
40代 女性のご相談
カポジ水痘様発疹症ってどんな病気?

医師の回答
カポジ水痘様発疹症は、アトピー性皮膚炎などの基礎疾患の病変部位がヘルペスウイルスの一種である単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染することで発症する病気です。
〜アトピー肌に突然の高熱+水ぶくれ!それ「カポジ水痘様発疹症」かもかも!?〜
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)**の感染により引き起こされる皮膚感染症で、特にアトピー性皮膚炎などで皮膚バリアが低下している人に発症しやすいとされています。
風邪や口唇ヘルペスの原因と同じウイルスが、皮膚の広い範囲に感染し、高熱や水ぶくれ、膿疱、ただれなどの症状を引き起こします。
カポジ水痘様発疹症(かぽじすいとうようほっしんしょう)は、アトピー性皮膚炎など皮膚バリアが弱くなっている状態の皮膚に、ヘルペスウイルスの一種である単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)が感染することで起こる、急性で重症のウイルス性皮膚感染症です。
風邪や口唇ヘルペスの原因となるウイルスが、皮膚全体に広がってしまうことで発症し、高熱や倦怠感とともに、顔や首、胸、腕、背中などに小さな水ぶくれが急に多発します。
水ぶくれは群がって現れ、時間の経過とともに膿がたまった膿疱(のうほう)になったり、ただれて黒っぽいかさぶたになることもあります。発症初期にはピリピリとした痛みを伴うこともあり、見た目はとびひや水ぼうそうに似ているため、誤診されることもあります。
特に乳幼児やアトピー体質の子どもに多く、また免疫力が低下しているときやステロイド外用薬を使用している期間などに発症リスクが高くなるとされています。感染経路としては、すでにヘルペスを持っている人との接触(キス、タオルやおもちゃの共用など)が一般的で、また、自分自身の口唇ヘルペスから他の部位にウイルスが広がることもあります。発熱やだるさとともに水ぶくれが出た場合には、できるだけ早く抗ウイルス薬による治療を始めることが重要です。
治療にはアシクロビルやバラシクロビルといった抗ウイルス薬を用い、軽症であれば内服、重症であれば点滴による治療が行われます。水疱が化膿した場合は抗菌薬を併用し、発熱や痛みには解熱鎮痛薬も使われます。
目の周囲に症状が出た場合には角膜炎などの合併症を防ぐために眼科との連携が必要となることもあり、重症化した場合は入院治療となるケースもあります。早期に治療すれば1〜2週間程度で改善することが多いものの、放置すると全身に広がり敗血症などの重大な状態に至る可能性もあるため、迅速な対応が求められます。
「アトピーの子どもが突然高熱を出して、顔に水ぶくれができた」「とびひかと思ったけど、何か違う気がする」「湿疹が急に悪化して、膿んでしまっている」そんなときは、カポジ水痘様発疹症の可能性があります。判断が難しい場合でも、早期に皮膚科を受診することが大切です。
✅ カポジ水痘様発疹症に使われる主なお薬
① 【抗ウイルス薬(第一選択)】
▶ 軽症例(外来治療)
アシクロビル ゾビラックス錠・軟膏 内服:1日5回/外用併用も可
バラシクロビル バルトレックス錠 1日2回内服(利便性が高い)
ファムシクロビル ファムビル 同様の効果。やや高価
🔸 通常5〜7日間内服。発症早期(48時間以内)の開始が最も効果的。
② 【重症例・全身症状が強い場合】
アシクロビル注射 ゾビラックス点滴静注液 入院下で点滴投与(特に乳児・免疫低下者)
③ 【補助療法(必要に応じて)】
▶ 抗菌薬(細菌の二次感染があるとき)
外用抗菌薬 ゲンタシン軟膏、フシジンレオなど
内服抗菌薬 セファレキシン、クラリスなど
▶ 解熱鎮痛薬・保湿・皮膚保護
解熱剤 アセトアミノフェン(カロナールなど)
保湿薬 ワセリン、ヒルドイドなど(ただし水疱部には慎重に)
❗ ステロイド外用薬は原則【避ける】
カポジ水痘様発疹症はウイルス感染による疾患なので、
ステロイド外用薬を誤用するとウイルスの増殖を促す恐れがあります。
➡︎ かゆみが強くても、ステロイドの使用は皮膚科専門医の指示があるときに限定されます。
◇ 病院で何を調べるの?
水疱内容物を綿棒で採取し、ウイルス検出検査(PCR法や抗原検査)を行うことがあります。
医療機関によっては迅速検査キットでヘルペスウイルスを調べられることも
- 乳幼児や重症例では、血液検査や入院の必要性を判断することもあります。
◇ 間違えやすい病気(鑑別疾患)
とびひ(伝染性膿痂疹)
⇒かゆくて黄色いかさぶた/細菌感染 水ぶくれの中に膿がたまる/発熱は少なめ
カンジダ皮膚炎
⇒皮ふのしわや湿った場所にかゆみ 周囲に小さな赤い発疹(衛星病変)が出る
水ぼうそう(水痘)
⇒小さな水ぶくれ+発熱/全身に広がる ワクチン歴や家族内感染あり/バリアが弱ってなくても出る
接触皮膚炎(かぶれ)
⇒触れた場所だけに赤み・水ぶくれ 原因がはっきりしていることが多い/左右対称でない
疱疹状皮膚炎(デューリング疱疹)
⇒グルテン過敏症と関連/強いかゆみ 慢性の病気/診断に血液検査が必要なことも
予防のポイント
1. 口唇ヘルペスとの接触を避ける
2. 皮膚バリアを日々守る
3. 手指・身のまわりの清潔を保つ
4. 免疫力を下げない生活を意識
5. 兄弟・保育園などでの接触注意
6. 自分自身のヘルペスからの再感染を防ぐ
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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