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20代 男性のご相談

小耳症ってどんな病気?

医師の回答

耳介が小さく、一部あるいは大部分が欠損している状態です。

〜耳のかたちが小さい・ない状態。適切な治療で見た目も聴こえもサポートできます〜
耳介が小さく、一部あるいは大部分が欠損している状態です。
1〜2万人に一人の発生頻度と言われています。皮膚、軟骨の状態により手術方法が異なりますが、複数回の手術を必要とします。

小耳症(しょうじしょう)とは、生まれつき外耳(耳のかたち)が十分に発育していない状態を指す先天性の疾患です。片側のみに起こることが多いですが、両側に見られる場合もあります。耳たぶが小さい、丸まっている、ほとんど耳が形成されていないなど見た目の程度はさまざまであり、外耳の異常に加えて中耳や内耳の構造にも影響が及ぶことがあります。そのため、聴力に問題が生じるケースがあり、骨伝導補聴器や手術による聴力サポートが必要になる場合もあります。日本では出生1万人に1人前後とされる比較的まれな病気です。

小耳症の病型には、耳介の一部が存在する軽度例から、外耳がほとんど欠損する重度例まで幅広い段階があります。代表的な所見としては、耳たぶだけが存在する、外耳道が閉鎖している、耳介全体が形成されていないなどが挙げられます。また、トリーチャーコリンズ症候群などの遺伝性疾患に合併することも知られています。

【主な原因】

  • 妊娠初期(5〜8週)に外耳の発育が途中で停止

  • 多くは原因不明で偶発的に発生

  • 遺伝や家族歴に関連することもある

  • 一部は症候群(例:トリーチャーコリンズ症候群など)に伴って起こる

小耳症は片側に発生することが多く、両側性の場合は難聴の影響が大きくなります。性差は明らかでなく、あらゆる人種で報告されています。発生部位は耳介ですが、外耳道閉鎖や中耳の発育不全を伴うこともあり、聴力への影響は症例ごとに異なります。

進行や経過としては、生まれつきの状態がそのまま持続します。成長に伴い耳のサイズや顔のバランスは変化しますが、自然に耳の形が整うことはありません。聴力障害は外耳道閉鎖や伝音難聴として現れ、放置すると言語発達や学習に影響することもあります。乾燥や炎症など二次的な皮膚トラブルが生じる場合もあります。早期に耳鼻科や形成外科で評価し、聴覚と言語の発達を支援することで、生活の質が大きく改善します。

✅ 使用される治療・ケア(※個々の状態・重症度・施設方針により異なります)

① 【基本情報と分類】
▶ 外耳(耳介)や外耳道の形成が不完全な先天性の耳の形態異常
発生時期 妊娠5〜8週ごろの耳介形成過程の異常
好発部位 ほとんどが片側性(右耳に多い)、両側性はまれ(10~15%未満)
病変の範囲 耳介の小ささ、耳たぶの欠損、耳道の閉鎖(外耳道閉鎖症)を伴うことが多い
聴力の状態 外耳・中耳の伝音障害が中心。内耳(蝸牛)が正常なことが多く、補聴で聴力改善が期待できる
合併症の有無 頭蓋顔面・顎・口腔・腎臓・心臓などの奇形が伴う「症候群性小耳症」のこともあり、精密検査が必要

② 【主な分類と重症度】
▶ 耳介の発達程度により分類(Nagata分類など)
軽度小耳症 耳の形はある程度あるが、小さい・変形がある
中等度小耳症 耳の形が一部のみ。耳たぶが残っていたり、変形した軟骨のみが存在
高度小耳症/無耳症 耳介の構造がほぼ消失 or 完全に存在しない

③ 【聴力への対応】
▶ 聞こえを確保することが最優先の支援項目
骨導補聴器(BAHAなど) 新生児期〜装着可能。骨を通じて内耳へ音を届けるタイプの補聴器
ヘッドバンド式補聴器 頭に装着する柔らかいバンドで骨導補聴器を保持。早期の音刺激・発語支援に有効
インプラント型補聴器 手術により装着するタイプ。5歳以上・骨の成長に応じて検討される
両側小耳症の場合 聞こえの刺激不足による言語発達の遅れに注意。言語聴覚士によるサポートが有効

🔹 聴覚検査(ABR・OAEなど)を生後すぐに行い、片耳でも難聴があれば早期介入が推奨される。

④ 【耳介形成の選択肢】
▶ 医療的にも美容的にも非常に重要な治療項目(小学校入学前が一つの目安)
肋軟骨移植による自家組織形成 6〜10歳頃から(肋軟骨が採取できるようになる) 身体の一部を使って自分の組織で耳を形成。手術は2〜3回に分けて行うことが多い
人工材料による再建(MEDPORなど) 3〜5歳頃から可能な施設も 高精度な耳の形を再現できるが、感染や破損リスクあり。施設により取り扱いが異なる
義耳・補綴装具 手術が困難な場合や希望されない場合の選択肢 シリコンなどで精巧に作成。毎日の装着・着脱・清掃が必要

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:耳介の形態や外耳道の有無を確認し、家族歴や合併症の有無を問診します。出生直後から行われ、重症度や治療計画を立てる第一歩になります。
  • 聴力検査(新生児聴覚スクリーニング/ABR・OAE):音への反応を測定し、内耳や聴神経の機能を評価します。生後すぐに実施され、難聴の有無を早期に把握することができます。再検査や精密検査が必要な場合は耳鼻科で行います。
  • 画像検査(CTやMRI):中耳・内耳の構造を詳細に調べ、外耳道形成や手術の適応を判断します。CTは骨構造、MRIは神経や内耳の評価に有用で、被曝や鎮静のリスクに配慮が必要です。
  • 遺伝学的検査:小耳症が症候群や遺伝性疾患に関連している場合に実施されます。原因遺伝子を特定することで再発リスクや合併症管理に役立ちます。結果判明までに時間を要することがあります。
  • 言語発達評価:難聴が疑われる場合、言語聴覚士による発達評価が行われます。年齢ごとに発達段階を確認し、必要に応じて補聴器装用や言語療法を検討します。定期的な経過観察が重要です。

🩺 小耳症と似たように見えるケース

 軟骨の変形

⇒軽度の耳の折れ・曲がり・ねじれ 形の異常のみで、聴力や外耳道は正常なことが多い

 耳瘻孔(じろうこう)

⇒耳の前に小さな穴やくぼみがある先天異常 見た目は軽度で、耳のサイズ自体は正常

 新生児耳変形

⇒出生直後の耳の曲がりや折れ 1〜2週間で自然に戻ることもあり/イヤーモールド療法で改善可能

予防のポイント
妊娠中の健康管理を心がける
出生後は早期に聴力検査を受ける
皮膚の乾燥や炎症を防ぐために保湿ケアをする
補聴器や形成手術の情報を早めに集めて準備する
保育園・学校に必要な配慮を依頼する
言語発達を見守り、必要に応じて言語療法士に相談する
心理的サポートを受けやすい環境を整える
定期的に耳鼻科・形成外科で経過を確認する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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