
20代 女性のご相談
ウイルス性イボってどんな病気?

医師の回答
ウイルス性イボは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮ふに入りこんでできるイボです。

〜手足にできるポツポツ、実はウイルスが原因の「イボ」かも!?」〜
手のひらや足の裏などに、白っぽいザラザラとした丸い盛り上がりができます。段々大きくなったり、
他にうつって10個以上できることもあります。よく見るとザラザラした盛り上がりの中に黒い点(出血)がみられることが多いです。
足にあると歩いた時に痛いことがあります
ウイルス性イボ(ウイルス性疣贅〔ゆうぜい〕)とは、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)が皮膚に感染することで生じる小さな腫瘤の総称です。手のひらや足の裏、指先などに多く発生し、表面がザラザラ・硬く盛り上がるのが特徴です。ときに黒い点状の毛細血管が見えることもあり、足底では歩行時の圧力で扁平に見えることもあります。魚の目やたこと似ているため自己判断では区別が難しく、専門的な診断が必要となります。
代表的な病型には、手指や足底に多い尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)、足の裏にできて圧で平たくなる足底疣贅(そくていゆうぜい)、顔や手背に多発する青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)などがあります。これらは外見や部位によって区別されますが、いずれも同じウイルスが原因です。
【主な原因】
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の感染
皮膚の小さな傷やあかぎれからの侵入
プールや体育館など素足での接触
タオルや靴下の共用による間接的感染
乾燥肌やアトピーによる皮膚バリア機能の低下
好発部位は手のひら、指先、足の裏など外的刺激を受けやすい部位です。子どもや若年者、皮膚が乾燥しやすい方、免疫力が低下している方に多く見られます。
経過としては、最初は小さな隆起から始まり、徐々に大きくなるか数が増えます。掻いたり触ったりすると周囲に拡大しやすく、足底では歩行により痛みを伴うこともあります。慢性化すると角質が厚くなり硬い結節状になりやすいです。乾燥や摩擦、プール利用などが悪化因子となるため注意が必要です。早期に受診し治療を開始することで拡大や再発を防ぎ、日常生活の不快感を減らすことにつながります。
✅ 使用されるお薬・治療・ケア
① 【基本:ウイルス感染細胞の排除】
▶ 外用薬や冷凍凝固療法を中心に
サリチル酸外用薬 イボコロリ、スピール膏など(市販) 角質を軟化しウイルス感染部位を少しずつ除去。患部のみに使用。
液体窒素療法 −196℃の冷却処置(医療機関で実施) 痛みあり。週1〜2週おきに繰り返す。水ぶくれや出血を伴うこともある。
モノクロロ酢酸・トリクロロ酢酸 医療機関で使用 強力な角質溶解作用あり。正常皮膚に付かないように注意が必要。
🔹 治療には複数回・数か月以上かかることもあるが、ウイルスを排除する唯一の手段。
② 【補助療法・免疫刺激による自然排除促進】
▶ ウイルスへの免疫反応を高め、自己治癒をうながす目的
漢方薬(内服) ヨクイニン(薏苡仁) 小児でも内服可能。いぼの自然治癒を助けるとされ、補助的に使われることが多い。
イミキモド外用 ベセルナクリーム(※保険適応外) 免疫賦活作用あり。一般的には使われにくく、成人向け。
局所感作療法 接触抗原で免疫刺激(専門的治療) 小児にはほとんど行わない。難治例で実施されることがある。
🔹 ヨクイニンは副作用が少なく長期使用可。軽症〜中等症例で特に有効な選択肢。
③ 【難治例/広範囲・深在型】
▶ 物理的手段または特殊療法を検討
レーザー治療 CO₂レーザーなどで蒸散。痛みや色素沈着を伴うことがある。保険適応外のことも。
外科的切除 原則として推奨されない(再発・瘢痕のリスクあり)
紫外線療法(限られた施設) ナローバンドUVBなど。自己免疫調整作用を狙うが、一般的ではない。
④ 【日常ケア・感染拡大の予防】
掻き壊さない 掻破によりウイルスが周囲に広がるため注意
家族内感染対策 タオル・爪切り・お風呂マットの共有を避ける
プール・裸足環境の注意 足底いぼはスイミング・更衣室などで感染することがある
保湿の継続 乾燥肌は微細な傷を作りやすく、ウイルスが侵入しやすい環境になる
🔹 免疫が整えば自然治癒するケースも多いため、焦らず継続治療+予防が基本。
⑤ 【いぼの種類と部位の特徴】
尋常性疣贅 指・手背・膝など 盛り上がった硬いいぼ。表面ざらざら。小児で最も一般的。
足底疣贅 足の裏 歩行時に圧迫されて硬くなる。魚の目との鑑別が重要。
扁平疣贅 顔・手の甲など 小さく平たい。複数出現しやすい。かき壊しで線状に増えることもある。
尖圭コンジローマ 陰部(主に成人) 性感染症。小児では基本的に該当しない。
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・問診:イボの形状や部位、数を確認し、魚の目やたこ、胼胝(べんち)などとの鑑別を行います。肉眼で特徴的な黒点や表面の性状を観察するのが基本です。
- ダーモスコピー(皮膚鏡検査):拡大鏡を用いて皮膚内部の血管像や角質構造を詳しく観察します。黒点が点状出血によるものであるかを確認でき、鑑別に役立ちます。
- 真菌鏡検(KOHテスト):足裏などでは白癬(いわゆる水虫)と間違いやすいため、皮膚の角質を採取して真菌の有無を確認します。結果はその場で判定可能です。
- 皮膚生検:診断が難しい場合や他の腫瘍性病変との鑑別が必要な場合に行います。局所麻酔下で病変の一部を切除し、病理検査で確定診断します。瘢痕が残る可能性があります。
- 血液検査:通常は必須ではありませんが、再発を繰り返す場合や免疫不全が疑われる場合に免疫機能の評価を行います。特に広範囲に出現する場合には有用です。
🔍 ウイルス性いぼと間違えやすい病気(類似疾患)
胼胝(たこ)・鶏眼(うおのめ)⇒摩擦や圧迫によってできる皮膚の角質肥厚 いぼより痛みあり/黒い点はない/ウイルス性ではない
ミルメシア(ミルメシア型いぼ)
⇒足裏にできるHPVいぼの一種 硬くて深い/歩くと痛い/小児に多い
伝染性軟属腫(みずいぼ)
⇒光沢のある柔らかい小さなブツブツ ツルツル・水っぽい/中央にへこみあり/プールでうつる
皮膚カンジダ症
⇒指まわりに赤くただれた湿疹 爪周囲/ジュクジュク・かゆみあり/いぼとは質感が違う
アクロコルドン(スキンタッグ)
⇒首やわきにできる小さなやわらかいポリープ 柔らかく、感染性なし/いぼより高齢者に多い
皮膚がん(基底細胞がんなど)
⇒慢性的な皮膚のしこり・色素沈着・出血など 急に大きくなる/出血・ただれがある場合は要注意
予防のポイント イボを触らず掻かないようにする
タオルや靴下、スリッパの共用を避ける
プールや体育館ではサンダルや専用マットを使用する
手足を清潔に保ち、低刺激の石けんでやさしく洗う
保湿を心がけて乾燥やあかぎれを防ぐ
傷ができたときは絆創膏で覆い、ウイルスの侵入を防ぐ
十分な睡眠とバランスのよい食事で免疫力を維持する
増えてきた場合や治らない場合は早めに皮膚科を受診する
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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