
40代 女性のご相談
酒さってどんな病気?

医師の回答
酒さは何らかの原因による慢性的な炎症によって顔に赤みがみられるいわゆる赤ら顔で、主に中高年によくみられます。

〜顔が赤い、ヒリヒリする、ニキビみたいなブツブツ…それ、“酒さ”かも!?〜 酒さは何らかの原因による慢性的な炎症によって顔に赤みがみられるいわゆる赤ら顔で、主に中高年によくみられます。
鼻や頬、額、顎に赤み(血管拡張)やほてりが繰り返しあらわれ、次第に顔の赤みが続くようになります。
ニキビのようなブツブツができることがあります。鼻にブツブツがかたまりをつくり、
皮膚がミカンの皮のように凹凸になる鼻瘤(びりゅう)ができたり、 結膜炎などを伴うこともあります。
酒さ(しゅさ)とは、顔を中心に慢性的な赤みやほてり、ニキビのようなブツブツを引き起こす炎症性の皮膚疾患です。単なる血行不良や「赤ら顔」とは異なり、皮膚のバリア機能の低下や毛細血管の異常な反応、免疫の関与が考えられています。自然に治ることは少なく、皮膚科での継続的な治療が必要とされる病気です。
酒さにはいくつかの病型があり、代表的なものとして、顔全体の赤みやほてりが持続する紅斑型、赤い丘疹や膿疱が出る丘疹膿疱型、毛細血管が目立つ血管拡張型、鼻が肥厚して腫れる鼻瘤型があります。さらに、まぶたや眼に炎症を伴う眼型酒さも知られています。
【主な原因】
毛細血管が熱や紫外線などに過敏に反応すること
皮膚常在菌(ダニや細菌)に対する異常反応
肌のバリア機能の低下による刺激感受性の亢進
遺伝的な素因や体質の影響
ステロイド外用薬を長期使用した影響
好発部位は顔の中心、特に鼻、頬、額、あごで、目の周囲にも症状が及ぶことがあります。30〜50代の女性に多く、敏感肌の方や紫外線・温度変化に反応しやすい体質の方に発症しやすいとされます。
進行は、初期には赤ら顔程度の軽い紅斑から始まり、悪化するとヒリヒリ感や丘疹・膿疱が出現します。さらに慢性化すると毛細血管拡張や鼻瘤など目立つ変化につながります。紫外線、温度差、辛い食べ物、ストレス、アルコールなどは悪化因子となり得ます。早期に皮膚科を受診し、適切な外用・内服治療を開始することで、症状の慢性化を防ぎ生活の質を保つことが期待されます。

✅ 酒さに使用される治療薬(保険適用あり)
◆ ①【外用薬(塗り薬)】
イベルメクチン ステララ®クリーム (日本未承認) 丘疹・膿疱型に有効。酒さ治療の第一選択薬
アゼライン酸 スキノレンクリーム(日本未承認) 角質正常化・抗炎症作用。欧米でよく使用
ブリモニジン ロゼックスゲル(保険適応) 一時的に毛細血管を収縮させ、赤みを軽減する
🔸 イベルメクチンは週1回〜毎日塗布が可能。最初の2週間ほどで一時的に悪化することがあります。
◆ ②【内服薬】
抗菌薬(テトラサイクリン系) ドキシサイクリン、ミノサイクリン 抗炎症効果を活かして中等症以上の酒さに使用(長期使用注意)
抗アレルギー薬 レボセチリジン、フェキソフェナジンなど かゆみ・紅潮感の軽減に補助的に使われる
ビタミン剤 シナール、ビフロキシンなど 皮膚の代謝改善を期待して補助的に
◆ ③【補助療法・生活指導】
保湿剤(ヒルドイド、ワセリンなど):バリア機能維持
敏感肌用の日焼け止め:紫外線が症状悪化の引き金に
洗顔料・化粧品の見直し:アルコールや香料入りは避ける
✅ 重症例・難治例への選択肢(主に自費治療)
レーザー治療(Vビームなど) 拡張した毛細血管を破壊。紅斑型に有効(自由診療)
ロゼックスゲル(ブリモニジン)外用 一時的に赤みを抑える(保険適用外)
漢方薬(十味敗毒湯、黄連解毒湯など) 体質改善・炎症抑制の補助的役割
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・問診:顔の赤みやブツブツの部位・経過を確認し、酒さか他の皮膚疾患かを区別します。生活習慣やスキンケア歴、薬の使用歴も重要な判断材料となります。
- ダーモスコピー(皮膚鏡検査):毛細血管拡張や血管パターンを観察し、酒さ特有の血管変化を把握します。非侵襲的で痛みがなく、その場で評価できるのが利点です。
- 細菌培養検査:膿疱がある場合に採取して培養し、二次感染の有無や菌種を特定します。抗生物質の適正使用に役立ちます。
- 皮膚生検:診断が難しい例や他の炎症性皮膚疾患・皮膚がんとの鑑別が必要な場合に行われます。局所麻酔で皮膚を一部採取し、数日で病理診断が得られます。
- 血液検査:全身性の炎症や免疫状態を確認する目的で行います。特異的なマーカーはないものの、他疾患の合併や鑑別に役立つことがあります。
- アレルギー検査(必要時):皮膚バリア機能の低下や外用薬の影響を考慮し、パッチテストなどで接触性皮膚炎との区別を試みる場合があります。
◇ 間違えやすい他の病気(鑑別)
尋常性ざ瘡(ニキビ)
⇒白ニキビ・黒ニキビ・膿が中心 赤みは少ない/思春期に多い
酒さ様皮膚炎
⇒ステロイド外用の副作用 ステロイドの長期使用歴がある/急激な悪化が多い
接触皮膚炎(かぶれ)
⇒かゆみ・境界のある赤み 原因となる化粧品・マスクなどが明確なことが多い
膠原病・紅斑性狼瘡
⇒ 全身症状を伴うこともあり、血液検査が必要になることも
予防のポイント
低刺激性の日焼け止めを毎日使用する
紫外線や強い日差しを避け、帽子や日傘を活用する
熱い風呂やサウナ、辛い食べ物・アルコールを控える
洗顔はやさしく行い、低刺激の洗浄料を使う
保湿を習慣にし、皮膚のバリア機能を守る
メイクやスキンケアはノンコメドジェニック・低刺激を選ぶ
自己判断でステロイド外用薬を長期使用しない
ストレスや睡眠不足を避け、生活リズムを整える
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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