
20代 女性のご相談
カンジダ皮膚炎ってどんな病気?

医師の回答
真菌と呼ばれるカンジダ菌が原因でおこる皮膚炎です。
〜ムレやすい部位に赤みやただれ…それ、カビの一種が原因かも!?〜
真菌と呼ばれるカンジダ菌が原因でおこる皮膚炎です。おしり、わきの下、股のしわの間が赤くなり、少し皮がむけたようになります。
まわりに赤い丘疹やニキビのような膿を持った赤い丘疹を伴うこともあります。おむつかぶれに合併してよく見られます。
抗生物質を内服しているときや体調を崩して抵抗力が落ちている時にも出やすくなります。
カンジダ皮膚炎(皮膚カンジダ症)とは、カンジダ菌という真菌(カビの一種)が皮膚で異常に増殖することで炎症を起こす疾患です。高温多湿の環境やムレやすい部位に生じやすく、赤み・ただれ・かゆみ・ヒリヒリ感などがみられます。健康な方にも起こり得ますが、乳児・高齢者・免疫力が低下している方に多く見られるのが特徴です。日常的に存在する常在菌であるカンジダ菌が、バランスを崩した時に発症する点がポイントです。
たとえば、首のしわや脇、そけい部、乳房下、おむつの中、指の間など、汗や湿気がこもりやすい部位に好発します。おむつ皮膚炎や単なるあせも、湿疹などと見分けがつきにくい場合もありますが、周囲に小さな赤い発疹(衛星病変)が散在することが鑑別の目安とされます。
【主な原因】
高温多湿や汗によるムレで皮膚がふやける
通気性の悪い衣類やおむつ、靴下の長時間使用
免疫力の低下(病気・疲労・薬の影響など)
乳児や高齢者など皮膚バリア機能の弱さ
抗生剤やステロイド薬の使用により菌バランスが崩れる
好発部位は、首のしわ、腋の下、そけい部、乳房の下、指の間、おむつ内などの湿潤部です。とくに乳児ではおむつの中に広範囲に赤みや小丘疹がびっしりと出ることがあります。高齢者や免疫の弱い方にも発症しやすく、再発を繰り返す例も少なくありません。
経過は、初期には赤みと軽いかゆみで始まり、悪化するとただれやジュクジュクした浸出液が見られ、皮膚が白っぽくふやけることもあります。慢性化すると境界のはっきりした紅斑と衛星病変が目立ち、日常生活に支障をきたします。発汗・摩擦・長時間の湿潤環境は悪化因子となるため注意が必要です。早期に受診して抗真菌薬を使用することで、症状の広がりや再発を防ぎ、生活の質を保つことにつながります。
✅ 使用されるお薬・ケア
① 【軽症〜中等症(赤み・びらん・皮膚のただれなど)】
▶ 抗真菌薬の外用(カンジダへの直接的治療)
クロトリマゾール カネステン、エンペシドなど(市販・処方) 小児や乳児にも使用される定番抗真菌薬
ミコナゾール硝酸塩 フロリードDクリーム、メディトリートなど 白癬・カンジダ両方に使用可能、抗菌成分併用製剤もあり
ケトコナゾール ニゾラール軟膏 やや強力な抗真菌薬。びらんや浸出液が強いときに有効
🔹 1日1~2回、患部より広めに塗布。数日で改善しても、1週間程度は継続使用が推奨。
② 【炎症やかゆみが強い場合】
▶ 抗炎症薬(ステロイド)との併用外用 or 抗ヒスタミン薬
ミコナゾール+ステロイド配合 フロリードDクリームなど 抗真菌+抗炎症、びらんやかゆみが強いときに使用
抗ヒスタミン薬(内服) アレグラ、ザイザルなど 掻き壊し防止に。かゆみが強いときのみ使用
🔹 ステロイド外用は短期間のみ(数日~1週間程度)、改善後は単独抗真菌薬に切り替える。
③ 【再発予防・スキンケア】
▶ 清潔・乾燥・通気が重要
おむつ・下着のこまめな交換 特におむつ部位のカンジダ皮膚炎は蒸れが主因になるため重要
石けんでやさしく洗浄 強くこすらず、ぬるま湯で丁寧に洗い、よく乾かす。刺激の少ない保湿剤も補助的に使用可
通気性の良い服を選ぶ 汗をかきやすい首・わき・足の指間にも注意
🔹 湿った環境を好むカンジダ菌の性質上、「清潔+乾燥」が治療と再発防止の基本。
④ 【注意すべき症状・受診の目安】
治療しても改善しない 他の疾患(とびひ・乳児湿疹など)との鑑別が必要
発熱や全身症状がある 外用で対応しきれない可能性 → 医師の診察を推奨
爪や粘膜にも病変がある 全身性カンジダ症の可能性も。専門的評価が必要なケースもあり
⑤ 【よくある部位と見た目の特徴】
おむつ部(股関節・お尻) 辺縁がはっきりした赤み+小水疱・びらん、衛生環境が影響
指の間、わきの下 湿った部位に好発。亀裂や赤み、小膿疱が出ることも
乳児の首まわり よだれやミルクの湿気で発症。乳児脂漏性皮膚炎との鑑別が必要
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・問診:発疹の分布や特徴(衛星病変、浸軟の有無)を確認します。おむつかぶれや湿疹との鑑別に重要です。症状の出現時期や悪化因子(汗、服装、薬の使用歴)もあわせて評価します。
- 真菌鏡検(KOH直接鏡検):病変部の鱗屑や白い付着物を採取し、顕微鏡で真菌の有無を確認します。即日判定でき、診断に直結する基本的検査です。
- 真菌培養:カンジダの種類や耐性を確認するために行います。結果が出るまで数日を要しますが、再発例や重症例で有用です。
- 血液検査:免疫機能や基礎疾患の有無(糖尿病、血糖値、炎症反応など)を調べます。全身性の要因が関与しているかを評価する目的で行われます。
- 皮膚生検:難治性や他疾患との鑑別が必要な場合に選択されます。局所麻酔下で皮膚組織を採取し、病理学的に真菌の浸潤や炎症像を確認します。瘢痕のリスクを伴うため慎重に行われます。
🔍 小児の円形脱毛症と間違えやすい病気(類似疾患)
汗疹(あせも)
⇒赤く小さなブツブツ/かゆみあり 広がりは小さい/真菌ではない/すぐ治ることが多い
おむつ皮膚炎
⇒おむつかぶれ/こすれやよだれの刺激が原因 皮膚の“あたるところ”だけ/カンジダではない
接触皮膚炎(かぶれ)
⇒ 特定の刺激物や洗剤で起きる かゆみが強く、範囲が限局/アレルゲン接触の履歴あり
股部白癬(いんきんたむし)
⇒同じく“カビ”だが白癬菌が原因 やや乾いた赤み+強いかゆみ/カンジダと治療薬が違う
ヘルペス感染症
⇒水ぶくれ・痛み・熱感 神経に沿って左右どちらか/水疱が特徴的
予防のポイント 汗をかいたらこまめに拭き取り着替える
入浴後は皮膚をしっかり乾かしてから衣類を着る
通気性の良い綿素材の下着や服を選ぶ
おむつや靴下は長時間の使用を避け、こまめに交換する
長時間の湿潤や摩擦を防ぐよう注意する
規則正しい生活と十分な睡眠で免疫力を保つ
抗生剤やステロイド薬を使う際は医師の指示に従う
完治後もしばらく皮膚の様子を観察し再発を早期に見つける
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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