
20代 女性のご相談
巻き爪ってどんな病気?

医師の回答
巻き爪は、爪が異常に内側に弯曲した状態を巻き爪と呼びます。


〜見た目の悩みだけじゃない。歩くたびに痛む爪、治療できます〜 弯曲がきつくなると、炎症を起こして、痛みや発疹、腫れを引き起こし、歩行が難しくなることもあります。主に足の親指に発症します。
巻き爪(まきづめ)とは、足の爪の端が内側に巻き込み、皮膚に食い込むことで痛みや炎症を引き起こす状態です。とくに足の親指に多くみられ、軽度では違和感や歩行時の痛み程度ですが、進行すると赤みや腫れ、膿を伴い「陥入爪(かんにゅうそう)」と呼ばれる強い炎症へ進展することがあります。自然に治ることは少なく、早めに医療的対応を受けることが推奨されます。
巻き爪の病型には、軽度の巻き込みで矯正が可能なものから、爪が深く皮膚に食い込む陥入爪まで幅があります。保存的治療としてはワイヤー矯正やプレート矯正、テーピングなどが行われ、重症例では部分的な爪の除去や爪母(そうぼ)の処置が必要になることもあります。
【主な原因】
深爪によって爪の端が皮膚に食い込みやすくなる
つま先の狭い靴やハイヒールによる圧迫
外反母趾や扁平足など足の形態異常
歩行時の指の使い方(浮き指や寝たきり)による荷重バランスの乱れ
- 加齢や遺伝による爪の硬化・形状の変化
巻き爪は、女性や高齢者、スポーツを行う人に多く見られます。発症しやすい部位は足の親指ですが、他の足趾でも起こることがあります。靴の習慣や足の骨格、生活動作が関連するため、特定の人に繰り返しやすい傾向があります。
初期には軽い食い込みや発赤が中心ですが、放置すると歩行時に強い痛みを伴い、さらに皮膚が盛り上がる肉芽(にくげ)や感染による膿が出ることもあります。悪化因子には、乾燥や摩擦、長時間の靴の圧迫、汗や不衛生な環境などが挙げられます。早期に受診することで、矯正治療や保存療法が有効に行え、生活の質を大きく改善することが可能です。

✅ 使用される薬
状況 薬剤名 内容
炎症・化膿時
抗生物質(内服):セフゾン®、クラリス®など
抗生物質(外用):フシジン®、ゲンタシン®など
鎮痛薬:ロキソニン®など
| 感染・疼痛を抑えるために使用 |
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・問診:爪の形状、皮膚への食い込み具合、炎症や膿の有無を確認します。靴の使用状況や歩行習慣の聴取も重要です。痛みの程度や生活への影響を把握するため、初診時に必ず行われます。
触診:爪の硬さや周囲の皮膚の圧痛、腫脹の程度を確認します。陥入爪かどうか、肉芽組織の形成を判断するのに役立ちます。圧迫による痛みの有無は治療方針にも影響します。
細菌培養検査:膿や滲出液がある場合に行われ、細菌感染の有無や菌種を調べます。抗生剤の適応や選択に直結するため、炎症が強い場合に有効です。
血液検査:炎症マーカー(CRP、白血球数など)を確認し、全身的な感染や強い炎症がないかを調べます。糖尿病など基礎疾患の有無も併せて評価されることがあります。
X線検査:重症例や慢性例では、骨の変形や外反母趾の有無を調べるために行われます。爪や皮膚の問題だけでなく、足全体のバランスを把握することで治療の持続性が高まります。
皮膚生検:極めてまれですが、難治性の肉芽や腫瘤がある場合に行われます。悪性腫瘍との鑑別が必要な際に選択されます。
🔍 巻き爪と間違えやすい類似疾患(鑑別)
陥入爪(かんにゅうそう)
⇒巻き爪と混同されやすい/爪の端が刺さって炎症 “巻いていない”場合でもくいこみあり/同義語として扱われることも感染性爪囲炎(ひょうそ)
⇒爪のまわりに急な腫れ・赤み・膿 急に痛くなる/膿がたまる/触れるだけで激痛爪白癬(つめはくせん)
⇒白く濁って厚くなった爪/巻き爪と合併しやすい 白くにごる/ポロポロ欠ける/真菌検査で確認乾癬性爪病変
⇒爪がボコボコ/厚くなる/変色 爪にくぼみ・点状変化/皮ふにも乾癬があることが多い外反母趾
⇒親指が内側に曲がることで圧迫される 爪ではなく指の変形が主因/同時に巻き爪になることも色素性母斑・腫瘍(爪下腫瘍など)
⇒爪の下にしこり・黒ずみ・変形 急な爪の変形・色素帯がある場合は皮膚腫瘍の可能性もあり
予防のポイント 爪は角を残してまっすぐに切る 深爪を避け、適切な長さを保つ つま先に余裕があり、指が動かせる靴を選ぶ 長時間の圧迫や摩擦を避けるよう靴下やインソールを調整する 毎日足を洗って清潔に保ち、よく乾燥させる 爪や足の保湿を行い乾燥を防ぐ 痛みや赤みが出た場合は無理に自分で処置せず受診する 外反母趾や扁平足がある人はインソールや装具で負担を軽減する
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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