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20代 女性のご相談

乳児血管腫(いちご状の赤あざ)ってどんな病気?

医師の回答

生まれて数日〜数週間後から徐々に出現する、皮膚から盛り上がるタイプの赤あざです。

〜ぷっくり赤いいちごのようなあざ、自然に消えることもあります〜
生まれて数日〜数週間後から徐々に出現する、皮膚から盛り上がるタイプの赤あざです。出現後は数カ月かけて急に大きくなるので、
心配される親御さんが多い疾患です。赤あざは6〜12ヶ月かけて大きさのピークを迎え、その後5〜10歳で自然消退すると言われています。
大きさは、数ミリの小さなものから、にぎりこぶし以上ほどの大きなものまであります。
治療しなくても自然に赤みが引くことから、以前は特に治療を行わず経過観察のみを行うことが多かった疾患です。
しかし近年は、自然消退後のたるみやしわが整容的に良くないため、早期に治療を開始することが多くなってきています。
ピーク時にかなりサイズが大きくなると、そのときに伸びた皮膚が縮みきらず盛り上がりだけが残ってしまうため、
早期のレーザー治療が血管腫の大きさのピークをおさえてくれるからです。

乳児血管腫(にゅうじけっかんしゅ)とは、生後まもなく赤い盛り上がりが出現する良性の血管性腫瘍の総称です。いちごのように赤く膨らんで見えることから「いちご状血管腫」とも呼ばれます。出生直後には目立たず、生後1〜4週間ごろから赤い点として出現し、その後数か月で急速に大きくなることが多いですが、多くは1歳前後をピークに自然と小さくなり、数年かけて目立たなくなる傾向があります。

病型の代表例としては、顔・頭・背中・腕・おしりなどに出る「いちご状血管腫」があり、表面がざらつき赤く盛り上がるタイプです。多くは単発で出現しますが、まぶたや口の周囲などにできると機能的に問題を生じる場合もあります。

【主な原因】

  • 毛細血管が局所的に増殖することで発生

  • 生後の血管成長の過程で一時的な異常反応が関与

  • 女児・未熟児・双胎で発症しやすい傾向

  • 遺伝や妊娠中の生活習慣との直接的な関連はないとされる

好発部位は顔、頭、体幹、四肢、おしりなどで、擦れやすい場所ではただれや出血を起こしやすくなります。なりやすい人としては女児、早産児、双子での発生頻度がやや高いと報告されています。

経過としては、生後早期には点状で目立たず、その後急速に膨らみ鮮やかな赤色の腫瘤として成長します。1歳前後に増大が止まり、次第に退縮期に入り、5〜6歳ごろにはほとんど目立たなくなることもあります。ただし薄いあとや皮膚のたるみが残る場合もあり、また摩擦や感染で悪化することがあります。顔や機能に関わる部位に出た場合には早期治療が生活の質に直結します。

✅ 使用される治療・ケア

① 【基本情報と特徴】
▶ 生後数週から急速に大きくなる「盛り上がった赤あざ」
発症時期 通常生後1〜4週以内に出現し、その後3〜6か月で急速に増大
見た目 鮮紅色の盛り上がったあざ(表面ざらざら or つるつる):「いちご状」と表現されることが多い
好発部位 顔・頭・体幹・四肢など(特に頭頸部)
自然経過 約80~90%が1歳頃をピークに縮小開始、就学前までに自然に退縮する(ただし瘢痕やたるみを残すことも)

🔹 成長・退縮のスピードには個人差あり。“ただの赤あざ”として放置されやすいが、早期治療で跡を残さず改善する例も多い。

② 【治療の基本方針】
▶ 必要に応じて早期介入(β遮断薬内服)が有効
小さく・目立たず・機能障害なし 経過観察(自然退縮を期待)
顔面・まぶた・口唇・耳など 視力・聴覚・摂食障害を防ぐ目的で早期治療が推奨
急速に増大中/出血・潰瘍・変形あり 速やかに治療介入。放置すると潰瘍・瘢痕・変形を残すおそれあり。

