
20代 男性のご相談
II度の熱傷って、どんな病気?

医師の回答
Ⅱ度の熱傷(やけど)は、皮ふの表面(表皮)だけでなく、その下の部分(真皮の一部)まで傷ついたやけどです。

〜「ちょっと赤くなっただけ…?」〜
真皮におよぶ熱傷で、水疱(水ぶくれ)を形成します。真皮の表層までの浅いII度熱傷と真皮深層におよぶ深いII度熱傷があります。
真皮の表層までの浅いII度熱傷と真皮深層におよぶ深いII度熱傷があります。
浅いII度熱傷は軟膏や創傷被覆材による治療を行うことで2週間以内に治り、一時的な色素沈着を生じることがありますが、キズアトを残さずに治ります。
II度熱傷(にどねっしょう)とは、皮膚の表面(表皮)だけでなく、その下にある真皮層まで損傷が及ぶやけどの総称です。浅達性(せんたっせい)と深達性(しんたっせい)に分けられ、症状の重さや治癒の経過に違いがみられます。II度熱傷は赤みや水ぶくれを特徴とし、痛みを強く伴うことが多いですが、深達性では逆に鈍痛や無痛となる場合もあります。水ぶくれが形成された場合は、II度熱傷の可能性が高く、適切な処置が重要です。
たとえば、浅達性II度熱傷は赤く湿った皮膚と水ぶくれが見られ、1〜2週間ほどで跡を残さずに治ることが多いです。一方、深達性II度熱傷では皮膚が白っぽく褪色し、治癒まで数週間から1か月以上かかり、色素沈着や瘢痕〔はんこん〕のリスクを伴います。熱湯、油はね、アイロンやストーブの接触、湯たんぽやカイロによる低温熱傷などが代表的な原因です。
【主な原因】
熱湯や汁物が皮膚にかかる
油はねや高温の器具に触れる
湯たんぽやカイロによる長時間の加温
電気あんかやヘアアイロン、ストーブとの接触
II度熱傷は顔、手指、足、関節部、陰部などの皮膚に生じやすく、特に小児や高齢者は皮膚が薄く弱いため重症化しやすい傾向があります。体格が小さいほど広範囲に及ぶリスクも高く、注意が必要です。
経過としては、初期に赤みや水ぶくれが現れ、破れると滲出液が出て感染リスクが高まります。放置すると掻破や摩擦で悪化し、慢性化すると瘢痕や色素沈着を残すことがあります。悪化因子として乾燥、摩擦、紫外線、汗や熱、感染が知られています。早期に受診し、医師の管理のもとで適切に治療を行うことが、きれいに治し生活の質を保つために大切です。
✅ 使用される治療・ケア(II度熱傷)
① 【基本情報と分類】
▶ II度熱傷は表皮より深く真皮まで損傷した熱傷で、深さによって治癒経過や瘢痕リスクが異なります。
II度浅達性(浅層) 赤み+水疱あり、痛み強く、湿潤、出血しない。毛包・汗腺は残存。 約1〜2週間で瘢痕なく治癒可能
II度深達性(深層) 白っぽく、痛みは軽減(感覚鈍麻)、血流悪化・出血しやすい 治癒に3週間以上。瘢痕・色素沈着を残すことあり
② 【初期対応】
冷却(流水で15〜30分) 深達度を浅く抑え、痛みと炎症を軽減します。水疱の形成予防にも有効。氷は使用しない。
水疱処理(破れていない場合) 原則、無理に潰さず保護する。ただし大きな水疱や破れそうな場合は医療機関で切開・除去が推奨されます。
衣類の扱い 粘着・圧迫があれば剥がさずにそのまま冷却・受診を勧めます。
③ 【外用薬治療】
銀含有外用薬 ゲーベンクリーム(スルファジアジン銀) 抗菌作用+湿潤維持。特にII度深達性に使用されることが多い
抗炎症・肉芽促進軟膏 アズノール軟膏、ソフラチュール軟膏 II度浅達性で保湿・治癒促進を目的に使用
ハイドロコロイド製剤 デュオアクティブなどの創傷被覆材 滲出液が多い時に。痛み軽減・保護に有効だが感染リスクあり、毎日の観察が必要
ステロイド外用薬(補助) リンデロン-VGなど(感染+炎症時) 原則として使用は慎重。感染兆候がある場合や重度炎症時に医師判断で使用
抗菌外用薬 フシジン酸ナトリウム(フシジンレオなど) 軽度の感染予防に使用。単独使用では不十分なことが多い
④ 【全身管理・内服治療】
鎮痛・解熱薬 アセトアミノフェン、NSAIDsなど。II度熱傷は痛みが強いため積極的に使用
抗菌薬(感染時) セファレキシン、クラブラン酸・アモキシシリンなど。膿・発赤・悪臭・発熱時に内服併用を検討
水分・電解質補正 広範囲の場合や乳幼児では経口補水 or 点滴管理が必要
破傷風トキソイド接種 汚染創・破傷風ワクチン未接種例では予防目的で検討
⑤ 【受診・紹介の目安】
顔・関節・手・足・会陰部の熱傷 機能・整容上重要な部位は形成外科・皮膚科紹介が望ましい
3週間以上治癒しない or 肉芽形成悪い 瘢痕・拘縮のリスクあり。外科的介入や再評価を検討
明らかな感染所見(膿・悪臭・発熱)あり 重度化・蜂窩織炎などの合併予防に早めの抗菌薬開始・受診が必要
小児や高齢者、広範囲の熱傷 脱水・低体温・二次感染のリスク高いため、経過観察強化
◆ 病院で何を調べるの?
視診・問診:受傷の経緯や原因を確認し、水ぶくれの有無や皮膚の色調を観察します。深さや範囲を総合的に評価する基本の検査です。
熱傷深度判定(臨床評価):皮膚の色、湿潤度、痛覚の有無を確認し、浅達性か深達性かを判断します。治療方針の決定に重要です。
体表面積の測定:熱傷の広がりを9の法則や手掌法で算定します。治療や入院の必要性を判断する基準になります。
血液検査:重症例では電解質バランス、腎機能、炎症マーカーを確認します。脱水や全身合併症の有無を把握するために行われます。
細菌培養検査:水ぶくれが破れた部位や滲出液から培養し、感染の有無を調べます。抗菌薬の選択に役立ちます。
皮膚生検:治癒が遅れて深さが不明な場合に実施されることがあります。局所麻酔で皮膚を採取し、組織学的に確認します。
🩺 II度熱傷はさらに2つに分類されます!
浅達性 II度(浅い)⇒表皮のすぐ下まで 明るいピンク/湿ってる/痛みが強い 1〜2週間で治る/跡は残りにくい
深達性 II度(深い)
⇒真皮の深部まで達する 白っぽく鈍い/痛みが少ないことも 2週間以上かかる/色素沈着・瘢痕のリスクあり
予防のポイント 熱湯や油を扱う際は、子どもや高齢者の近くでこぼさないよう注意する
湯たんぽやカイロは直接皮膚に当てず、カバーやタオルで包んで使用する
ストーブやアイロンの近くに長時間いないようにする
入浴時や調理中は火や熱湯の位置に気を配る
日常的に皮膚を保湿して乾燥や摩擦を防ぐ
水ぶくれを見つけても絶対に破らず、清潔に保護する
紫外線対策を行い、治癒後の色素沈着を予防する
異常を感じたら早めに皮膚科や救急外来を受診する
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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