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20代 女性のご相談

乳児湿疹ってどんな病気?

医師の回答

母乳やミルクを飲んでいる乳児の皮膚に現れる、赤いプツプツ・カサカサの湿疹などの皮膚トラブルの総称です。

〜赤ちゃんのほっぺや体に赤いブツブツ…それ、「乳児湿疹(にゅうじしっしん)」かも!?」〜
乳児湿疹とは、母乳やミルクを飲んでいる乳児の皮膚に現れる、赤いプツプツ・カサカサの湿疹などの皮膚トラブルの総称です。
乳児湿疹は、食べ物や繊維の刺激に触れやすい、口の周り・顎の周りを中心とした顔面をはじめ、皮脂の分泌が盛んな頭部、
蒸れて汗がたまりやすい首回り、手首、足首などにも現れます。

 

乳児湿疹(にゅうじしっしん)とは、生後まもない赤ちゃんに多くみられる皮膚の湿疹や肌荒れの総称です。顔や頭、首、関節の内側やおしりなどに出やすく、赤み、ブツブツ、カサカサ、じゅくじゅく、かさぶたといった多彩な症状を引き起こします。生後2〜3週間ごろから現れ、生後3〜4か月にかけてピークを迎えることが一般的です。赤ちゃんの皮膚は大人より薄く、外部刺激に弱いため、適切なケアと治療が重要になります。

乳児湿疹にはいくつかの病型があり、たとえば頭皮や顔にできる脂漏性湿疹、ほっぺや首にみられる乾燥性湿疹、よだれやミルクによる接触性湿疹などがあります。また、アレルギー体質の赤ちゃんではアトピー性皮膚炎の初期症状としてあらわれることもあります。

【主な原因】

  • 生後まもない時期の皮脂分泌過剰による毛穴のつまり

  • 成長とともに皮脂が減少し乾燥しやすくなること

  • 汗やよだれ、ミルク、便や尿などの付着による刺激

  • 衣類や寝具による摩擦や蒸れ

  • アレルギー体質や遺伝的要因が関与する場合

乳児湿疹は顔・頭・首・おしり、関節の内側などに出やすく、特に皮膚が重なって蒸れやすい部位に目立ちます。乳児期の赤ちゃん全般にみられますが、アレルギー素因のあるお子さんでは強く出る傾向があります。

経過としては、初期は赤みや小さなブツブツから始まり、掻き壊しやじゅくじゅくした状態を経て、慢性化すると皮膚が厚く硬くなる苔癬化〔たいせんか〕に進むこともあります。悪化因子には乾燥、汗、よだれ、摩擦、そしてかゆみによる引っかきが挙げられます。早めに皮膚科で治療を行うことで、かゆみや不快感を軽減し、赤ちゃんとご家族の生活の質を守ることができます。

✅ 使用されるお薬・ケア
① 【軽症(赤み・ざらつき・かさつき程度)】
▶ スキンケアと保湿を中心に
ワセリン系 白色ワセリン、プロペト 低刺激・保湿力高く、皮膚保護に適する
ヘパリン類似物質 ヒルドイド、ビーソフテンなど 乾燥やかゆみ予防。びらんやジュクジュク部位は避ける
ベビー用保湿剤 ピジョン、ジョンソン、アトピタなど 洗顔・入浴後すぐに全身へ塗布し乾燥防止

🔹 こまめな保湿で皮膚バリアを整えることが最重要。特に入浴後すぐの保湿が有効。

② 【中等症(赤みが持続、ジュクジュク、ひっかき)】
▶ 外用ステロイド薬の使用(短期間)
ヒドロコルチゾン酪酸エステル ロコイド軟膏 顔・首にも使えるマイルドなステロイド
クロベタゾン酪酸エステル キンダベート軟膏 小児用として使われることが多い。頬・耳・首などに使用可能

