
20代 男性のご相談
埋没耳ってどんな病気?

医師の回答
耳介が途中で折れ曲がった状態の変形です。
〜耳の上のほうが“うまっている”?それは「埋没耳」かも!?〜
耳介頭側の軟骨が皮下に埋入した変形です。メガネやマスクをするのに不便となることがあります。
軽症例では乳幼児期に装具による矯正を行います。矯正によっても治らない重症例、矯正による治療が期待できない
年齢に達している場合は手術により、埋没した耳介を引き出し、隣接する正常皮膚を移動して形成します。
埋没耳(まいぼつじ/Cryptotia:クリプトティア)**とは、耳の上部(耳輪上脚〔じりんじょうきゃく〕)が頭皮に埋もれて見える先天性の耳介(じかい)変形です。耳の上側が皮膚に密着しているため、見た目の問題に加え、眼鏡のフレームが耳にかけられない、ピアスホールが作れないなど、機能的な不便を伴うことがあります。片側・両側どちらにも起こり得て、軽度から重度まで幅広い状態があります。日本を含むアジア圏では比較的多く見られる耳の形成異常のひとつとされています。
埋没耳には、軽度で一見「折れ耳」や「たたみ耳」と似ているものから、耳介上部が完全に皮膚に覆われているものまで多様な形態があります。耳を軽く引っ張ると隠れていた軟骨が現れることがあり、この点が他の耳介形態異常との区別の目安になります。
【主な原因】
妊娠中の耳の形成過程で軟骨の発達にずれが生じる
耳介上部の皮膚が十分に成長せず、皮膚の中に軟骨が包み込まれる
遺伝的素因が関与する場合がある
埋没耳は、乳児から成人まで幅広く見られます。特に新生児期には耳の軟骨が柔らかいため矯正装具で改善しやすく、学童期以降は固まった軟骨のため手術が必要になることが多いです。男女差はなく、アジア人に比較的多いとされます。
経過としては、乳児期には矯正器具で数週間から数か月かけて自然な耳の形に導けることがありますが、治療が遅れると軟骨が硬くなり保存的治療は困難になります。進行して悪化する病気ではありませんが、成長に伴い整容的な悩みや、眼鏡・マスク・補聴器装着の不便が強まることがあります。早期に相談することで、保存療法や適切な時期での手術選択が可能となり、生活の質を保ちやすくなります。
✅ 使用される治療・ケア(埋没耳)
① 【基本情報と特徴】
▶ 埋没耳は、耳介の上部が皮膚や側頭部の軟部組織に埋もれて、正常な位置に出てこない耳介変形の一種
発症時期 先天性(出生時から)に認められる。耳介形成異常の一種
見た目の特徴 耳の上部が頭皮に埋もれている、耳の縁(耳輪)が折れ曲がって狭く見える
好発側 片側性が多いが、両側のこともある
機能への影響 聴力には通常影響なし。ただし耳の通気性・洗浄の難しさや、メガネ・マスクがかけにくいといった機能的問題が出やすい
🔹 埋没耳は、見た目の問題だけでなく「耳の役割(音の方向性・眼鏡装着など)」にも関係することがあるため、治療の意義は高いです。
② 【新生児期(生後1〜2か月以内)の対応】
▶ 耳介矯正(非観血的治療)により、手術なしで正常な形に戻せる可能性が高い
耳介矯正(装具療法) 医療用耳介矯正器具(イヤーウェル・オトフィックスなど)を装着して形を整える。成功率90%以上
装着期間 通常は2〜8週間装着。生後3か月を過ぎると軟骨が硬くなり矯正が難しくなる
保険適用 日本では保険適用外(自費診療)。一部医療機関・美容クリニックで対応
③ 【3か月以降〜幼児期以降:手術治療】
▶ 軟骨が硬くなったあとは、形成外科での手術的矯正が基本
耳輪形成術(耳輪挙上術) 皮膚の切開+埋もれている軟骨を引き出し、正常な耳の形に再配置する術式。6歳以上が目安
軟骨・皮膚移植 重度埋没耳では肋軟骨や耳介後部皮膚の移植を併用することもあり、2回以上の手術が必要な場合もある
麻酔 小児では全身麻酔が原則。日帰り or 1泊入院で実施されることが多い
保険適用 多くは機能的問題を伴う「先天性奇形」として保険適用あり(美容目的の強調は避ける)
④ 【日常生活上の配慮】
メガネ・マスク・イヤホンの装着 耳の上部が埋まっていると、ずれや圧迫痛の原因になることがある。形が戻ると日常生活が快適に
洗髪・耳掃除の難しさ 埋もれた部分に湿気や皮脂がたまりやすいため、通気性と清潔の保持が必要
帽子・ヘルメットの当たり 耳の上端が引っかかって痛くなることがあるため、柔らかい素材やサイズ調整が必要
保育園・学校での説明 必要に応じて教員に伝え、補聴器や装具、術後処置への理解を得ておくことが安心
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・触診:耳介の形態を直接確認し、埋没している範囲や皮膚の可動性を観察します。両耳の対称性や、他の耳介異常との鑑別にも役立ちます。
- 問診:出生時からの耳の形の変化や家族歴、装具治療の希望や不便に感じる点を詳しく聞き取ります。矯正の適応や手術の必要性を判断する基礎となります。
- 写真記録:耳の形態を写真に残し、矯正や手術前後の比較に用います。経過を客観的に確認でき、治療効果の判定にも役立ちます。
- 超音波検査:必要に応じて耳介周囲の皮下組織や軟骨の位置を確認します。非侵襲的で小児にも安全に行える点が利点です。
- 聴力検査:耳介形態の異常に伴う聴力低下の有無を確認するために行われます。特に両側例や家族に耳の異常がある場合は重要です。
- 形成外科的評価:手術を検討する際には、耳の軟骨の硬さや皮膚の余裕を細かく評価します。術式選択や時期の判断に欠かせません。
🩺 埋没耳と似ているけど違う症状は?
折れ耳⇒耳の軟骨が折れていたり、曲がっている 耳のふちが「見える」が折れたように変形
小耳症
⇒耳全体の発育が不完全で小さい/外耳道がないことも 耳のサイズや構造そのものが異常/聴力低下を伴うことも
新生児耳変形(軽度)
⇒耳の形の左右差やゆがみ 自然に戻ることもあるが、埋まってはいない
予防のポイント 新生児期には耳の形をこまめに観察する
異常を感じたら早期に皮膚科・形成外科へ相談する
乳児期には耳介矯正装具の使用を検討する
長時間うつ伏せ寝や耳を圧迫する姿勢を避ける
眼鏡やマスクで耳が痛む場合は補助具を活用する
成長とともに見た目を気にする場合は手術を検討する
手術後は医師の指示に従いテーピングや圧迫を継続する
家族に同様の耳介異常がある場合は注意深く観察する
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
ヒフメドの編集チームは、皮膚疾患で悩む方に向けて専門的かつ最新の情報を分かりやすく届けることを目指しています。
アトピーや皮膚感染症といった疾患の基礎知識から、治療・生活管理の実用的なコツ、最新の治療事情まで幅広くカバー。読者が記事を読むことで「すぐに役立てられる」情報提供を心がけています。