
20代 女性のご相談
単純性血管腫(平坦な赤あざ)ってどんな病気?

医師の回答
生まれつきある、平坦な赤いあざです。原則として、大人になっても自然に消えることがありません。
〜生まれつきの赤いあざ、単純性血管腫“ポートワイン母斑”かも!?」〜
生まれつきある、平坦な赤いあざです。原則として、大人になっても自然に消えることがありません。
加齢によって褐色になる場合もありますが、色が濃くなったり腫瘤を作ったりする場合もあります。また、成長とともに体が
大きくなるのに比例してあざの面積も拡大します。治療としては、早期のレーザー治療や冷凍療法、放射線療法などがありますが、
現在は副作用の少ないレーザー治療が主流になっています。
特殊な例としては、自然に消失することがあるもの(サーモンパッチ)や、からだの他の部分にも症状を持つ症候群(Sturge-Weber症候群など)
の一部である場合などもあります。特に顔にある血管腫の場合、眼や脳に同様の血管腫がある場合があるため、CTやMRIなどの検査で
合併症を調べる場合があります。
単純性血管腫(たんじゅんせいけっかんしゅ)とは、生まれつき皮膚の浅い部分にある毛細血管が拡張して赤いあざとして現れる疾患です。英語では「ポートワイン母斑(Port-wine stain)」とも呼ばれ、出生時から確認されることが多いのが特徴です。見た目は赤〜赤紫色の平坦なあざで、皮膚の質感は通常と変わりません。自然に消えることはなく、成長とともに色が濃くなったり盛り上がる場合もあります。命に関わる疾患ではありませんが、特に顔に生じる場合には心理的な負担が大きくなることがあり、医療的介入が検討されます。
単純性血管腫には部位や色調、経過による違いがあり、たとえば顔や首に生じるものは目立ちやすく、年齢とともに血管が浮き出たり盛り上がることがあります。また、腕や脚に見られるタイプもあり、赤みの濃さや広がり方には個人差があります。
【主な原因】
胎児期に毛細血管が異常に拡張すること
遺伝や生活習慣との関連はみられない
詳細な原因はまだ不明
好発部位は顔や首で、とくに顔面に出現する例が多く見られます。出生時から存在し、男女差なく誰にでも起こり得ます。
進行の経過としては、乳幼児期には平坦で赤いあざとして現れ、年齢とともに赤紫色が濃くなることがあります。成人期以降になると表面がやや盛り上がったり、血管が浮き出てくることもあります。悪化因子としては紫外線や摩擦などの刺激が挙げられ、これらを避けることが望まれます。早期に受診してレーザー治療を開始すると、色が薄くなる効果が期待でき、将来の心理的負担を軽減できる点も利点です。
✅ 使用される治療・ケア
① 【基本情報と特徴】
▶ 単純性血管腫は生後すぐに気づかれる赤いあざで、自然消退しないタイプ
発生時期 多くは出生時から存在。まれに生後間もなく気づかれることもある。
見た目 明るい赤~暗赤色の平坦なあざ。境界明瞭で押しても消えにくい。
好発部位 顔(額・まぶた・頬)、うなじ、腕、脚など(顔面三叉神経領域に多い)
自然経過 基本的に自然には消えない。思春期以降に色が濃くなる・肥厚することもある。
🔹 「サーモンパッチ(新生児のうなじ・まぶたの赤み)」とは異なり、経過観察では消えにくい点が特徴。
② 【治療の基本方針】
▶ 保険適用のレーザー治療(色素レーザー)が中心
色素レーザー治療(Vビームなど) 血管に吸収される波長のレーザーで赤みを徐々に薄くする 保険適用あり。1〜2か月ごとに複数回実施(平均5〜10回程度)
実施時期 生後早期から開始可能(生後3か月〜1歳未満が理想) 色素が薄く皮膚が柔らかいうちに始めた方が効果的
麻酔 局所麻酔や表面麻酔を併用 乳児では鎮静や入院下での施術が行われることも
🔹 小児皮膚科または形成外科・レーザー専門外来で相談。治療施設は限られていることがあるため、早期紹介が推奨。
③ 【レーザー治療以外の対応】
▶ レーザー以外の薬剤・外用薬は基本的に効果なし
外用ステロイドなど 血管腫自体への効果は乏しい。併発する湿疹・ただれに一時的に使用されることもある。
圧迫やマッサージ 効果なし。むしろ刺激や炎症を起こすおそれがあり推奨されない。
④ 【日常生活でのケア・配慮】
紫外線対策 日焼けにより色が濃く見えることがある。日焼け止めや帽子などでケアするのが望ましい。
保湿 湿疹や乾燥がある場合はワセリンなどで保護。血管腫自体が乾燥するわけではないが、併発時に重要。
園や学校での対応 「うつらない・害はない」ことを園や周囲に説明。いじめや誤解の防止に配慮が必要。
⑤ 【特殊なケース:合併症や部位による注意】
顔面三叉神経領域+眼病変 スタージ・ウェーバー症候群のリスク。神経内科・眼科との連携が必要
広範囲 or 筋肉・粘膜に及ぶケース 通常の単純性血管腫と異なる血管腫(海綿状血管腫など)との鑑別が必要
成長に伴い肥厚・隆起してきた場合 美容的・機能的な問題が大きくなる前に専門医へ相談。早期治療で改善しやすい傾向あり
◆ 病院で何を調べるの?
視診・問診:皮膚の色調や広がり、形状を確認します。出生時からあるかどうか、経過で変化しているかを問診で整理し、診断の基礎となります。
ダーモスコピー(皮膚鏡検査):血管の拡張や走行を詳細に観察できます。悪性病変との区別にも有用で、非侵襲的に行える点が利点です。
画像検査(MRI・CTなど):血管の広がりが深部まで及んでいないかを評価する目的で行うことがあります。特に顔面や神経に近い部位では必要に応じて選択されます。
血管造影検査:まれに血管奇形との鑑別が必要な場合に実施します。造影剤を用いて血管の形態や流れを確認し、治療方針の参考になります。
生検(皮膚組織検査):基本的には不要ですが、あざの性質が不明確な場合や他疾患の疑いがある場合に行われます。局所麻酔下で組織を採取し、病理診断を行います。
🔍 単純性血管腫と間違えやすい病気(類似疾患)
乳児血管腫(いちご状血管腫)⇒赤くて盛り上がるできもの/生後数週で出現 数か月で大きくなり→年齢とともに縮小する傾向
サーモンパッチ(新生児斑)
⇒額・まぶた・うなじのうすい赤み 泣くと濃くなる/多くは自然に消える
静脈奇形・リンパ管奇形
⇒青っぽい・やわらかい腫れ 血管の性質が異なる/MRIなどの検査で判別
Sturge-Weber症候群(スタージ・ウェーバー症候群)
⇒単純性血管腫+脳・眼の異常 顔の片側(特に目のまわり)+てんかん・緑内障などに注意
アトピー性皮膚炎や湿疹の跡
⇒赤くなって色素沈着が残る 赤あざは出生時から/湿疹は時間とともに変化
予防のポイント イボを触らず掻かないようにする
タオルや靴下、スリッパの共用を避ける
プールや体育館ではサンダルや専用マットを使用する
手足を清潔に保ち、低刺激の石けんでやさしく洗う
保湿を心がけて乾燥やあかぎれを防ぐ
傷ができたときは絆創膏で覆い、ウイルスの侵入を防ぐ
十分な睡眠とバランスのよい食事で免疫力を維持する
増えてきた場合や治らない場合は早めに皮膚科を受診する
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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