🔹 使用は1日1〜2回。数日〜1週間程度で改善したら保湿に切り替えるのが原則。

③ 【かゆみやひっかきが強い場合】
▶ 抗ヒスタミン薬(内服)を補助的に使用
クロルフェニラミン ポララミンなど 夜間のかゆみやぐずり対策に。眠気あり。小児にも使用可能
レボセチリジン ザイザルなど かゆみが強い場合に。眠気が比較的少なく使用しやすい

🔹 掻き壊し防止・睡眠確保のために医師判断で使用されることがあるが、必須ではない。

④ 【日常スキンケア】
▶ 予防と悪化防止の基本
やさしく洗う ベビー用石けんで1日1回、泡で洗ってすぐ流す。こすらないことが重要。
しっかり保湿 入浴後すぐにたっぷり保湿。乾燥してからでは遅いため「濡れているうちに」がポイント。
こまめな着替え 汗・よだれ・ミルクがついた衣服はこまめに交換。刺激物を避ける
爪を短くする 掻き壊しによる悪化・とびひ化予防のため。ミトン使用も可(長時間は避ける)

⑤ 【よくある部位と見た目の特徴】
顔(頬・おでこ) 赤み・ブツブツ・ガサガサ。ミルクやよだれの刺激が影響。
首まわり 汗や垢がたまりやすく、ジュクジュク・ただれになることも
胸・背中・お腹 全身の乾燥傾向やアトピー素因の兆候が出ることもある
関節の内側 肘・膝裏は湿疹の「たまり場」になりやすく、慢性化しやすい

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:湿疹の形や分布、経過を観察し、日常生活での刺激やスキンケア状況を確認します。診察室でその場で分かる情報が多く、まず基本となる検査です。
  • 皮膚掻把検査(真菌鏡検KOH):脂漏性湿疹や真菌感染(カビ)との鑑別に用いられます。皮膚を軽くこすって顕微鏡で確認し、数分〜1日程度で結果がわかります。
  • パッチテスト:接触性皮膚炎が疑われる場合に行います。背中などにアレルゲンを貼り付け、48〜72時間後に皮膚反応を確認します。判定まで外用薬の中止が必要な場合がある点に注意します。
  • 血液検査(IgE・好酸球):アトピー性皮膚炎やアレルギー体質の有無を調べる目的で行います。血液を少量採取し、数日で結果が得られます。
  • 細菌培養検査:湿疹がじゅくじゅくして二次感染が疑われる場合に実施します。膿や浸出液を採取し、どの細菌が原因かを調べることで適切な抗菌薬選択に役立ちます。

🔍 乳児湿疹と間違えられやすい病気(類似疾患)
 

乳児脂漏性皮膚炎

⇒頭皮や顔に黄色いかさぶたや赤み ベタベタ+かさぶたが目立つ/自然に改善することが多い

 アトピー性皮膚炎(乳児型)

⇒かゆみが強く、左右対称に湿疹 家族にアレルギー体質/2〜3か月以降も続く/乾燥肌も強い

 とびひ(伝染性膿痂疹)

⇒ブツブツがやぶれてジュクジュク→かさぶた 急に広がる/水ぶくれ・かゆみ/兄弟間でうつることも

 乳児口囲皮膚炎(よだれかぶれ)

⇒よだれ・食事が刺激になって赤くただれる 口のまわりに限定/よだれの多い子に多い/予防はガーゼ&保湿

 ネザートン症候群

⇒全身の皮ふが赤く、カサカサ/アレルギー体質 毛の異常・強い乾燥や感染・遺伝性/乳児湿疹より重い経過をたどる

 色素性乾皮症(XP)

⇒日光で皮ふに強い反応/遺伝性 目立つ日焼け・しみ・皮膚がんのリスクあり/幼少期から

予防のポイント
1日1回の沐浴やシャワーでやさしく清潔に保つ
洗ったあとはすぐに保湿剤を全身に塗る
石けんはよく泡立てて使い、こすらず洗う
汗やよだれはやさしくこまめに拭き取る
綿素材の衣類や寝具を選び、通気性をよくする
爪を短く整えて、引っかきによる悪化を防ぐ
室内の乾燥を避け、適度な湿度を保つ
気になる症状が長引く場合は早めに皮膚科を受診する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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