
40代 男性のご相談
爪甲鉤弯症ってどんな病気?

医師の回答
爪甲鉤弯症は、足の親指の爪が厚くなり、色が濁り、表面がでこぼこしたり、変形したりする病気です。
〜分厚く変形した「爪」、それは病気のサインかも!?〜 爪甲鉤弯症は、足の親指の爪が厚くなり、色が濁り、表面がでこぼこしたり、変形したりする病気です。
小さい靴や、先がせまい靴などを長く履いていると、外力で爪が傷害され、爪甲鉤弯症の原因になります。
50代以降で特に多くなりますが、20代などの若年者でもみられることがあります。
爪甲鉤弯症(そうこうこうわんしょう)とは、爪が異常に分厚く硬くなり、上に盛り上がったり、巻き込むように変形する疾患です。特に足の親指に多く見られ、歩行時の痛みや靴による圧迫、不快感などが生活に影響することがあります。自分で爪を切ることが難しくなるため、衛生面や感染予防の観点からも注意が必要です。
たとえば、爪白癬(つめの水虫)に伴う変形、外傷後に起きる爪の肥厚、加齢による代謝低下、慢性的な圧迫による爪の湾曲などが代表的な病型です。黄色く濁った厚い爪、くるっと巻き込むような変形、爪の下に角質やごみがたまる所見が典型的にみられます。
【主な原因】
加齢による爪の成長や代謝の低下
慢性的な圧迫や摩擦(きつい靴、長時間の歩行)
外傷(打撲や挟み込み)による爪の変形
血流障害や糖尿病など基礎疾患の影響
爪白癬(爪の水虫)による二次的な肥厚変形
好発部位は足の親指で、特に高齢者、立ち仕事や運動で足に負担がかかる人、糖尿病や血流障害を持つ人に多く見られます。また、爪白癬を放置していた場合や、自分で足の爪を切りにくい高齢者・視力低下の方にもよく起こります。
進行は、初期には爪が厚くなり色調が黄色に変化し、やがて湾曲や巻き込みが強くなります。さらに悪化すると、靴に当たって痛みや炎症が起こり、皮膚に傷や爪下出血、二次感染(爪周囲炎・ひょう疽)を合併することもあります。慢性化すると、爪甲が硬化して苔癬化〔たいせんか〕様の変化を伴い、自然には改善しません。早期に受診しケアを受けることで歩行の快適さや生活の質が大きく改善します。

✅ 治療の原則
❗ 根本的な内服薬や外用薬での“治療”は存在せず、主に
① 原因精査(白癬の有無など)+ ② 処置(削る/切る)+ ③ 予防・ケア
が中心です。
◆ ①【病因の確認】
真菌検査(KOH法、培養) 白癬菌(爪白癬)の有無確認 陽性なら抗真菌薬で治療対象
視診・触診 巻き爪・陥入爪との鑑別も重要
◆ ②【治療法・処置法】
爪の切削・整形処置 医療用ニッパー、グラインダーで厚く湾曲した部分を削る 定期的に皮膚科・フットケアで対応(1〜2か月ごと)
爪の軟化剤(市販) 尿素配合クリームやローション 爪を柔らかくし、削りやすくする補助目的
巻き爪・変形矯正具 プレート、ワイヤー装具など 明らかな変形がある場合に専門的対応が行われることも
◆ ③【原因疾患がある場合の治療】
爪白癬 抗真菌薬(内服)
・イトラコナゾール(イトリゾール®)
・テルビナフィン(ラミシール®) KOH陽性で保険適用
治療期間は6か月前後が一般的
慢性圧迫・外傷 靴の調整、歩き方の改善 サイズ・幅の合わない靴が誘因のことも
糖尿病・末梢血流障害 原疾患のコントロール 皮膚潰瘍や感染のリスクがあるため重要
◆ ④【手術的処置(まれ)】
爪甲の部分/全摘術(外科的) 激痛・化膿・歩行困難がある場合に検討されることも
レーザー・フェノール焼灼 再発防止目的に使われることもある
✅ 使用される薬(※補助的)
爪軟化剤 高濃度尿素製剤(ウレパール®など) 爪を柔らかくし削りやすくする
抗真菌薬(内服) イトリゾール®/ラミシール® 白癬菌陽性の場合のみ使用可
外用抗真菌薬 クレナフィン®、ルコナック®など 爪白癬の軽症例に使用可能(保険適用)
◆ 病院で何を調べるの?
視診・問診:爪の厚さ・形・色の変化を観察し、生活背景や外傷歴、靴の影響などを確認します。肉眼での診断が基本ですが、爪白癬との鑑別のために追加検査が必要な場合があります。
真菌鏡検(KOH直接鏡検):爪の一部を採取し、顕微鏡で真菌(白癬菌)の有無を確認します。数分で結果が分かり、爪白癬の有無を即座に判断できる利点があります。
真菌培養検査:採取した爪を培養し、どの真菌が原因かを特定します。結果が出るまで2〜4週間程度を要しますが、耐性菌や他の菌種を区別するのに有用です。
皮膚生検:稀に腫瘍や他の爪疾患との鑑別が必要な場合に行います。局所麻酔をして一部を切り取り、病理検査で詳細を調べます。小さな瘢痕が残る可能性があるため、適応は慎重です。
血液検査:糖尿病や末梢血流障害が疑われる場合に実施します。血糖値や炎症マーカーを測定し、基礎疾患の関与を確認することで治療方針の参考になります。
ダーモスコピー(皮膚鏡):爪表面の構造や血管の状態を観察し、腫瘍性疾患や爪白癬との鑑別に役立ちます。非侵襲的で短時間に行える検査です。
🔍 爪甲鉤弯症と間違えやすい疾患・類似爪トラブル
爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)⇒爪が白く浮き、皮膚から離れる 爪の形は比較的保たれるが、根元から浮いてくる
爪白癬(つめみずむし)
⇒爪が白く濁る・厚くなる・ボロボロに かゆみや足指の水虫を伴うことが多い/検査で真菌検出
巻き爪(陥入爪)
⇒爪の両端が皮膚に食い込み痛みが出る 横方向に巻く/痛みが強く、化膿もしやすい
外傷性爪甲変形
⇒爪の外傷・圧迫によって厚くなる/割れる 明らかな打撲歴/爪床の出血や線状変形が目立つ
乾癬性爪変形(乾癬による爪の異常)
⇒点状陥凹・爪の肥厚・色調変化 皮膚の乾癬の合併がある/手指にも起こりやすい
腫瘍による爪変形(良性 or 悪性)
⇒爪下にしこり・色調変化・変形が進行 急激に形が変わる・出血・痛みがある場合は要注意
爪下出血(内出血)
⇒黒〜紫のシミが爪の中に/痛みが伴うことも 時間とともにシミが伸びて移動するのが特徴
予防のポイント
足に合った靴を選び、爪への圧迫を避ける
爪を清潔に保ち、定期的に正しい方法でカットする
爪を切りにくい場合は、皮膚科やフットケア外来で専門的にケアを受ける
爪白癬があれば早めに治療を始める
足の乾燥や角質のたまりを防ぐために保湿を心がける
長時間の歩行や立位のあとには足を休める
糖尿病や血流障害がある場合は定期的に足の診察を受ける
爪をぶつけたり挟んだりする外傷を避ける工夫をする
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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