食物アレルギーってどんな病気?症状チェックと対処法を皮膚科医が解説
⚠️まずは緊急度をチェック!
◻︎ 息苦しさ・声がれ・ぐったりする・繰り返す嘔吐など、急に強い症状が出てきた
◻︎ 少量の摂取でも毎回症状が出る
◻︎ 原因がはっきりせず、同様の症状を繰り返している→ 1つでも当てはまれば受診/オンライン相談を。

30代 女性のご相談
食物アレルギーってどんな病気?

医師の回答
食物アレルギーとは、卵や牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、エビなど特定の食べ物にふくまれる成分を体が「悪いものだ」とまちがえて反応し、じんましんやお腹の痛み、せきや息苦しさ、重いときはアナフィラキシーという命にかかわる症状を起こす病気で、予防にはその食べ物を食べないように気をつけることが大切です。

〜それ、ただの食べ過ぎじゃないかも〜
食物アレルギーは、特定の食べ物で皮膚のかゆみやじんましん、腹痛・嘔吐、せきや息苦しさが出る状態です。
多くは食後数分〜2時間以内に現れます。
放置するとアナフィラキシー〔いっきに全身に及ぶ重い反応〕を起こすことがあり、早めの受診をすすめます。
原因は卵・牛乳・小麦などのたんぱく質に対する免疫反応で、運動や解熱鎮痛薬、アルコールなどが悪化因子になることがあります。

N.Cさん
ケーキを食べた日の夜、腕にじんましんが出てムズムズ。最初は寝不足や乾燥のせいかなと思いましたが、別の日にパスタのあとにも腹痛があり、不安になりました。食後すぐに症状が出ることが多く、タイミングに共通点があると気づきました。
オンラインで相談し、問診で食事と症状の時間を整理。必要な検査を案内され、むやみに小麦を全部抜かない方針に。運動のタイミングや市販薬の飲み合わせにも注意が必要だと分かりました。自己判断での負荷試験はせず、医師の指示で対応中です。

