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60代 男性のご相談

眼瞼下垂症(加齢性)ってどんな病気?

医師の回答

眼瞼下垂症とは、上瞼(うわまぶた)が下がってきて、物が見えにくくなってくる状態のことをいいます。

〜まぶたが下がって目が重い…それ、加齢によるまぶたの「たるみ」かも!?〜
眼瞼下垂症とは、上瞼(うわまぶた)が下がってきて、物が見えにくくなってくる状態のことをいいます。それには、生まれつきの先天性眼瞼下垂症と
後天性の眼瞼下垂症があります。後天性の眼瞼下垂症のほとんどは、加齢性眼瞼下垂症といって、年齢とともに上瞼の皮膚がたるんだり、
上瞼をもち上げる筋肉が伸び切ったり、固定部がゆるんだりするのが原因です。

眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)とは、上まぶたが垂れ下がって目が開けにくくなる状態を指します。加齢に伴ってまぶたの筋肉や腱膜(けんまく)がゆるむことで起こることが多く、40〜50代以降でよくみられます。まぶたが黒目にかかる、額にシワを寄せて無理に目を開ける、目の疲れや肩こり・頭痛が出るといった症状が特徴です。見た目にも「眠そう」「老けて見える」といった印象を与えることがあります。

眼瞼下垂症には、加齢に伴うもののほか、生まれつきの先天性眼瞼下垂や、外傷や神経・筋疾患に伴う後天性眼瞼下垂などがあります。加齢性ではアイメイクやコンタクトレンズの長期使用、まぶたをこする習慣が悪化因子になることがあります。

【主な原因】

  • 眼瞼挙筋や腱膜のゆるみ(加齢による変化)

  • 長年のアイメイクやコンタクトレンズ使用による負担

  • まぶたをこする癖などの慢性的な刺激

  • 外傷や神経・筋疾患に伴う異常

好発部位は両側の上まぶたで、左右差を伴うこともあります。特に中高年の方に多く、まれに若い世代でも発症します。乳児や小児では先天性として見られることがあります。

経過としては、初期には軽度の下がりや疲れやすさにとどまりますが、進行すると視野が狭くなり、額や眉毛の筋肉で代償的にまぶたを持ち上げるため頭痛や肩こりにつながることがあります。慢性的には目元の印象が変化し、心理的負担も生じます。乾燥、摩擦、疲労などが悪化因子となります。早期に受診し治療を行うことで、視野の改善とともに生活の質が向上します。

✅ 使用される治療・ケア

① 【基本情報と特徴】
▶ 加齢に伴う「まぶたの開きにくさ」や「目の重だるさ」が主な症状
原因 主に上眼瞼挙筋腱膜のゆるみ・外れ(腱膜性眼瞼下垂)
発症時期 50〜70代以降に多く、加齢+まぶたの擦れ・長期コンタクト使用もリスク
自覚症状 目が開けにくい、視野が狭くなる、まぶたが重たい、額にシワが増えた、夕方に悪化など
両側性が多い 片側から始まることもあるが、多くは左右差ありつつも両眼に症状あり

🔹 進行すると日常生活・運転・読書・外見に支障をきたすこともある。

② 【保存的治療(軽症・希望がない場合)】
▶ 薬での改善は困難。症状が軽ければ経過観察も可
点眼薬(イプシロンアミノカプロン酸など) 抗炎症目的などで使われることがあるが、眼瞼下垂への効果は乏しい
眼瞼挙筋トレーニング 一部で紹介されているが、エビデンスは少なく推奨されない
アイプチ・テープなど 一時的に見た目を整えるが、皮膚炎やかぶれの原因になることもある

🔹 見た目・視野・疲労感の改善には手術が最も有効。

③ 【根本治療:眼瞼下垂症手術】
▶ 腱膜性眼瞼下垂に対する挙筋腱膜前転術が第一選択
挙筋腱膜前転術(保険適用) ゆるんだ上眼瞼挙筋腱膜を前方に縫い縮め、まぶたの開きを改善する手術。局所麻酔で日帰り可
皮膚切除併用 たるみ・しわが強い場合は余剰皮膚も切除することで、すっきりした見た目になる
ミュラー筋短縮術 腱膜のゆるみが少なく、軽症で眼瞼挙筋の反応が良好な場合に選択(主に眼科で実施)
前頭筋吊り上げ術 筋力低下が強い例や重症例に。おでこの筋肉と連結して瞼を上げる。小児や神経疾患ではこの術式が主流

🔹 保険適用(両眼:約4〜5万円程度)で、見た目だけでなく視機能の改善効果も高い。

④ 【術後の経過と注意点】
腫れ・内出血 1〜2週間程度で軽快。まぶたが少し左右差を持つのは一時的なことが多い
ドライアイ・違和感 目が開きやすくなることで起こることあり。点眼などで対処可
再発・過矯正 ごくまれに再手術が必要になることもある(初回手術での調整精度が重要)
メイク・洗顔制限 洗顔は3日後から、メイク・コンタクトは1〜2週間で再開可能

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:まぶたの下がり具合や左右差、開瞼の状態を確認します。日常生活への支障や症状の経過を丁寧に聞き取ることで、加齢性か他の要因かを判断する材料となります。
  • 視野検査:上方の視野がどの程度遮られているかを測定します。保険適応の手術可否を判断する上で重要な検査であり、通常は専用機器で数十分かけて行われます。
  • 眼瞼挙筋機能検査:まぶたを持ち上げる筋肉の働きを数値化します。あごを固定しながら目を動かし、まぶたの可動域を測定する方法で、術式の選択に直結する情報となります。
  • 写真記録(眼瞼写真):正面・側面からの写真を撮影し、症状の客観的な記録とします。手術前後の比較にも用いられ、診断のエビデンスとして残されます。
  • 血液検査や神経学的評価:神経・筋疾患(重症筋無力症など)が疑われる場合に行います。異常があれば他科との連携が必要になり、治療方針が変わることもあります。
  • 眼科的検査(角膜・結膜の確認):まぶたの下垂による角膜乾燥や眼表面への影響を確認します。ドライアイや結膜炎を併発していないかをみることができ、術後合併症の予測にも役立ちます。

🔍眼瞼下垂と間違えやすい病気(類似疾患)


 眼瞼けいれん

⇒まぶたが勝手にピクピクしたり閉じてしまう 自分で力を入れて開けないと目が開かないことも 

ボトックス後の下垂

⇒美容注射の影響で筋肉が緩んで下がる 片側だけに起こる/注射後1週間以内に出現することが多い

 薬の副作用

⇒睡眠薬や抗うつ薬でまぶたが重くなることも 薬を飲み始めたタイミングと一致する

 脳神経の異常

⇒脳梗塞や神経障害で急に片方のまぶたが下がる 急な片側性・ろれつが回らない・手足の動きに異常があるなども伴う

 先天性下垂

⇒生まれつき片側のまぶたが下がっている 幼少期から症状がある/視力発達への影響も

予防のポイント
まぶたを強くこすらないようにする
コンタクトレンズは適切に使用し、長時間装用を避ける
アイメイクやクレンジングは刺激の少ない方法を選ぶ
十分な睡眠と休養で目の疲労を防ぐ
パソコン・スマートフォンの長時間使用を控える
紫外線や乾燥から目元を守るスキンケアを行う
目の違和感や視野の変化があれば早めに受診する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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