③ 【第一選択治療:経口プロプラノロール】
▶ β遮断薬(心臓用の薬)を少量使って血管腫の成長を抑制
プロプラノロール内服 ヘマンジオルシロップなど(0.375%) 厚労省承認薬(保険適用)。生後5週以降から使用可能。体重あたり用量で調整。
投与期間 通常は6か月〜1歳頃まで継続 週1〜月1の外来フォローが必要。副作用モニタリングを行いながら継続。
副作用 徐脈・低血糖・冷感など(まれ) 低血糖を避けるため、授乳タイミングと併用して投与するよう説明が必要。

🔹 投与初期(開始後数時間)は入院でのモニタリングが推奨されることが多い。

④ 【補助的/代替的治療】
▶ 内服が困難な場合や補助的に用いる
外用β遮断薬 チモロール点眼液などを外用で転用 軽症例や平坦な病変に。保険適用外、効果は内服よりマイルド
色素レーザー治療 Vビームなど 潰瘍形成時の止血・合併瘢痕の改善、または退縮後の残存色素改善に使用されることが多い
ステロイド内服・注射 昔の主流。今はβ遮断薬が主であり使用は減少 副作用が強いため、難治例や特殊例に限られる

⑤ 【経過中の注意点】
潰瘍・びらんがある 清潔保持・ワセリン保護・ガーゼなどで対応。痛みや感染の予防が重要
出血・急激な拡大 血管腫の破裂・圧迫による変形リスクがあるため、早期受診・治療判断が必要
保護者の不安 「いつ消える?跡は残る?」「成長に影響は?」など、定期フォローと安心感の提供が重要

⑥ 【日常生活でのケア・配慮】
紫外線対策 退縮後の色素沈着を目立たせないためにも日焼け対策が有効
園・学校でのサポート 「見た目は病気ではない」「うつらない」など、保護者と連携して周囲への理解を促す対応が必要
保湿・摩擦回避 潰瘍・かさぶた部位の悪化予防に。服や帽子などでの擦れも注意

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・触診:赤色の盛り上がりや表面のざらつきなど、血管腫特有の所見を確認します。成長スピードや形態を経時的に観察することが診断の基本です。

  • 超音波検査:皮膚の下に広がる範囲や血流量を評価します。無侵襲で繰り返し行えるため、治療方針の決定に有用です。

  • MRI検査:深部まで及ぶ場合に血管腫の広がりや隣接組織との関係を詳しく把握します。鎮静が必要なこともあり、必要時に限定されます。

  • 血液検査:プロプラノロールなど内服治療を行う前に、肝機能や腎機能、心機能の状態を確認します。治療開始後も定期的な安全確認に用います。

  • 皮膚生検:典型例では不要ですが、他の腫瘍や母斑との鑑別が難しい場合に小さな組織を採取して病理診断を行います。瘢痕が残る可能性に注意が必要です。

🔍 乳児血管腫と間違えられやすい病気(類似疾患) 

 単純性血管腫(ポートワイン母斑)

⇒平らな赤あざ/生まれつき/消えない 盛り上がらず、生後すぐに気づく/レーザー治療が必要なことも

 サーモンパッチ(新生児斑)

⇒額・まぶた・うなじにうすい赤み 泣くと濃くなる/多くは自然に消える

 毛細血管奇形

⇒薄い赤紫色/一生消えない 退縮しない/出生時からある/成長とともに大きくならない

 青色母斑・蒙古斑

⇒青みのあるあざ/背中・お尻に多い 赤くない/成長とともに自然に消えることも多い

 カポジ型血管内皮腫

⇒出血しやすいまれな血管腫 内臓に影響することも/血小板減少など合併がある

 血管肉腫

⇒高齢者に多い悪性腫瘍 乳児には非常にまれ/急速に拡大し出血が目立つ

予防のポイント
血管腫を強くこすらず、やさしく洗浄する
入浴後は低刺激の保湿剤で乾燥を防ぐ
おむつや衣類の擦れを避けるよう調整する
爪を短く切り、掻き壊しを防ぐ
血管腫部分をテープやパッドで保護する場合は医師に相談する
外傷や出血があればすぐに清潔にして受診する
成長や色の変化を定期的に観察し記録する
気になる変化があれば早めに皮膚科で相談する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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