
20代 女性のご相談
梅毒(バラ疹)ってどんな病気?

医師の回答
第Ⅰ期梅毒の症状が改善して4~10週間ほど経過した後に、粘膜や皮膚から体内に侵入した梅毒トレポネーマが血液によって全身に運ばれることで、第Ⅱ期に分類されるばら疹を発症します。

〜「ばら疹」って?皮膚に出るサインを見逃さないで!〜 第Ⅰ期梅毒の症状が改善して4~10週間ほど経過した後に、粘膜や皮膚から体内に侵入した梅毒トレポネーマが
血液によって全身に運ばれることで、第Ⅱ期に分類されるばら疹を発症します。
ばら疹は、微熱や全身倦怠感を伴い、5mm~2cm程度の淡い赤い発疹[紅斑(こうはん)]が全身にあらわれます。
手のひらや足の裏に多くみられ、自覚症状はありません。数日でなくなります。
梅毒(ばいどく)とは、トレポネーマ・パリダムという細菌によって起こる性感染症です。皮膚や粘膜だけでなく全身に症状が及び、段階ごとに症状が変化するのが特徴です。感染から数週間〜数か月後に現れる「ばら疹(梅毒性発疹)」は、皮膚に出る重要なサインで、見逃されやすいため注意が必要です。ばら疹はバラの花のように赤い斑点状の発疹で、胸・お腹・背中・手のひら・足の裏などに出現し、かゆみや痛みが少ない点も特徴です。
梅毒には進行段階があり、初期(第1期)では性器や口に硬いしこりや潰瘍(硬性下疳)が見られ、第2期では全身の発疹や脱毛、口内炎、リンパ節腫脹が出ます。放置すると数年後に心臓や神経に障害を及ぼす第3期以降に進行することがあります。薬疹や湿疹と区別が難しいこともあるため、皮膚に赤い発疹が出た場合には早期受診が望まれます。
【主な原因】
性行為(オーラル・アナルを含む)による粘膜接触
感染者の皮膚病変や潰瘍との接触
妊娠中の母子感染(先天梅毒)
適切な治療を受けないことによる持続感染
梅毒は年齢や性別を問わず感染する可能性がありますが、特に性行為の機会が多い若年層や妊娠可能年齢の女性で増加が報告されています。ばら疹は全身どこにでも出ますが、手のひらや足の裏など通常の発疹では出にくい部位に現れる点が特徴的です。
病気の経過は、初期のしこりや潰瘍から始まり、一時的に軽快しても数週間〜数か月後に発疹や全身症状が広がります。慢性化すると臓器や神経系にまで影響が及ぶことがあり、長期的な合併症の原因になります。乾燥や摩擦、発熱、免疫低下などで症状が悪化しやすく、早期の受診と治療により生活の質を保つことが期待されます。

✅ 治療薬(抗生物質)
◆ 原則:抗生物質による内服/注射
アモキシシリン(サワシリン®) 日本での第一選択(ペニシリン系)/2g/日を2〜4週間内服
プロベネシド併用 アモキシシリンの血中濃度を高めるため併用されることが多い
ペニシリンG筋注(ベンザシンペニシリン) 海外での標準治療/日本では未承認(一部特定病院でのみ)
ドキシサイクリン ペニシリンアレルギー患者の代替薬(100mg×2/日を2〜4週)
セフトリアキソン 神経梅毒・晩期梅毒など重症例に使用される注射薬
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・問診:皮膚や粘膜の潰瘍・発疹の特徴を確認し、性行為歴や発症時期を聴取します。湿疹や薬疹との鑑別に重要で、初診時に行われます。
- 血液検査(梅毒抗体検査):感染の有無を確認する基本検査です。スクリーニング検査(RPR法)と確定検査(TPHA法)を組み合わせ、活動性や既往を判定します。採血後、数日で結果が得られます。
- 皮膚生検:発疹や潰瘍が他の疾患と区別困難な場合に行われます。局所麻酔下で皮膚を一部採取し、病理組織学的に診断します。結果は数日〜1週間程度で判明し、瘢痕のリスクがあります。
- PCR検査:病変部の分泌物から遺伝子を検出する方法で、梅毒トレポネーマの存在を直接確認できます。特に早期の診断に有用ですが、施設によっては実施できない場合があります。
- パートナー検査:感染拡大を防ぐため、同居家族や性的接触のあったパートナーに対しても血液検査を行います。本人の治療と並行して進めることが再感染防止につながります。
- 妊婦健診でのスクリーニング:母子感染予防のため、妊娠初期に必ず梅毒抗体検査を行います。陽性の場合は迅速に治療が開始されます。
🔍 バラ疹(第二期梅毒)と間違えやすい類似疾患(鑑別)
薬疹(薬によるアレルギー)⇒飲み薬の数日〜数週間後に発疹/かゆみあり 原因薬がある/発熱・白血球増加/左右対称が多い
ウイルス性発疹(風疹・麻疹など)
⇒全身に赤い斑点状の発疹/発熱・リンパ腫大 流行状況・ワクチン歴・咽頭炎など伴うこと多い
膠原病(全身性エリテマトーデスなど)
⇒発疹+関節痛・脱毛・光過敏など多彩な症状 手の甲・顔面にも特徴的な発疹/自己抗体検査で判別
乾癬(かんせん)
⇒赤く盛り上がる発疹+白いフケのような皮むけ ひじ・ひざに多い/慢性経過/かゆみあり
HIV初期症状(急性期)
⇒発熱・のどの痛み・赤い皮疹が全身に出る HIV検査で確定/感染リスクや全身症状をチェック
梅毒性脱毛(バラ疹と併発)
⇒地図状・虫食い状の脱毛 頭皮にも症状/バラ疹と同時に出ることも
予防のポイント
性行為時はコンドームを正しく使用する
不特定多数との性行為を控える
定期的に性感染症検査を受ける
発疹や潰瘍を自己判断で放置しない
パートナーと一緒に検査・治療を受ける
妊娠中は必ず健診で梅毒検査を受ける
治療中は医師の指示どおり薬を最後まで服用する
体調不良時や発熱時には無理せず受診する
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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