薬物アレルギーってどんな病気?症状チェックと対処法を皮膚科医が解説
⚠️まずは緊急度をチェック!
◻︎ 38℃以上の発熱や、全身に急速に広がる発疹がある
◻︎ 口・目・陰部のただれ/水疱/皮むけ(粘膜症状)がある
◻︎ 息苦しさ、ぜんそく様の音、血圧低下感などアナフィラキシーを疑う→ 1つでも当てはまれば受診/オンライン相談を。

20代 女性のご相談
薬物アレルギーってどんな病気?

医師の回答
薬物アレルギーとは、薬を飲んだり注射したときに体がその薬を「悪いものだ」とまちがえて反応し、じんましんやかゆみ、発熱、息苦しさなどを起こし、重いときはアナフィラキシーという命にかかわる症状を引き起こす病気で、予防には医師に自分のアレルギーを伝えてその薬を使わないようにすることが大切です。

〜それ、ただの発疹じゃないかも〜 薬物アレルギー(薬疹〔やくしん〕)は、薬に対する免疫の過剰反応で、 じんましん・紅斑・発熱から、まれに全身性のアナフィラキシー〔きゅうげきな全身反応〕まで起こり得ます。
初回は内服や注射開始の1〜2週間後に出ることが多く、同じ薬の再使用では数時間〜数日で早く出ることがあります。
原因薬の中止で多くは数日〜1週間で軽快しますが、高熱や粘膜症状、水疱・皮むけ、息苦しさは危険サインです。 放置せず早めの受診をおすすめします。

N.Cさん
市販の風邪薬を飲んで1週間ほどしてから、体幹から腕にかけて赤いぶつぶつが広がり、かゆみも強くなりました。最初は乾燥かなと思いましたが、熱っぽさも出て不安に。薬物アレルギーの可能性をネットで見て、受診を決めました。
オンラインで相談し、飲んでいた薬を中止。抗ヒスタミン薬を処方され、皮疹には塗り薬で対応。数日でかゆみが落ち着き、1週間ほどで目立たなくなりました。お薬手帳に記録して次回からは伝えることの大切さを学びました。

