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20代 男性のご相談

I度の熱傷って、どんな病気?

医師の回答

Ⅰ度の熱傷(やけど)は、皮ふの表面(表皮)だけが傷ついた浅いやけどです。

〜「ちょっと赤くなっただけ…?」〜
表皮のみの熱傷で、赤くなるだけですが痛みを伴います。通常3〜4日でキズアトを残さずに治ります。
「日焼け」はI度熱傷です。

I度熱傷(いちどねっしょう)とは、皮膚の最も外側である表皮に限局して生じる軽度の熱傷(やけど)の総称です。皮膚が赤くなり、ヒリヒリとした痛みや熱感を伴いますが、水ぶくれ(水疱)は生じません。多くは数日から1週間ほどで自然に治癒し、跡が残ることは少ないとされています。日焼けもI度熱傷に含まれ、身近で頻度の高い皮膚障害です。

たとえば、日焼けによる皮膚の赤み、湯たんぽやカイロ、こたつなどでの熱刺激、調理中のフライパンやアイロンに一瞬触れた場合、熱湯やお茶が少しかかったときなど、日常生活のさまざまな場面でI度熱傷が起こります。これらは表皮に限定した損傷であるため、軽度と位置づけられますが、放置すると乾燥や色素沈着を残すこともあります。

【主な原因】

  • 熱湯やお茶が皮膚にかかる

  • フライパン・アイロンなど熱い物に触れる

  • 湯たんぽ・カイロ・こたつの熱刺激

  • 紫外線による日焼け

  • 摩擦による軽度の熱損傷

好発部位は顔、手の甲、前腕、脚など、日常生活で熱や紫外線にさらされやすい場所です。乳幼児や高齢者、皮膚の薄い人は、わずかな刺激でもI度熱傷を生じやすく注意が必要です。

経過としては、受傷直後に赤みと痛みが出現し、その後数日で皮膚がむけることがあります。掻き壊しや乾燥が加わると、二次的な炎症や色素沈着を残すこともあります。日焼け後や熱による刺激が続くと悪化しやすく、保湿や紫外線対策を怠ると治りが遅れる場合もあります。早めに適切な処置を行うことで、自然治癒を助け、きれいに治すことが期待できます。

✅ 使用される治療・ケア(I度熱傷)

① 【基本情報と特徴】
▶ I度熱傷は表皮のみが損傷した最も軽い熱傷で、痛み・赤み・軽度の腫れを伴うが、水疱は形成しないのが特徴です。
深さ 表皮(皮膚の最も外側)に限局
外観 発赤・ヒリヒリ感・軽い腫れ(腫脹)・乾燥感
痛み 比較的強いヒリヒリとした痛み
水疱形成 なし
治癒期間 数日~1週間以内に自然治癒し、瘢痕は残らない



② 【初期対応(応急処置)】
▶ I度熱傷もすぐの処置が軽快を早めるポイント
冷却(流水で15〜30分) 痛みを和らげ炎症を抑える。患部を冷やすだけで症状が大きく軽減することも
清潔保持 石けんでやさしく洗い、汚染・摩擦を避ける
衣類は剥がさない 接触している衣類を無理に剥がすと皮膚剥離のリスクあり。流水で一緒に冷やす

③ 【外用薬・スキンケア】
▶ I度熱傷では保湿・鎮痛・炎症軽減が中心(感染対策は基本的に不要)
保湿剤(皮膚バリア回復) ヒルドイド、ワセリン、ビーソフテンなど 乾燥予防と皮膚の再生促進。1日2〜3回やさしく塗布
炎症抑制・鎮痛外用薬 アズノール軟膏、アロエ軟膏など 軽度の炎症や赤みに。ステロイドは通常不要だが、強い赤みに一時的に処方されることもあり
鎮痛・解熱内服薬 アセトアミノフェンなど ヒリヒリ感・不快感が強ければ一時的に使用


④ 【日常生活での注意点】
摩擦・圧迫を避ける 衣類・タオルなどが当たると痛みや悪化につながることがある
入浴・洗顔OK 優しく洗って問題なし。ただし強くこすらない・熱すぎない湯を使用する
紫外線対策 炎症後の色素沈着予防に日焼け止めや遮光テープが有効(治癒後もしばらく続けると良い)
化粧・保湿化粧品は慎重に 特に顔面の場合は刺激の少ない保湿剤・UVケア製品を選ぶ

⑤ 【受診の目安】

状況 コメント
広範囲に赤みがある場合 体表面積の5%以上に及ぶような場合は全身状態に注意(特に乳児)
赤みや痛みが長引く 通常は数日〜1週間で改善。1週間以上続く・悪化傾向があれば受診を
水疱が出現した場合 I度より深い熱傷(II度以上)の可能性。水疱は破らず、速やかに医療機関で処置
顔面・陰部・関節・小児の場合 たとえ軽度でも、機能的・整容的に大事な部位は専門的な観察が推奨される

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:皮膚の赤みや熱感の範囲、水ぶくれの有無を確認します。受傷直後から可能で、原因や受傷時間も聞き取ることで重症度を見極めます。
  • 触診:患部の熱感や圧痛を確かめ、炎症の範囲を推定します。痛みを伴うため優しく行う必要があります。
  • 皮膚水分量測定:乾燥の程度を測定し、保湿や外用薬の必要性を判断します。専用機器をあて数秒で測定可能です。
  • 感染評価(細菌培養):赤みが広がる、膿が見える場合には感染の有無を確認します。滲出液や皮膚表面を採取し、数日後に結果を判定します。
  • 血液検査(必要時):広範囲の日焼けや熱傷で全身症状がある場合に、炎症反応や水分バランスの確認のため実施します。特に小児や高齢者で重症度を判断する際に役立ちます。

🩺 I度熱傷と見分けにくい症状は?

日焼け(サンバーン)

⇒I度熱傷とほぼ同じ/紫外線による熱傷 広範囲に赤く、皮がむけてくることもある

虫刺されやかぶれ

⇒赤くなってヒリヒリする 周囲がかゆくなったり、ポツポツが出ることが多い

II度熱傷

⇒水ぶくれあり/やや白っぽい・痛み強め 感覚過敏があり、治るのに1〜2週間かかることも

予防のポイント
日常生活で熱い物に触れないよう注意する
湯たんぽやカイロは直接肌に当てず、必ずカバーを使う
長時間の直射日光を避け、日焼け止めや帽子で紫外線を防ぐ
入浴や洗浄時は刺激の少ない石けんを使う
保湿剤をこまめに塗り、乾燥を防ぐ
掻かずに冷却や外用薬で炎症を抑える
子どもや高齢者の皮膚は特に注意して観察する
皮膚が赤くなったら早めに冷却・保護を行う

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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