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20代 男性のご相談

III度熱傷って、どんな病気?

医師の回答

Ⅲ度の熱傷(やけど)は、皮ふの全て(表皮から真皮の奥まで)や、さらにその下の脂肪や筋肉にまでダメージがおよぶ深いやけどです。

〜痛みがないのに皮膚が白く…深いやけどかもしれません〜
皮下組織までおよぶ熱傷で、皮膚は硬く、水疱の形成は観られず乾燥しています。皮膚の再生は期待できないので、
原則として手術が必要となります。
広範囲に及ぶ場合には熱傷性ショック状態を呈し、救命処置を要しますので、救命救急センターと連携して治療が必要です。

III度熱傷(さんどねっしょう)とは、皮膚の最も深い層である真皮全層から皮下組織にまで損傷が及ぶ重度のやけどです。外見上は白色や黒色、炭化したように見えることがあり、神経まで損傷しているため痛みをほとんど感じないことも特徴です。自然治癒は難しく、植皮術などの外科的治療が必要となる場合が多くあります。受傷からの処置が遅れると、感染や瘢痕(はんこん)、関節の動きの制限といった後遺症を残す危険が高い病態です。

たとえば、火炎や熱湯による広範囲のやけど、ストーブや湯たんぽによる低温やけど、電気や化学薬品による損傷などが代表的です。皮膚が白く乾いたり、黒く炭化したように硬くなる所見がよく見られます。

【主な原因】

  • 高温の液体や炎による深いやけど

  • 長時間の熱源接触による低温やけど

  • 電流による電撃傷

  • 酸・アルカリなどの化学物質の接触

  • 爆発や火災現場での高温曝露

好発部位としては、火災や事故で露出しやすい顔、首、手足、関節部位などが多く、乳幼児や高齢者、持病を持つ方では特に重症化しやすいとされています。

経過としては、初期に水ぶくれを形成せず皮膚が白色や黒色に変化し、乾燥や収縮が進行します。時間がたつと壊死組織が残り、自然再生は困難となります。さらに慢性期には瘢痕の硬化や苔癬化〔たいせんか〕が起こり、関節部位では拘縮による機能障害につながることもあります。乾燥、感染、摩擦や圧迫といった要因で悪化することが多く、早期に適切な治療を受けることが生活の質を守る上で非常に重要です。

✅ 使用される治療・ケア(III度熱傷)

① 【基本情報と特徴】
▶ III度熱傷は表皮・真皮を超えて皮下脂肪や筋膜にまで達する深在性のやけどで、自然治癒がほぼ困難な重症です。
深さ 皮膚全層+皮下組織まで損傷(場合により筋肉・骨まで)
外観 白色・黄褐色・黒色・炭化。乾燥・硬結・皮膚の可動性低下あり
痛み 痛みなし or 鈍い(神経終末まで損傷されているため)
水疱 基本的に形成しない。皮膚が壊死・硬化している
治癒経過 自然治癒はほぼ不可能。外科的治療(壊死組織除去・植皮など)が原則



② 【初期対応(救急時)】
冷却(15〜30分) 広範囲でなければ冷却を実施。ただし低体温に注意し、特に小児・高齢者では慎重に管理
衣類・異物除去 服・装飾品(指輪・ブレスレットなど)は腫脹前に早期除去。皮膚に張り付いていれば無理に剥がさない
輸液開始(広範囲熱傷時) 体表面積15〜20%以上の熱傷ではバーク法・パークランド法などに基づく輸液管理が必要
保温 創部を冷却した後は体温低下を防ぐため保温(特に小児)
創部覆う処置 感染予防・乾燥防止に滅菌ガーゼ・ラップで被覆。軟膏や薬剤は医師の指示に従う

