
20代 女性のご相談
ジアノッティ病・ジアノッティ症候群ってどんな病気?

医師の回答
ジアノッティ病・ジアノッティ症候群は、乳幼児がB型肝炎ウイルスに感染することで発症する病気です。
〜ウイルスのあとに出るブツブツ、それはジアノッティ病かも!?〜 ジアノッティ病・ジアノッティ症候群は、乳幼児がB型肝炎ウイルスに感染することで発症する病気です。
発症初期には皮膚病変として、米粒大のブツブツしたもの[丘疹(きゅうしん)]や赤い発疹[紅斑(こうはん)]が腕や脚に
あらわれ、顔やからだ、お尻などに広がります。軽いかゆみを伴う場合もありますが、自然に治ります。
発熱や吐き気、嘔吐、黄疸などの自覚症状は軽く、自然に治ります。
ジアノッティ病(ジアノッティ症候群)とは、ウイルス感染のあとに子どもに出現する一時的な皮膚の発疹症です。特に乳幼児から学童期に多くみられ、腕や脚、顔などに赤い丘疹(ぽつぽつとした発疹)が現れます。直接ウイルスが皮膚に感染するのではなく、ウイルスに対する免疫反応の一部として発疹が出現すると考えられています。発疹以外に重い症状が出ることは少なく、多くは数週間で自然に治癒します。
たとえば、腕や脚やお尻、顔に散在する赤い発疹が典型で、かゆみを伴うこともあります。過去にはB型肝炎ウイルスが関連するとされていましたが、現在ではEBウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルスなど、さまざまな良性ウイルス感染後に見られることが多いとされています。
【主な原因】
B型肝炎ウイルス感染後(現在は稀)
EBウイルス感染後
アデノウイルスやサイトメガロウイルスなど他のウイルス感染
ウイルス感染に対する免疫反応
好発部位は腕・脚・お尻・顔などの広い範囲で、乳幼児から小学校低学年の子どもに多く起こります。風邪や発熱のあとに発疹が出て、子ども自体は元気な場合が多いため、保護者が突然の皮膚症状に驚いて受診するケースがよくみられます。
経過は、発熱や上気道症状が落ち着いたあとに発疹が出現し、数日から1週間程度で増え、その後2〜4週間かけて自然に消失していきます。掻破(そうは)による悪化や二次感染を防ぐことが重要です。乾燥やかゆみ、摩擦が悪化因子となり得ます。早期に医師が診断し、必要に応じて血液検査や肝機能の確認を行うことで、安心して経過を見守ることができます。

✅ ジアノッティ病に使用される治療薬
🔸 基本はウイルス性の自然治癒疾患のため、対症療法のみで済むことが多いです。
◆ ①【かゆみ・炎症の軽減:外用薬】
外用ステロイド ロコイド、キンダベートなど かゆみ・赤みが強い部位に短期間使用(顔や四肢)
亜鉛華軟膏 サトウザルベなど 非ステロイド。刺激が少なく安心して使える
保湿剤 ヒルドイド、ワセリン 皮膚バリア維持・かゆみ予防の基本ケア
◆ ②【かゆみ対策の内服薬】
抗ヒスタミン薬 ケトチフェン、クロルフェニラミン かゆみが強い場合に使用。夜間掻破防止にも
◆ ③【重症例(まれ)】
全身状態が悪い、発熱が続く、リンパ節腫脹や肝腫大がある場合はウイルス感染症に応じた精査・入院管理が行われることもあります。
ただし、ほとんどの例は数週間で自然に改善します。
✅ 注意点と経過
感染力 通常はウイルス感染後で発疹が出るため、発疹出現時点で感染力は低いことが多い
他の子への影響 通園・通学は、発熱や全身状態が悪くなければ可能な場合が多い(医師の判断による)
再発 基本的に再発はほとんどない
◆ 病院で何を調べるの?
視診・問診:発疹の分布や形態、発症時期を確認することでジアノッティ病の可能性を推定します。発熱やかぜ症状の有無、経過を含めて判断されます。
血液検査(肝機能):ASTやALTなどの肝機能値が一時的に上昇することがあるため確認されます。数週で自然に改善することが多いですが、経過観察に有用です。
血液検査(ウイルス抗体):EBウイルスやアデノウイルスなど、原因とされるウイルス感染の有無を確認します。感染後であれば抗体陽性が判明することがあります。
皮膚生検:鑑別が必要な場合に行われます。局所麻酔下で皮膚の一部を採取し、組織学的に炎症パターンを確認します。結果は数日後に判明します。
細菌培養:発疹をかき壊して膿や滲出液が出ている場合に行います。二次感染の有無を確認する目的で実施され、必要な抗菌薬の選択に役立ちます。
◇ 間違えやすい他の病気(鑑別)
伝染性紅斑(りんご病)
⇒両頬が真っ赤に/腕・太ももにレース状の発疹が出る 発熱後に出現/顔の発疹が特徴的
ウイルス性発疹症(突発性発疹など)
⇒熱のあとに発疹/全身にうすい赤いブツブツ お腹・背中など体幹に出やすい/年齢とウイルスの種類で診断
手足口病
⇒手・足・口の中に水疱性の発疹/口内炎がつらい 水ぶくれ/痛みや食欲低下が出ることも
汗疹(あせも)
⇒暑い時期に汗の出口がつまってブツブツ かゆみが強く、汗をかく部位に限定/全身には広がらない
アトピー性皮膚炎
⇒慢性的にかゆくて赤い湿疹/繰り返し出る 皮膚が乾燥しやすく、左右対称・頬や関節の内側に出やすい
薬疹(薬による湿疹)
⇒飲み薬・注射の後に全身に発疹が出る 新しく薬を使っていないか確認が必要/皮膚症状+発熱に注意
ワクチン後反応
⇒ワクチン接種後に軽い発疹が出ることも ワクチン後数日以内の発疹なら一過性のことが多い
多形紅斑(たけいこうはん)
⇒ぶつぶつが丸くリング状に広がる/手足・体幹に出現 くっきりした円形/ウイルス感染や薬が誘因になることも
予防のポイント
紫外線を避け、日焼け止めや帽子で皮膚を保護する
手洗い・うがいでウイルス感染を予防する
かぜ症状があるときは安静にして無理をしない
発疹が出たら皮膚を清潔に保つ
入浴時はぬるめのお湯でやさしく洗う
保湿剤で皮膚の乾燥を防ぐ
かゆみがある場合は爪を短くして掻破を防ぐ
発疹が続く・悪化する場合は皮膚科を受診する
肝機能異常が疑われるときは定期的に血液検査を行う
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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