
20代 男性のご相談
副耳って、どんな病気?

医師の回答
耳の前方に生じる小隆起です。

〜赤ちゃんの“ほっぺ”や“耳の前”に小さなふくらみ…それは「副耳」かも!?〜
副耳(ふくじ)は、生まれつき耳のそばに小さな皮ふや軟骨のふくらみができている状態です。
小さなイボのように見えることが多く、片耳や両耳にできます。健康や聞こえにはほとんど影響しませんが、
見た目の理由などで希望すれば手術で取り除くことができます。
副耳(ふくじ)とは、生まれつき耳の前や頬のあたりに見られる、小さな突起やふくらみの総称です。皮膚に覆われたやわらかい粒のように見えることが多く、通常は痛みやかゆみを伴いません。赤ちゃんの発育段階で耳のもとになる組織(鰓弓〔さいきゅう〕)の一部が残ることで形成されると考えられており、先天性の変化のひとつです。妊娠中の生活習慣などが原因ではなく、自然に起こるものと理解されています。
副耳は、耳の前方や頬に1つだけ出る場合が多いですが、両側に複数認められることもあります。外見上は小さなイボや皮膚の突起に似ており、皮膚色からややピンク色を呈することがあります。中に軟骨を含むタイプでは、触れるとコリッとした感触を伴うこともあります。長さは1〜10mm程度と個人差があり、乳児健診などで偶然見つかるケースが多いです。
【主な原因】
胎児期に耳のもとになる鰓弓の癒合が不完全に終わること
耳の形成過程で残存した皮膚や軟骨組織
先天的要因による自然な発生で、外的因子は関与しないとされる
好発部位は耳の前方から頬にかけてで、特に赤ちゃんや幼児に見られます。片側だけに出ることが多いですが、家族性に両側に出る場合もあります。男児・女児を問わず発生します。
経過としては、成長しても自然に消えることはなく、外見上の特徴として残ります。悪化して炎症を起こすことはまれですが、引っかいたり摩擦を受けると赤くなることがあります。外観上の理由で手術による切除を選択する方も多く、早期に専門医へ相談することで、将来的な見た目や本人の心理的負担を軽減できる可能性があります。
✅ 使用される治療・ケア(副耳)
① 【基本情報と特徴】
▶ 副耳は、耳の前あたりにできる皮膚や軟骨の小さな突起で、先天的にみられる皮膚付属物の一種です。
発生時期 妊娠5〜8週ごろ、耳介が形成される途中で生じる過剰な組織
好発部位 **耳の前・頬あたり(耳珠の前〜下あごのライン)**に、米粒大〜豆粒大の皮膚・軟骨性突起がみられる
発見時期 多くは出生時に発見。エコーで出生前にわかることもある
好発側 片側性が多いが、両側性や家族性のこともある
合併症 通常は単独で認めるが、耳の形成異常・聴力障害・腎奇形などを伴うこともあり、必要に応じて精査される
② 【基本対応:無症状の場合】
▶ 機能的問題がなければ経過観察が原則
生活上の制限なし 通常、聴力・発達・日常生活に支障はないことを説明
経過観察の方針 感染・引っかかり・本人の希望がなければそのままでもよい
検査の必要性 聴力検査(OAEやABR)を一度行うことが推奨される(外耳形成異常の指標となることがある)
③ 【摘除が検討されるケース】
▶ 以下のような場合は形成外科や皮膚科での手術的切除が可能
引っかけて出血することがある 衣服・マスク・髪の毛で刺激を受けやすい位置にある場合
化膿・感染を起こしたことがある 副耳に皮脂腺や毛包があり、まれに感染・膿瘍を形成することがある
見た目が気になりご家族が希望する 小学校入学前など社会生活に入る前に手術を希望されるケースが多い
軟骨を含むしっかりした構造がある場合 自然脱落はせず、手術での完全摘除が望ましい(皮膚だけでなく軟骨の根部も含めて除去する)
④ 【手術の概要】
▶ 日帰り・局所麻酔または小児では全身麻酔で安全に実施可能
実施時期 基本的に乳児期後半〜就学前(1歳〜6歳)で希望に応じて調整
麻酔 小児では日帰り全身麻酔、大人では局所麻酔で可能なことが多い
手術内容 副耳とその根部の皮下組織・軟骨を含めて切除(再発防止)
所要時間 約20〜40分。吸収糸使用 or 抜糸ありの縫合
傷跡 小さな線状の傷が残るが、目立ちにくい部位かつ成長とともに目立たなくなることが多い
保険適用 保険診療で対応可能(美容目的と誤解されがちだが、医療的対象となる)
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・触診:突起の位置や大きさ、数を確認し、軟骨の有無を触れて判断します。赤ちゃんでも無理なく行える基本的な診察です。
- 超音波検査:副耳が深部に入り込んでいないか、血管や神経との位置関係を確認する目的で行います。特に大きめの突起や軟骨を含む場合に有用です。
- 画像検査(CT/MRI):副耳が他の顔面構造や耳の内部と関係していないかを詳しく評価する際に実施されます。通常は必要ありませんが、複雑な形態や他の異常を伴う場合に行われます。
- 聴力検査:まれに耳の発育異常と関連していることがあるため、必要に応じて実施します。耳の機能に影響がないかを早期に把握できます。
- 病理検査(摘出後):手術で切除した組織を顕微鏡で調べ、皮膚や軟骨からなる良性の組織であることを確認します。診断の確定に役立ちます。
🩺 副耳と似ているけど違うのは?
別の皮膚腫瘍⇒良性のほくろや脂肪腫など 副耳は付け根に特徴的な構造を持つ
茎性母斑など
⇒茎のある色付きの良性腫瘍 副耳とは発生部位・構造が異なる
予防のポイント 自己処理を避け、気になるときは皮膚科・形成外科を受診する
触ったり引っかいたりしないよう注意する
手術を検討する場合は生後6か月以降の適切な時期に相談する
傷あとを残さないために術後はテープ固定や紫外線対策を行う
清潔を保ち、感染や炎症を防ぐ
成長に伴い目立つことが心配なら早めに専門医に相談する
家族が不安に感じた場合も医療機関で説明を受ける
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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