③ 【入院管理・全身治療】
病院・専門科受診 熱傷センター、形成外科、救急外来などへ即時紹介
感染管理 創部壊死による敗血症・蜂窩織炎を予防。抗菌薬(点滴)・清潔管理が必須
栄養管理・代謝補正 熱傷後は高代謝・高カロリー状態となるため、**早期の栄養管理(経腸・中心静脈)**が重要
疼痛・精神的ケア 意識がある場合は強い痛み・不安に対して鎮痛・抗不安薬、精神的サポートが必要
輸液管理 パークランド法などで**体表面積 × 4 mL × 体重(kg)**を目安に24時間以内に投与
呼吸管理 吸引性熱傷(口・鼻周囲)では気道熱傷や浮腫による呼吸障害のリスクあり、早期挿管の判断が必要

④ 【外科的治療】
▶ III度熱傷では保存的治療では治癒しないため、外科的デブリードマン+植皮術が原則
壊死組織切除(デブリードマン) 感染源・壊死組織を切除し、肉芽形成や植皮の準備を行う
植皮術(自家皮膚移植) 大腿・臀部などから健常皮膚を採取し移植。自家植皮が基本(他家・人工皮膚併用もあり)
皮膚拡張術・再建術 広範囲・関節拘縮のある場合は再建外科的手術が複数回必要なことも
リハビリ・瘢痕対策 関節拘縮・瘢痕肥厚を防ぐため、理学療法士と連携して早期の可動域訓練・圧迫療法・シリコンシート使用などを併用

⑤ 【予後管理・注意点】
感染リスク 感染は最も重篤な合併症のひとつ。毎日の創部観察・全身状態の把握が必要
瘢痕・色素沈着・拘縮 瘢痕予防に圧迫療法・保湿・シリコンジェル・ステロイド外用・レーザー治療などを長期間行うことも
精神的サポート 小児・成人ともにやけどに対するトラウマやQOL低下が大きくなるため、心理的フォローが重要
社会復帰支援 広範囲熱傷後は教育・就労支援、外見ケアなどの多職種支援が必要になることも(特に学童期〜思春期)

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:皮膚の色調や乾燥、壊死の有無を確認し、受傷状況や経過を詳しく聴取します。痛みの程度や水ぶくれの有無も判断材料となります。
  • 熱傷深度判定(臨床スケールや皮膚鏡):やけどの深さを評価する目的で、皮膚鏡や経験的なスケールを用いて観察します。深達度により手術の必要性を検討します。
  • 血液検査:炎症反応(白血球数・CRP)、感染の有無、腎機能や電解質バランスを確認します。広範囲熱傷では循環動態への影響を把握することが重要です。
  • 細菌培養検査:創部から滲出液を採取し、細菌感染の有無と起因菌を調べます。感染がある場合は抗菌薬の選択に役立ちます。
  • 皮膚生検:熱傷の深さの判定が難しい場合に局所麻酔下で皮膚片を採取し、組織学的に評価します。瘢痕形成リスクの見極めにも用いられます。
  • 画像検査(必要時):電撃傷や深部組織損傷が疑われる場合は、MRIや超音波で筋肉・腱の状態を確認します。

🩺 他の熱傷との違いは?

I度

⇒表皮 赤くヒリヒリ 強い 数日で自然治癒

II度(浅達)

⇒真皮浅層 ピンク・水ぶくれ とても痛い 約1〜2週間で回復

II度(深達)

⇒真皮深層 白っぽい・湿っている 鈍い痛み 2〜3週間以上/跡が残ることも

III度

⇒皮下組織まで 白・黒・乾燥・無感覚 感じにくい 自然治癒しない/手術が必要

予防のポイント
熱湯や油を扱うときは子どもや高齢者の近くに置かない
ストーブや湯たんぽ、カイロは長時間直接肌に触れさせない
電化製品のコードやコンセントを点検し、感電を防ぐ
化学薬品を取り扱う際は手袋や保護具を着用する
衣服に火が燃え移らないよう耐火性のある衣類を選ぶ
キッチンや工場では消火器や流水設備を整備する
日常的に火気や熱源から安全な距離をとる
疑わしいやけどが起きたらすぐに流水で冷却し、医療機関を受診する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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