30秒セルフチェック/診断チャート
STEP 1|症状の出方・強さ
・皮膚:じんましん、赤み、かゆみ
・消化器:腹痛、嘔吐、下痢
・呼吸器:せき、ぜんそく様、息苦しさ(重いときは全身に及ぶ)
STEP 2|経過・持続
・多くは食後数分〜2時間以内に出現
・運動、解熱鎮痛薬、アルコール、発熱・疲労などで悪化しやすい
STEP 3|随伴症状・背景
・乳幼児に多く、アトピー性皮膚炎や家族歴があると起こりやすい
・成人ではエビ・カニ、魚、果物・小麦などが目立つ
・生/加熱や量、品種で誘発しきい値が変わる
—— 判定 ——
該当が多い:要受診
該当が少ない:迷う場合も早めに相談
食物アレルギーとは、特定の食物に触れる・食べることで皮膚症状(じんましん、赤み、かゆみ)、消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢)、呼吸器症状(せき、ぜんそく、息苦しさ)などを引き起こす免疫学的反応の総称です。症状は多くが食後数分〜2時間以内に出現し、重い場合は血圧低下や意識障害を伴うアナフィラキシーに至ります。子どもは卵・牛乳・小麦が多く、大人ではエビ・カニ、魚、果物などが目立ちます。
たとえば、口腔アレルギー症候群〔こうくうアレルギーしょうこうぐん〕は果物や野菜で口のかゆみ・腫れが中心、食物依存性運動誘発アナフィラキシー〔しょくもついぞんせいうんどうゆうはつ…〕は小麦などを食べた後の運動で発症、乳児のミルクや卵では皮膚炎の悪化として現れることもあります。
【主な原因】
卵・牛乳・小麦、ピーナッツ・木の実、エビ・カニ、魚などのたんぱく質に対するIgE反応
花粉症に関連した果物・野菜での交差反応(口腔のかゆみなど)
食後の運動、解熱鎮痛薬やアルコールの摂取、発熱・疲労などの増悪因子
量・調理法(生・加熱)や品種差による誘発しきい値の変動
好発部位・なりやすい人としては、乳幼児に多く、アトピー性皮膚炎や家族にアレルギーがある方で起こりやすい傾向があります。成人発症は果物・甲殻類・小麦などが多く、職業での食材曝露や運動習慣が影響する場合があります。
経過は、卵・牛乳・小麦は成長とともに食べられるようになることが多い一方、ピーナッツ・木の実・そばなどは長引くことがあります。汗・運動・熱、解熱鎮痛薬、アルコール、強いストレス、皮膚の乾燥や掻破が悪化因子です。
受診の目安は、
①息苦しさ・声がれ・ぐったり・繰り返す嘔吐などの急な悪化、
②少量摂取でも症状が出る、
③原因がわからず繰り返す場合です。
早期に評価すると、不要な除去を減らし栄養リスクを下げられます。
応急処置(今日できること)
原因と疑う食べ物の摂取を避ける(自己判断の過度な除去は避け、早めに相談)
皮膚症状が強い場合は、指示に従って外用薬で炎症を抑える
じんましん・かゆみ・鼻症状には抗ヒスタミン薬の内服が第一選択
強い全身反応が起きた場合はアドレナリン自己注射薬(処方がある方)を速やかに使用し救急受診
経口免疫療法などの負荷は医師管理下でのみ行う(自己判断は禁止)
✅ 主な治療薬(食物アレルギー)
① 外用薬(皮ふ症状に使う場合)
▶ ステロイド外用薬(炎症を抑える)
じんましんや湿疹が強いときに使用。強さや部位に応じて調整。
強さ 主な薬剤名 商品名(例)
Very Strong モメタゾンフランカルボン酸 フルメタ など
Strong ベタメタゾン吉草酸エステル リンデロン-VG など
Medium ヒドロコルチゾン酪酸エステル ロコイド など
Weak プレドニゾロン プレドニン軟膏 など
▶ 保湿剤(皮膚バリアを守る基本薬)
ヘパリン類似物質(ヒルドイドなど)
ワセリン
② 内服薬(症状のコントロールに)
▶ 抗ヒスタミン薬(第一選択)
セチリジン(ジルテック)
フェキソフェナジン(アレグラ)
オロパタジン(アレロック)
ロラタジン(クラリチン)
👉 じんましん・かゆみ・鼻炎症状を抑える
▶ ステロイド内服(重症例・短期使用)
プレドニゾロン
👉 強いアレルギー症状のときに短期間のみ使用
③ 注射薬(重症例・アナフィラキシー対策)
▶ アドレナリン自己注射薬(エピペン®)
強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が起きたときに命を救う薬
学校や外出先でもすぐに使えるよう処方される
▶ ゾレア(オマリズマブ)※一部ケースで使用
IgE抗体を標的とする生物学的製剤
重度の食物アレルギー患者に臨床応用が進んでいる
④ 特殊療法
▶ 経口免疫療法(OIT)
医師の管理下でごく少量から原因食物を摂取し、体を慣れさせる方法
卵・牛乳・小麦などで実施例あり
アナフィラキシーリスクがあるため、自己判断では禁止
📌 まとめ
軽症 → 抗ヒスタミン薬・ステロイド外用薬でコントロール
重症 → ステロイド内服・エピペン®常備
根本的対応 → 経口免疫療法(専門医でのみ)
◆ 病院で何を調べるの?
視診・問診/食事歴・症状時間軸の整理:原因候補と重症度、関連行動(運動・服薬・アルコール)を特定します。食事日誌の確認で再現性を評価します。結果は当日から即日評価可能です。誘因の思い込みを避けるのが注意点です。
特異的IgE〔とくいてきアイジーイー〕(血液検査):原因食物に対する抗体の有無と量をみます。数日で結果が出ます。陽性でも必ずしも発症を意味しないため、数値だけで除去を決めないことが重要です。年齢に応じて6〜12か月〜1年ごとのフォローが目安です。
皮膚プリック試験〔ひふぷりっくしけん〕:皮膚に微量の抗原をのせ反応の強さを測ります。結果は15〜20分で判定できます。果物などは食品そのもので行うプリック・トゥ・プリックが有用ですが、薬の影響(抗ヒスタミン薬)で偽陰性に注意します。
成分特異的IgE(コンポーネント検査):ピーナッツや小麦などで、重症化と関連する成分(例:貯蔵たんぱく)への反応を調べ、リスク層別化に役立てます。結果は数日〜1週間程度。施設により対応の有無が異なります。
食物経口負荷試験〔けいこうふかしけん/OFC〕:医療管理下で少量から段階的に食べ、安全性と摂取可能量を確かめます。即時反応はその場で判定、遅発症状は当日〜翌日まで観察します。重症歴がある場合は入院や救急対応体制で実施し、前処置薬の影響にも注意します。
必要に応じた鑑別検査:食中毒・感染性胃腸炎(培養・迅速検査)、ヒスタミン中毒(青魚)、乳糖不耐症(呼気試験)などを評価し、非アレルギー性の原因を除外します。
食中毒(細菌・ウイルス感染)
⇒嘔吐・下痢・発熱・複数人に同時発症 潜伏期が数時間〜数日/感染性あり
胃腸炎(ウイルス・細菌性)
⇒下痢・腹痛・発熱 食事に関係なく症状が出ることが多い
乳糖不耐症
⇒牛乳を飲むと下痢や腹痛 アレルギーではなく消化不良/皮ふ症状は出ない
セリアック病(グルテン不耐症)
⇒小麦摂取で慢性的な下痢・体重減少 アレルギーではなく自己免疫性疾患
口腔アレルギー症候群(OAS)
⇒果物や野菜を食べた直後に口・のどがかゆい 花粉症との関連が多い/全身症状は少ない
アトピー性皮膚炎(悪化因子としての食物)
⇒皮ふの赤み・かゆみが慢性的に続く 食後すぐではなく慢性的に悪化することが多い
⚠️緊急度をチェック! ◻︎ 息苦しさ・声がれ・ぐったり・繰り返す嘔吐 ◻︎ 少量摂取でも症状が出る ◻︎ 原因不明の症状を繰り返す → 1つでも当てはまれば受診/オンライン相談を。
受診の目安(タイムライン)
当日〜翌日:息苦しさ、声がれ、ぐったり、繰り返す嘔吐など急な悪化がある
早めに受診:少量の摂取でも症状が出る/原因が分からないまま繰り返す
様子見可:軽い症状で経過がはっきりしているが、迷う場合は早めに相談を
予防のポイント 確認済みの原因食を避ける(やみくもな除去は避ける) 運動直前直後の摂取、解熱鎮痛薬やアルコール併用など悪化因子を回避 食事と症状の時間軸を記録し、受診時に共有する
FAQ
Q1. 症状はどのくらいで出ますか?
A1. 多くは食後数分〜2時間以内に、皮膚・消化器・呼吸器のいずれか(または複数)が出ます。
Q2. 抗ヒスタミン薬で様子を見てもいい?
A2. じんましんやかゆみの軽減には第一選択ですが、重い症状や繰り返す場合は受診が必要です。
Q3. エピペン®は誰が持つべき?
A3. 強い全身反応の既往がある方など、医師が必要と判断した場合に処方され、携帯と使用手順の確認が重要です。
Q4. 経口免疫療法は自宅でできますか?
A4. アナフィラキシーのリスクがあるため、専門医の管理下でのみ行います。自己判断は避けてください。
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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