
30代 男性のご相談
掌蹠膿疱症ってどんな病気?

医師の回答
掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に赤い小さなブツブツ[膿疱(のうほう)]ができる病気です。


〜手のひらや足のうらに繰り返す水ぶくれ、それ“膿疱(のうほう)”かも!?〜 掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に赤い小さなブツブツ[膿疱(のうほう)]ができる病気です。
原因は不明ですが、喫煙や扁桃炎や虫歯などと関連すると考えられています。
膿疱が両手、両足に対称的にみられかゆみを伴うのが特徴で、重症化すると関節に痛みを伴います。
中年女性に多く、膿疱は2~4週間繰り返しできます。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは、手のひらや足のうらに無菌性の小さな膿疱(膿をもった水ぶくれ)が繰り返し出現する慢性の皮膚疾患です。細菌感染によるものではなく、人にうつる病気ではありません。膿疱が破れて乾燥すると、皮むけや赤み、ひび割れ、かゆみ、痛みが伴い、歩行や手作業に支障をきたす場合もあります。長期的に再発と軽快を繰り返すため、継続的なケアや治療が必要になることがあります。
たとえば、手のひらや足のうら、指のわき、かかと、土踏まずなどに出やすく、爪の変形や胸の関節(胸肋鎖関節)に炎症を伴うこともあります。歯周病や扁桃炎などの病巣感染、歯科金属によるアレルギー、喫煙やストレスなどが悪化要因として挙げられます。
【主な原因】
免疫の異常反応(自己免疫機序の関与)
慢性炎症(虫歯・歯周病・扁桃炎などの病巣感染)
金属アレルギー(歯科金属など)
喫煙習慣
ストレスや疲労の蓄積
好発部位は手のひらと足のうらで、左右対称に出やすい傾向があります。とくに30〜60代の女性にやや多く、喫煙歴や歯科治療歴がある方、アトピー性皮膚炎や乾癬体質を持つ方に見られることがあります。
進行は、小さな膿疱の出現から始まり、破れてかさぶたとなり、皮むけやひび割れを繰り返します。慢性化すると皮膚が厚く硬くなり、爪変形や関節炎が生じることもあります。乾燥、摩擦、喫煙、ストレス、感染症などが悪化因子となりやすく、早期に受診して治療を始めることで生活の質を保ちやすくなります。

✅ 掌蹠膿疱症に使われる主な治療薬
◆ ①【外用療法】★軽症〜中等症の基本
ステロイド外用薬 リンデロンV、アンテベート、デルモベートなど 炎症・膿疱の抑制。強めを使用(顔用より強い)
活性型ビタミンD3製剤 ドボベット®軟膏(※ステロイド配合)、オキサロール軟膏 角化異常を抑える。単独または併用で使う
亜鉛華軟膏・保湿剤 ワセリン、ヒルドイドなど 補助的に皮膚バリア保護・乾燥防止に使う
◆ ②【内服薬】★中等症〜重症・関節炎合併時に使用
ビタミンD3製剤 エディロール®、ロカルトロール® 軽症例の維持や併用治療に使用されることがある
免疫抑制薬 シクロスポリン(ネオーラル®) 炎症・膿疱を強力に抑える。短期間使用が基本
漢方薬 十味敗毒湯、温清飲、桂枝茯苓丸 など 体質・炎症状態に応じて皮膚科で補助的に処方される
NSAIDs ロキソプロフェンなど 関節痛・骨関節炎のある場合に対症的に使用
◆ ③【生物学的製剤・JAK阻害薬】★難治性・重症例に(保険適用あり)
IL-17阻害薬 セクキヌマブ(コセンティクス®)
イキセキズマブ(トルツ®) 掌蹠膿疱症性関節炎に保険適用。皮膚症状にも効果大
JAK阻害薬 デュピルマブ(デュピクセント®)※現時点では適応外使用が中心 アトピー性皮膚炎で承認。一部で難治例に使用されることあり(慎重適応)
✅ 補助的治療
扁桃摘出術 扁桃炎の既往や再発がある場合に検討されることがある(再発予防)
歯科金属除去 金属アレルギーが強く疑われる場合(パッチテスト陽性)
禁煙 ニコチンが病態悪化に関係する可能性あり
◆ 病院で何を調べるの?
視診・問診:皮疹の特徴や分布、症状の経過を確認し、他の湿疹や乾癬との鑑別に役立ちます。生活習慣や喫煙歴、既往歴も重要な情報となります。
パッチテスト:金属アレルギーの有無を調べる検査です。皮膚に試薬を貼り、48〜72時間後に反応を判定します。検査中は入浴や強い運動を避ける必要があります。
血液検査:炎症マーカー(CRP)、免疫関連指標(IgE)、自己抗体などを調べ、体内の炎症やアレルギー傾向を把握します。全身的な異常がある場合の補助診断にも有用です。
歯科・耳鼻科的評価:歯周病や扁桃炎など病巣感染の有無を確認します。必要に応じて歯科X線や耳鼻科での咽頭評価が行われます。病巣感染の治療は皮疹改善につながる場合があります。
皮膚生検:典型例では不要ですが、乾癬や真菌感染との鑑別が難しい場合に行われます。局所麻酔下で皮膚を一部採取し、組織像を確認します。結果は数日〜1週間で出ることが多いです。
真菌鏡検(KOH検査):手足の皮膚症状が水虫(白癬)と似るため、皮膚片を採取して真菌の有無を調べます。即日結果が分かり、誤診を防ぐのに役立ちます。
◇ 間違えやすい他の病気(鑑別)
水虫
⇒水虫は白癬菌というカビが原因。掌蹠膿疱症は感染症ではありません/顕微鏡検査で区別できます
湿疹やかぶれ
⇒湿疹とは見た目が似ていますが、繰り返し・うみ・関節痛があるのが特徴です
予防のポイント
禁煙を徹底する
手足を低刺激の洗浄料でやさしく洗う
毎日保湿剤を塗って乾燥を防ぐ
歯科健診を受けて虫歯や歯周病を放置しない
扁桃炎などの喉の炎症は早めに治療する
手足に過度な摩擦や刺激を与えない
規則正しい睡眠とバランスのよい食事を意識する
ストレスをため込まない生活習慣を心がける
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
ヒフメドの編集チームは、皮膚疾患で悩む方に向けて専門的かつ最新の情報を分かりやすく届けることを目指しています。
アトピーや皮膚感染症といった疾患の基礎知識から、治療・生活管理の実用的なコツ、最新の治療事情まで幅広くカバー。読者が記事を読むことで「すぐに役立てられる」情報提供を心がけています。