目の周囲など薬品に接触しやすい部分です。仕事中に薬品を扱う方、掃除や実験で化学物質を使用する学生や主婦、また皮膚のバリアが弱い小児や高齢者ではリスクが高まります。

経過としては、初期に赤みやヒリヒリ感が出現し、進行すると水ぶくれや潰瘍に発展します。アルカリ損傷では症状が遅れて現れ、深部壊死や瘢痕(はんこん)形成に至ることもあります。悪化因子には不十分な洗浄、摩擦、熱、長時間の薬品残留などが挙げられます。早期に流水で洗い流し、医療機関を受診することで後遺症や瘢痕を最小限に抑えることが可能です。

✅ 使用される治療・ケア(化学損傷)

① 【基本情報と特徴】
▶ 化学損傷は、酸・アルカリ・有機溶剤・漂白剤・化粧品などが皮膚・粘膜に接触して起こる損傷で、
▶ 物質の性質・濃度・接触時間により重症度が大きく異なります。
酸性物質 塩酸、硫酸、硝酸、酢酸など 凝固壊死(たんぱく変性による比較的限局した損傷)
アルカリ 苛性ソーダ(NaOH)、アンモニア、石灰、漂白剤など 融解壊死(深部まで進行)。非常に危険
有機溶剤 ガソリン、アセトン、フェノールなど 脱脂作用・毒性反応を含むことが多く、刺激性が強い
その他 ヘアカラー剤、除毛剤、農薬、家庭用洗剤など 症状は軽度でも、遅発性の反応やアレルギー性反応を伴うことあり

② 【初期対応(応急処置)】
▶ 接触後すぐの処置が最重要! ここでの対応が予後を大きく左右します。
直ちに大量の流水で洗い流す 15〜30分以上、可能な限り早く! 水圧は優しく、痛みのない水温で。衣類の上からでもまず洗浄優先。
衣類・装飾品の除去 薬剤が付着した衣服、時計、アクセサリーは速やかに外す。ただし皮膚に張り付いている場合は無理に剥がさない
洗浄後も痛みが残る場合 遅延損傷の可能性があるため、必ず医療機関で診察を受ける
目・口・陰部に付着した場合 専門的対応が必要。応急洗浄後すぐに救急外来や眼科へ


③ 【症状別の外用薬治療(洗浄後)】
発赤・ヒリヒリ(I度程度) 保湿剤(ワセリン・ヒルドイド・アズノールなど) 表皮ダメージのみ。湿潤環境を保ち皮膚バリアを回復
水疱・びらん(II度以上) 抗菌軟膏(ゲーベン・ソフラチュール・アズノール)+創傷被覆材 滲出液が多い場合はガーゼやハイドロコロイド材で保護
化膿兆候あり 抗菌外用(フシジン酸軟膏など)+必要時内服抗生剤(セフェム系など) 感染防止目的。びらん・潰瘍部位は清潔・湿潤管理が重要
強い炎症がある場合 ステロイド外用(ロコイド〜リンデロン)※短期使用 痛み・赤みが強い時に短期間のみ医師判断で使用

④ 【全身管理・必要時の処置】
痛み強く日常生活に支障がある アセトアミノフェン、NSAIDsなどの鎮痛薬を使用
広範囲・顔面・粘膜などの損傷 熱傷同様の評価・管理が必要。皮膚科・形成外科・救急での対応を推奨
感染兆候がある場合 膿・発赤・発熱・悪臭などあれば抗菌薬投与+創部管理
創傷治癒が長引く or 色素沈着・瘢痕 医療用トラネキサム酸・ハイドロキノン外用・ステロイドテープ・レーザーなど瘢痕予防治療も検討可能

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:損傷部位の色調、水疱や壊死の有無を観察し、使用薬品や曝露時間を確認します。受傷直後から評価され、経過観察にも用いられます。

  • 皮膚生検:損傷の深さが不明な場合に行い、組織壊死の程度を確認します。局所麻酔で小さな皮膚を採取し、数日後に結果が得られます。瘢痕が残る可能性があるため適応は慎重です。

  • 細菌培養検査:ただれや滲出液がある場合に行い、二次感染の有無を調べます。膿や滲出液を採取して数日培養し、抗菌薬の選択に役立ちます。

  • 血液検査:全身症状が疑われる場合や広範囲損傷では、炎症反応(CRP、白血球数)や腎機能・肝機能を確認します。重症度の判定や全身管理に必要です。

  • 眼科検査(洗眼後):薬品が目に入った場合は、角膜や結膜の損傷を細隙灯顕微鏡で評価します。視力障害の有無を早期に確認することが重視されます。

  • ダーモスコピー:皮膚鏡を用いて微細な血管や皮膚構造の変化を観察します。視診ではわかりにくい境界や深さの評価に補助的に使われます。

🩺 酸とアルカリでは対応も異なります!

強酸 塩酸・硫酸・酢酸など

⇒表層を凝固壊死させる(表面で止まることも)

強アルカリ 漂白剤・アンモニア・水酸化ナトリウムなど

⇒皮膚の深部まで進行しやすく、重症化しやすい!

有機溶剤 灯油・ベンゼン・塗料用シンナーなど

⇒脱脂・刺激・揮発性が高く、皮膚バリアを破壊しやすい

予防のポイント
化学物質を扱うときは必ず手袋・ゴーグル・マスクを着用する
使用後は石けんでしっかり手洗いし、皮膚に残留させない
子どもの手の届かない場所に薬品を保管する
容器のラベルを必ず確認し、別容器に移し替えない
皮膚が乾燥しないよう保湿ケアを行う
薬品を扱う作業場は十分に換気する
万一の接触に備え、流水設備や洗眼器を近くに設置する
少量でも皮膚に異常を感じたらすぐに洗浄し、受診を検討する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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