30秒セルフチェック/診断チャート
STEP 1|症状の出方・強さ
・ 赤い発疹/じんましん・かゆみ・発熱がある
・ 口や目、陰部など粘膜の痛み・ただれ・水疱がある
・ 息苦しさ、ぜんそく様の音など呼吸症状がある
STEP 2|経過・持続
・ 新しく始めた/変更した薬の開始後1〜2週間で出た
・ 同じ薬を飲み直したら、数時間〜数日で再燃した
STEP 3|随伴症状・背景
・ 体幹〜四肢に左右対称に広がる
・ 高熱、顔のむくみがある
・ 直近1〜2か月の薬歴に市販薬・健康食品・造影剤を含む
—— 判定 ——
該当が多い:要受診
該当が少ない:迷う場合も早めに相談
薬物アレルギーとは、内服薬や注射薬、外用薬への免疫反応により、皮疹やかゆみ、発熱、呼吸症状などの症状群を引き起こす総称です。初めての薬では感作(免疫が薬を敵と認識する準備)が必要なため、症状は開始後1〜2週間で現れることが多く、再投与時はより早く出現します。市販薬や健康食品、造影剤なども原因になり得るため、直近だけでなく数週間内に開始・変更した薬剤歴を広く確認することが大切です。
病型の代表例として、斑状丘疹型(全身に広がる赤いぶつぶつ)、じんましん、固定薬疹〔こていやくしん:同じ部位に毎回出る濃い紅斑〕、光線過敏型(紫外線に当たった部位に限定)、重症型ではスティーブンス・ジョンソン症候群〔SJS〕/中毒性表皮壊死症〔TEN〕、薬剤性過敏症症候群〔DIHS/DRESS〕があります。
【主な原因】
抗菌薬(ペニシリン系・セフェム系など):頻度が高い代表薬です。
解熱鎮痛薬(NSAIDs、アセトアミノフェンなど):即時型のじんましんや喘鳴の誘因になります。
抗てんかん薬・尿酸降下薬など:遅延型で重症薬疹(DIHS/DRESS)を起こすことがあります。
造影剤・生物学的製剤・漢方や健康食品:まれでも注意が必要です。
好発部位は体幹〜四肢の左右対称の広がりが典型的で、粘膜(口・目・陰部)が侵されると重症の可能性が高まります。なりやすい人として、過去に薬で発疹が出たことがある人、同系統薬を繰り返し使う人、多剤併用・長期使用の人が挙げられます。アトピー体質や感染症合併中は区別が難しくなることがありますが、必ずしも発症リスクが高いとは限りません。
経過は、初期の紅斑・かゆみ→掻破でびらん・滲出→広範囲化や発熱・顔のむくみ・粘膜病変で重症化、という流れをたどります。悪化因子は、同一薬の継続・再投与、紫外線(光線過敏型)、発熱・激しい運動、アルコール、多量の解熱鎮痛薬追加などです。
受診の目安は、
①38℃以上の発熱や全身に急速に広がる発疹、
②口・目・陰部のただれや水疱・皮むけ、
③息苦しさ・ぜんそく様の音・血圧低下感です。
これらは救急受診の対象です。軽症でも、発疹が3日以上改善しない、再投与で毎回出る場合は早めの皮膚科受診が有用です。
応急処置(今日できること)
直近1〜2か月の薬歴を整理し、原因と思われる薬を中止する(自己判断が難しい場合は医師へ相談)
強い症状(高熱・粘膜症状・呼吸症状)は救急受診
軽症なら抗ヒスタミン薬や外用薬での症状コントロール(医師指示に従う)
お薬手帳・アレルギーカードに記録し、以後の投与回避を徹底
(応急対応は疾患により異なります。自己判断での処置は避け、症状が強い/拡大する/痛む場合は医師に相談してください。)
✅ 主な治療薬(薬物アレルギー)
① 外用薬(皮ふ症状がある場合)
▶ ステロイド外用薬(炎症を抑える)
発疹や湿疹が出たときに使用。部位・症状に応じて強さを選択。
強さ 主な薬剤名 商品名(例)
Very Strong モメタゾンフランカルボン酸 フルメタ など
Strong ベタメタゾン吉草酸エステル リンデロン-VG など
Medium ヒドロコルチゾン酪酸エステル ロコイド など
Weak プレドニゾロン プレドニン軟膏 など
▶ 保湿剤
炎症が落ち着いたあとのスキンケアに使用。
② 内服薬(症状のコントロールに)
▶ 抗ヒスタミン薬(第一選択)
セチリジン(ジルテック)
フェキソフェナジン(アレグラ)
オロパタジン(アレロック)
👉 発疹やかゆみを軽減
▶ ステロイド内服(重症例・短期使用)
プレドニゾロン
👉 発疹・発熱・全身反応が強いときに一時的に使用
③ 注射薬(重症例・アナフィラキシー対策)
▶ アドレナリン自己注射薬(エピペン®)
急激なアナフィラキシー反応が起きた場合の第一選択薬
気道の腫れ・呼吸困難・血圧低下があるときに使用
▶ 点滴治療(医療機関で実施)
ステロイド点滴
抗ヒスタミン薬注射
👉 病院での緊急対応に使われる
④ 特殊療法・注意点
▶ 原因薬の中止が最重要
同じ薬を再び使用すると重症化することがあるため、必ず回避する
▶ お薬手帳・アレルギーカード
過去にアレルギーを起こした薬を記録し、医師や薬剤師に伝える
