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40代 男性のご相談

貨幣状湿疹ってどんな病気?

医師の回答

貨幣状湿疹は、直径1~5cm程度のコイン形(貨幣状)の湿疹ができる皮膚の病気です。湿疹の周りには水っぽいブツブツが伴います。

〜丸くてかゆい湿疹…それ「貨幣状湿疹」かも!?〜
原因はさまざまで、アトピー性皮膚炎や皮膚の乾燥などが主な原因とされていますが、不明な部分も多い病気です。 
主に腰、おしり、腕や脚にあらわれ、強いかゆみを伴います。
湿疹ができた部分は皮膚の色が濃くなることもあり[色素沈着(しきそちんちゃく)]
症状が繰り返しあらわれる場合もあります。

貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)とは、直径1〜5cm程度のコインのような丸い形をした湿疹が皮膚に現れる慢性の皮膚疾患です。強いかゆみを伴い、湿疹の周囲には水っぽい小さなブツブツができることもあります。貨幣状湿疹は腰やおしり、太もも、すね、腕、胸、背中といった体の側面や四肢に多く現れ、数枚から十数枚にわたる赤く丸い湿疹が特徴です。掻きこわすことでジュクジュクしたり、かさぶたができたりすることもあり、症状が慢性化すると色素沈着や皮膚のごわつきが残ることもあります。

この皮膚疾患の原因は一つに限定されておらず、乾燥肌(ドライスキン)やアトピー性皮膚炎、金属や薬品、衣類の摩擦による刺激、虫刺され、精神的ストレスや疲労、季節の変わり目などが関係しているとされています。とくに冬の乾燥した時期には皮膚のバリア機能が低下し、外的刺激に敏感になって湿疹を引き起こしやすくなります。また、乾燥肌やアトピー素因のある人、中高年の男性、金属アレルギーがある方などが発症しやすい傾向にあります。

貨幣状湿疹の症状は進行性で、初期は軽いかゆみや赤みから始まり、やがてコイン状に盛り上がった湿疹が出現し、さらに掻き壊すことで滲出液が出たり、かさぶたになったりすることもあります。適切な治療をせずに放置すると慢性化し、再発を繰り返しやすくなるため、早めの対応が重要です。

治療法としては、まずステロイド外用薬を用いて皮膚の炎症をしっかりと抑えることが基本です。加えて、皮膚の乾燥を防ぐための保湿剤を継続的に使用し、皮膚のバリア機能を高めます。かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服が有効であり、掻き壊しによって細菌感染を起こしている場合には、抗生物質の外用あるいは内服を併用することもあります。

日常生活でのセルフケアも治療と同様に重要です。入浴後はできるだけ早く保湿剤を塗り、皮膚の乾燥を防ぎましょう。体を洗う際には低刺激性のボディソープを使い、強くこすらないよう注意が必要です。また、爪を短く保ち、無意識の掻き壊しを防ぐことも大切です。衣類は綿など刺激の少ない素材を選び、冬場は加湿器を使って室内の湿度管理を徹底するとよいでしょう。

「虫刺されかと思って放っておいたが治らない」「赤くて丸い湿疹がいくつもできてかゆい」「同じ場所に何度も繰り返す湿疹がある」といった場合は、貨幣状湿疹の可能性があります。早期の診断と治療が慢性化・再発を防ぐカギとなります。

✅ 貨幣状湿疹に使われる主なお薬
① 【外用薬(基本治療)】
▶ ステロイド外用薬(第一選択)

Very Strong(最強クラス) デルモベート、ダイアコート 重症・苔癬化した皮膚に。短期使用
Strong(強い) リンデロンV、ベトネベート かゆみ・赤み・じゅくじゅくに広く使用
Medium(中等度) ロコイド、キンダベート 顔や皮膚の薄い部位、小児に適する

🔸 基本は1日1~2回塗布。症状が改善したら強さ・頻度を段階的に減らす。

▶ 非ステロイド系外用薬(軽症・長期管理用)

タクロリムス プロトピック軟膏 顔や首などの敏感部位向け。ヒリヒリ感が出ることあり
JAK阻害薬 コレクチム軟膏 ステロイドに頼らず長期コントロールしたい場合に使用されることもある

② 【保湿剤(毎日のスキンケアに必須)】

ヘパリン類似物質 ヒルドイドソフト軟膏など 肌の保湿と血行促進効果
ワセリン系 プロペト、白色ワセリン 皮膚バリアの保護に有効(刺激が少ない)
尿素含有製剤 パスタロン、ケラチナミン 角質が厚い部位に。ただし刺激性あり注意

③ 【内服薬】
▶ 抗ヒスタミン薬/抗アレルギー薬(かゆみ対策)

レボセチリジン ザイザル
フェキソフェナジン アレグラ
オロパタジン アレロック
ビラノア、ルパフィン、デザレックス など 第2世代で眠気が少ない

▶ 炎症が強いときや広範囲・難治性の場合に短期で:

プレドニゾロン(ステロイド内服) 強い炎症に対し短期限定で処方されることがある

 🔬 病院で何を調べるの?

貨幣状湿疹は水虫(白癬)などの皮膚真菌症と似て見えることがあるため、区別のために皮膚の一部を顕微鏡で検査することがあります(KOH法)🧪

貨幣状湿疹の背景に接触性皮膚炎(アレルギー反応)があると考えられる場合、以下の検査を行うこともあります

  • パッチテスト:金属や化学物質などが原因か調べる

  • 血液検査(IgEなど):アトピー性体質や食物・ハウスダスト・花粉アレルギーなどを評価

掻き壊しやジュクジュクが強い場合は、黄色ブドウ球菌などの細菌感染(とびひ)が起きていないか確認し、必要に応じて培養検査を行うことがあります。

 

🩺 間違えやすい皮膚病(鑑別疾患)

 白癬(たむし)

⇒円形に広がる赤い湿疹/境界がややハッキリ 真菌検査(顕微鏡)でカビが見つかる🔬

 とびひ(伝染性膿痂疹)

⇒子どもに多い/水ぶくれやかさぶたが広がる 感染性あり/急に広がる・黄色いかさぶたが目印

 乾癬(かんせん)

⇒赤み+白い粉ふき状の皮むけ かゆみは軽め/肘・膝・頭などにできやすい

 接触皮膚炎(かぶれ)

⇒特定のものに触れて出る湿疹 原因に心当たりがある/接触部位に一致

 菌状息肉症(皮膚リンパ腫)

⇒慢性の赤い斑/治療に反応しにくい 長期続く・かゆみ軽い/組織検査が必要なことも

予防のポイント

① 入浴後すぐの保湿ケアを習慣にする

② 低刺激のボディソープ・洗浄料を使う

③ 衣類や寝具は「刺激の少ない素材」を選ぶ

④ 乾燥シーズンは加湿器を活用

⑤ 掻き壊しを防ぐ工夫をする

⑥ アレルゲン・刺激物との接触を減らす

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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