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60代 女性のご相談

扁平苔癬ってどんな病気?

医師の回答

扁平苔癬は、皮膚や粘膜の慢性的な炎症によって引き起こされる病気です。

〜赤紫色のかゆみ・白い線模様があれば、この皮膚病かもしれません〜
原因は不明ですが、医薬品やC型肝炎と関連する場合があることが知られています。直径5~20mmくらいの紫~赤色の平らに盛り上がった小さな発疹が腕や脚、手の甲、口の中にでき、かゆみを伴います。

扁平苔癬(へんぺいたいせん)とは、自己免疫の異常反応によって皮膚や粘膜に炎症を引き起こす慢性の皮膚疾患です。赤紫色の平らな小さな発疹が多発し、強いかゆみを伴うことが多いのが特徴です。皮膚だけでなく、口腔粘膜や爪、頭皮などにも症状が現れることがあり、慢性化しやすく数か月から1年以上にわたって続くことがあります。中高年層に多く、男女ともに発症します。

たとえば皮膚型では手首や足首、腰、すね、背中などに赤紫色または赤みがかった発疹が多発し、表面に白い線模様(ウィッカム線条)が現れることがあります。口腔扁平苔癬では、頬の内側や舌に網目状の白い模様が出現し、しみや痛みを伴います。爪に起こる場合は表面の凹凸や白濁、割れ、場合によっては脱落に至ることもあります。

【主な原因】

    • 自己免疫の異常反応による炎症
    • ストレスや疲労の関与

    • C型肝炎などの感染症との関連

    • 薬剤や金属(アマルガムなど)によるアレルギー反応

    • 薬剤性扁平苔癬の発症例

好発部位は手首、足首、腰、すね、背中などの皮膚で、さらに口の中、舌、頬粘膜、爪、頭皮にも見られます。中高年に多く発症し、男女差は明らかではありませんが、アレルギー体質や慢性疾患をもつ方に起こりやすい傾向があります。

経過は初期に赤紫色の発疹が出て強いかゆみを伴い、掻破によってさらに拡大します。悪化すると滲出やただれを起こし、長期化すると苔癬化(皮膚の肥厚や硬化)、色素沈着が残ることがあります。乾燥や摩擦、ストレス、感染、薬剤などが悪化因子となり、症状を慢性化させます。早期に受診し適切な治療を受けることで、症状の軽減や生活の質の維持につながります。

✅ 治療法
自然に軽快することもありますが、症状が強い/粘膜型/瘢痕やがん化リスクがある場合は治療が必要です。

◆ ①【外用薬】
分類 例 用途
ステロイド外用薬 リンデロンV®、ロコイド®など かゆみ・炎症の軽減/皮膚型で第一選択
タクロリムス軟膏 プロトピック® 口腔粘膜・陰部などに適応(ステロイド回避部位)
口腔内用含嗽剤・軟膏 アズノール®うがい液、ケナログ®口腔用軟膏など 粘膜型に対する支持療法

◆ ②【内服薬】
分類 薬剤名 特徴
抗ヒスタミン薬 アレグラ®、ザイザル®など かゆみの軽減に
ステロイド内服 プレドニゾロン®など 重症例に短期使用(慎重に)
免疫抑制薬 シクロスポリン、ミコフェノール酸など 難治例/専門施設での使用
漢方薬 十味敗毒湯、消風散など 皮膚症状の慢性化に使用されることも

◆ ③【その他の対応】
方法 内容
歯科金属除去 局所型の口腔扁平苔癬に有効な場合がある(パッチテストで確認)
精神的サポート ストレス緩和・生活指導が重要
粘膜型の定期観察 長期経過でのがん化リスクがあるため、定期的に診察を受けるべき

 ◆ 病院で何を調べるの?

      • 視診・問診:皮膚や粘膜に出る発疹の色や形、分布を観察し、典型的な扁平苔癬かどうかを判断します。かゆみや経過、服薬歴も確認し、薬剤性の可能性を検討します。初診時に大きな手がかりになります。
      • ダーモスコピー(皮膚鏡検査):拡大鏡で皮膚の表面を観察し、ウィッカム線条など扁平苔癬に特有の模様を確認します。非侵襲的に行えるため、初期診断や鑑別に有用です。

      • 皮膚生検:局所麻酔下で皮膚や粘膜の一部を採取し、顕微鏡で炎症像や角化の変化を調べます。診断を確定させる方法で、結果が出るまで数日を要し、小さな瘢痕が残る可能性があります。

      • 血液検査:炎症の程度やC型肝炎など合併疾患の有無、自己免疫異常の関与を調べます。特異的IgEや肝機能検査も行われ、全身的な背景を確認する際に有効です。

      • パッチテスト:金属や薬剤に対するアレルギーの有無を調べます。48〜72時間後に判定し、皮膚反応の有無を確認します。外用薬は事前に中止して受ける必要があります。

      • 細菌培養・真菌鏡検:口腔や皮膚のびらん部から採取して、細菌や真菌感染がないかを確認します。二次感染を疑う場合に行われ、治療選択の参考になります。

🔍 扁平苔癬と間違えやすい類似疾患(鑑別)

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
⇒銀白色のかさぶた+赤い斑/ひじ・ひざに多い        かさぶた(鱗屑)が厚い/爪の変化あり/かゆみは軽め

苔癬様薬疹
⇒扁平苔癬にそっくり/原因薬の服用後に出現        薬歴あり/全身に広がりやすい/中止で改善

扁平疣贅(ひらいいぼ)
⇒ウイルス性の平たいイボ/顔や手背に多い        ざらざら/かゆみはあまりなし/広がりやすい

慢性湿疹(ヴィダール苔癬など)
⇒掻き壊しで厚くなった皮膚/かゆみが強い        表面が厚くざらつく/単発で左右非対称のことが多い

梅毒(ばら疹・扁平コンジローム)
⇒二期梅毒で全身の赤い斑や陰部病変        性病歴あり/血液検査で診断可能/発熱・脱毛など伴うことも

皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉症)
⇒慢性経過の赤色斑や丘疹        長期持続/治療に反応しにくい/皮膚生検が必要

予防のポイント
強く掻かず、かゆみは薬でコントロールする
毎日のスキンケアで乾燥を防ぎ保湿を徹底する
刺激の強い食品(香辛料・アルコール)や熱い飲食を控える
歯科金属や服薬が影響している場合は医師に相談する
紫外線・摩擦を避け、衣類や日焼け止めで肌を保護する
十分な睡眠と休養をとり、ストレスを溜めないようにする
定期的に皮膚科・歯科で経過観察を受ける
市販薬の自己判断使用は控え、医師の指導に従う

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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