▶ 代替薬の選択
医師が安全な別の薬を検討
📌 まとめ
軽症 → 抗ヒスタミン薬・外用ステロイドで皮ふ症状を抑える
中等症 → ステロイド内服で全身炎症をコントロール
重症 → エピペン®・点滴で緊急対応
根本的対応 → 原因薬を避け、情報を記録・共有すること
◆ 病院で何を調べるの?
視診・問診(薬剤タイムライン整理):発疹の型と分布、粘膜病変の有無を確認し、開始・中止日を含む「直近1〜2か月の薬歴」を一覧化します。何が原因かの見当がつき、危険度の層別化に役立ちます。即日評価でき、結果は医師の総合判断になります。
血液検査:白血球分画(好酸球増多)、肝腎機能、炎症反応(CRP)などで全身影響を把握します。DIHS/DRESSが疑わしいときはウイルス再活性化マーカーやTARCなどを併用することがあります。結果は当日〜翌日判明し、重症度判断と入院適応の目安になります。
皮膚検査(プリック/皮内):即時型反応(じんましん・アナフィラキシー疑い)の原因推定に用います。15〜20分で膨疹の有無を判定します。重症既往がある場合は安全性の観点から実施しないことがあります。
パッチテスト:遅延型(斑状丘疹型、固定薬疹など)の原因推定に用います。48時間貼付後に剥がし、48・72時間後、必要に応じて1週間後にも判定します。外用薬や一部内服薬を適切な濃度で試験しますが、陰性でも完全否定はできません。
リンパ球刺激試験(DLST):遅延型の補助検査です。急性期は偽陰性があり、症状が落ち着いた後(寛解後4〜8週間)に行うのが目安です。薬剤によって感度・特異度が異なり、陰性でも原因薬を否定できません(施設により実施可否や保険適用が異なります)。
皮膚生検:局所麻酔で直径3〜4mm程度の組織を採取し、病理でSJS/TENの表皮壊死や血管炎などを評価します。結果は数日〜1週間が目安で、小さな瘢痕が残ることがあります。
必要時の追加検査:光線過敏が疑われる場合のフォトテスト、アナフィラキシー時の急性期トリプターゼ測定、細菌・ウイルス検査や臓器評価(尿検査・胸部画像)などを、症状に応じて選択します。誘発試験は原則行わず、例外的に厳重な管理下で検討されます。
ウイルス感染による発疹(麻疹・風疹・突発性発疹など)
⇒発熱と全身の発疹が同時に出る 薬を飲んでいなくても発症/感染症の流行あり
接触皮膚炎(かぶれ)
⇒薬を塗った部分が赤くかゆい 内服薬ではなく外用薬や貼付剤が原因
薬疹(非アレルギー性の副作用)
⇒発疹が出るが免疫反応ではない 再投与しても同じ症状が出ないことがある
膠原病・自己免疫疾患(SLEなど)
⇒慢性的な発疹や関節痛・臓器障害を伴う 薬の中止で改善しない/長期的に続く
食物アレルギー
⇒食べた直後にじんましんやかゆみ 薬でなく食事が原因/食後すぐに出やすい
細菌感染による皮膚症状
⇒赤く腫れて膿が出る 真菌・細菌の培養検査で原因が特定される
⚠️緊急度をチェック! ◻︎ 高熱(38℃以上)や急速に広がる発疹 ◻︎ 口・目・陰部のただれ/水疱/皮むけ ◻︎ 息苦しさ・血圧低下感(アナフィラキシー疑い) → 1つでも当てはまれば受診/オンライン相談を。
受診の目安(タイムライン)
当日〜翌日:高熱、粘膜症状、水疱・皮むけ、呼吸症状がある
早めに受診:発疹が3日以上改善しない/同じ薬で毎回出る
様子見可:軽症で、原因薬の中止後に改善傾向が明らか(ただし悪化時は受診)
予防のポイント 同じ薬・同系統薬の再投与を避ける お薬手帳・アレルギーカードに記録し、医療者へ必ず共有 市販薬・健康食品・造影剤を含め、今後の新規薬開始時は早期の変化に注意 光線過敏型が疑われる場合は紫外線曝露に注意(医師指示に従う)
FAQ
Q1. 一度出た薬物アレルギーの薬は、もう使えませんか?
A1. 原則は再投与回避です。代替薬を医師が検討し、お薬手帳で情報共有を徹底してください。
Q2. 市販薬だけで様子を見ても大丈夫?
A2. 軽症でも、悪化・発熱・粘膜症状があれば受診を。自己判断での長期内服や外用は避け、早めに医師へ相談してください。
Q3. 検査は必ず必要ですか?
A3. 多くは問診と視診で方針を決め、必要に応じて血液検査・皮膚検査・パッチテスト・DLST・生検などを選択します。時期(寛解後4〜8週間など)に注意が必要な検査もあります。
Q4. どの薬が原因か分からない時は?
A4. 直近1〜2か月の薬歴(市販薬・健康食品・造影剤を含む)を整理し、受診時に持参してください。総合的に原因推定と重症度評価を行います。
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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