
20代 男性のご相談
被角血管腫ってどんな病気?

医師の回答
皮膚にできた小さな赤い膨らみの表面が固くなってイボ状にみえるもので、皮膚毛細血管がひろがったところの皮膚が厚くなるために生じます。
〜赤くて小さな“イボ”みたいなできもの、実は血管のかたまりかも!?〜 皮膚にできた小さな赤い膨らみの表面が固くなってイボ状にみえるもので、皮膚毛細血管がひろがったところの皮膚が厚くなるために生じます。
陰部にできると下着に付着した血液で気付くことがあります。一般的には男性に多い疾患です
被角血管腫(ひかくけっかんしゅ)とは、皮膚の浅い部分にある毛細血管が増殖してできる良性の皮膚腫瘍です。2〜5mm程度の赤〜赤紫色の小さな盛り上がりとして現れ、表面が乾燥してかさぶたのように見えることもあります。中心に角化(皮膚が硬く角のように見える状態)がみられることもあり、見た目がイボや血豆と紛らわしいのが特徴です。感染症ではなく、がんでもありませんが、皮膚がんとの区別が必要になる場合があります。
たとえば、足にできるものは摩擦で出血しやすく、手や体幹にできるものはひっかきで悪化することがあります。単発で現れることが多く、複数出現することはまれです。同じ血管由来の病変としては血管腫の仲間に分類されます。
【主な原因】
毛細血管や角質細胞の一部が異常に増える
外傷や摩擦刺激が契機になることがある
多くは自然発生的に出現する
遺伝的素因や体質的背景が関与する場合もある
好発部位は足、手、体幹など衣類や靴の摩擦を受けやすい部分で、子どもや若年者に多くみられます。とくに外傷や刺激を受けやすい部位に出現しやすい傾向があります。
初期には小さな赤い丘疹として現れ、摩擦やひっかきで出血やかさぶた形成を繰り返すことがあります。慢性化すると中心の角化が目立ち、イボ様に見えることもあります。乾燥、摩擦、外傷が悪化因子となるため、生活の中で刺激を避けることが大切です。早めに受診すれば、皮膚がんとの鑑別や小さいうちの処置によって傷あとを最小限にでき、安心につながります。

✅ 治療法
悪性化しないため必ずしも治療は必要ありませんが、
美容目的や出血防止のために除去を希望する場合は治療します。
◆ ①【レーザー治療】
色素レーザー(Vbeamなど) 血管病変に選択的に吸収され、色調改善・出血予防に有効
CO₂レーザー 表面の角化が強い場合に使用/切除的な意味合いも
◆ ②【電気焼灼・高周波治療】
内容 皮膚表面を焼灼し止血・除去/出血予防に有効
◆ ③【冷凍凝固(液体窒素)】
内容 比較的簡便に外来で実施可能/小病変・限局例に適応
◆ ④【外科的切除】
適応 巨大・再発・悪性との鑑別が必要な例
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・触診:色調や大きさ、質感を確認し、血管由来か角化性病変かを見極めます。通常は外来診察でその場で判断されます。
- ダーモスコピー(皮膚拡大鏡):血管の走行や角化の有無を拡大して観察し、皮膚がんなどの悪性病変との鑑別に有用です。非侵襲的で痛みはありません。
- 皮膚生検:確定診断が必要な場合に、小さな組織を局所麻酔下で採取します。数日〜1週間程度で病理結果が判明し、傷あとが残る可能性も説明されます。
- 細菌培養:繰り返す出血やかさぶたが感染を伴っていると疑われる場合に実施します。膿や滲出液を採取し、感染菌の有無を調べます。
- 血液検査:まれですが出血傾向の有無や全身的な血管病変を鑑別する際に行われることがあります。炎症や凝固機能を確認することで、背景疾患を把握できます。
🔍 被角血管腫と間違えやすい類似疾患(鑑別)
メラノーマ(悪性黒色腫)⇒黒くて不規則な形・大きくなる/がん 左右非対称・色ムラ・急に変化・出血/要生検
脂漏性角化症(老人性いぼ)
⇒茶〜黒で盛り上がる/加齢でできる 表面がゴワゴワ/境界明瞭/高齢者に多い
毛細血管拡張性血管腫(チェリースポット)⇒鮮やかな赤い点/出血しやすい 表面ツルツル/平ら or わずかな隆起
血管奇形・毛細血管奇形
⇒生まれつきの赤あざ/平らなことが多い 出生時からある/色が薄いピンク or 赤紫
尋常性疣贅(ウイルス性いぼ)
⇒肌色〜白っぽくザラつき/手足に多い 皮膚模様が消失/黒い点が見えることも(出血点)
紫斑・出血斑
⇒毛細血管からの出血による赤紫の斑 押しても色が消えない/時間とともに色が変わる(黄色→茶)
予防のポイント
摩擦や外傷を避けるよう衣類や靴の素材に注意する
皮膚をひっかいたり、むしったりしない
出血したときは清潔なガーゼで軽く圧迫する
保湿をして皮膚の乾燥や角化を防ぐ
紫外線による皮膚ダメージを避ける
気になるできものは早めに皮膚科で確認する
美容的に悩む場合は治療法を相談する
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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