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40代 女性のご相談

皮脂欠乏症ってどんな病気?

医師の回答

皮脂欠乏症(乾皮症)は、皮膚の表面の脂(あぶら)が減少することなどにより皮膚の水分が減少して、乾燥を生じる病気です。

〜肌が乾いて、かゆくて… それ、ただの乾燥じゃないかも?〜
皮脂欠乏症(乾皮症)は、皮膚の表面の脂(あぶら)が減少することなどにより皮膚の水分が減少して、乾燥を生じる病気です。 
中高年者の手足(特に膝から下)や腰などによくみられ、皮膚がカサカサしてはがれ落ちたり、ひび割れたりします。
また、かゆみを伴い、掻くと悪化して皮脂欠乏性湿疹になることもあります。

皮脂欠乏症(ひしけつぼうしょう)とは、皮膚のうるおいを保つために必要な皮脂が不足することで起こる皮膚の乾燥状態を指します。皮膚のバリア機能が低下し、粉をふいたり、カサカサ感やひび割れ、かゆみといった症状が現れます。特に高齢者や乾燥する冬季に多くみられますが、若年者でも洗浄のしすぎや冷暖房の使用などで発症することがあります。放置すると湿疹やかき壊しに発展することがあるため、早期のスキンケアが大切です。

皮脂欠乏症の病変は、すねや太もも、背中、腰、二の腕など乾燥しやすい部位に多く現れます。代表的な症状は白い粉をふいたような皮膚、細かいひび割れ、夜間に強まるかゆみなどで、掻いた部位に赤みや湿疹様変化が出ることもあります。

【主な原因】

  • 加齢による皮脂分泌の低下

  • 空気の乾燥(冬季・冷暖房環境)

  • 熱いお湯や洗浄のしすぎによる刺激

  • 石けんやボディソープによる脱脂作用

  • アトピー体質や敏感肌などの素因

  • 栄養不足や糖尿病・肝疾患などの全身状態

皮脂欠乏症は、高齢者、乾燥肌やアトピー素因をもつ人、冷暖房の効いた室内に長時間いる人に多くみられます。特に皮脂腺の少ないすねや下肢に好発します。

経過としては、初期は軽い乾燥や粉ふき程度ですが、進行すると強いかゆみや掻破による赤み、滲出を伴う湿疹化に至ります。慢性化すると苔癬化〔たいせんか〕と呼ばれる皮膚のごわつきや色素沈着が起こることもあります。乾燥や摩擦、汗、精神的ストレスなどが悪化因子となるため注意が必要です。早期に受診して治療を開始することで、かゆみの軽減や睡眠の質改善など生活の質の維持につながります。

✅ 治療に使われる薬・スキンケア
◆ ①【保湿剤(基本治療)】
尿素系外用薬 ウレパール、パスタロンなど 軽度な乾燥に/角質軟化・水分保持作用
ヘパリン類似物質 ヒルドイドクリーム、ヒルドイドローションなど 保湿+微弱な抗炎症作用あり/赤ちゃん〜高齢者まで使用可
ワセリン系 白色ワセリン、プロペトなど 刺激が少ない/敏感肌や乳児に最適/保護膜形成作用
セラミド・NMF配合製品 市販の保湿ローションやクリーム 皮膚バリアをサポート(保険外)

📌 保湿は 1日2回以上、入浴後5分以内がベストタイミング。

◆ ②【かゆみ・湿疹がある場合】
ステロイド外用薬 ロコイド®、キンダベート®など(部位・年齢に応じ調整) 掻破による湿疹・皮膚炎に使用
非ステロイド抗炎症外用薬 タクロリムス軟膏(プロトピック®)、デルモベート®など ステロイドが使いにくい部位や慢性例に
抗ヒスタミン薬(内服) アレグラ®、ザイザル®、アタラックス®など かゆみが強いときに使用(就寝前にも有効)

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:皮膚の乾燥の程度や分布、掻き壊しの有無を観察し、症状の経過や生活習慣を聴取します。かぶれや湿疹との鑑別の第一歩となります。
  • パッチテスト:湿疹やかゆみが強い場合に接触性皮膚炎の有無を確認します。48〜72時間後に判定し、外用薬を中止する必要があるため注意が必要です。
  • 血液検査:アトピー素因の有無や炎症の程度を確認します。総IgEや特異的IgE抗体、好酸球数などを測定し、他の皮膚疾患との鑑別に役立ちます。
  • 皮膚生検:症状が強く、他疾患(湿疹や皮膚リンパ腫など)との鑑別が必要な場合に行われます。局所麻酔で皮膚を一部採取し、結果判明までに数日を要します。小さな瘢痕が残ることがあります。
  • 真菌鏡検(KOH直接鏡検):足や体に落屑がみられる場合、白癬(みずむし)との鑑別に有効です。皮膚片を採取し顕微鏡で観察する簡便な検査です。
  • 細菌培養:かき壊しや滲出液を伴う場合、二次感染を確認する目的で実施されます。抗菌薬の適応判断に役立ちます。

🔍 皮脂欠乏症と間違えやすい類似疾患(鑑別)

 アトピー性皮膚炎

⇒幼少期からの乾燥+かゆみ/左右対称に出ることが多い 家族歴・花粉症などのアレルギー体質/顔・首・肘裏に多い

 乾癬(かんせん)

⇒赤い斑+厚い白いカサブタ(鱗屑) 肘・膝・頭皮に好発/かゆみは軽度/爪の変化あり

 貨幣状湿疹

⇒コインのような赤くてかゆい湿疹 冬場に多い/広がってジュクジュクすることも

 接触皮膚炎(かぶれ)

⇒触れた場所に一致して赤み・かゆみ 原因に心当たりがある/左右非対称

 白癬(皮膚カビ)

⇒円形に広がる赤み/縁が盛り上がる 真菌検査で確定/抗真菌薬で改善

 老人性掻痒症

⇒高齢者に多い全身の強いかゆみ 目立つ湿疹なし/背中や腰など広範囲に出る

予防のポイント
熱すぎるお湯での入浴を避ける
ゴシゴシ洗わず泡でやさしく洗う
入浴後5分以内に保湿剤を塗る
室内は加湿器で湿度を保つ
綿素材など刺激の少ない衣類を着る
かゆみは爪で掻かず薬で抑える
規則正しい睡眠とバランスの良い食事を心がける
冷暖房による乾燥時はこまめに保湿する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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