
10代 女性のご相談
トリコチロマニア(抜毛癖)ってどんな病気?

医師の回答
トリコチロマニアは、抑えきれない衝動により、自身の髪の毛やまつ毛を引き抜いてしまう病気です。

〜無意識に髪の毛を抜いてしまう…それは「こころと皮膚」のサインかも〜 トリコチロマニアは、抑えきれない衝動により、自身の髪の毛やまつ毛を引き抜いてしまう病気です。
抜毛によって起こりますが、原因はさまざまです。
自分で認識しながら抜毛している場合と、無意識のうちに抜毛している場合があり、症状の重度は変動し、
生涯繰り返すこともあります。抜毛による脱毛は、髪の毛で最も多く、まゆ毛・まつ毛などでもみられ、
円形脱毛のように完全脱毛とはならず短く切れた毛が残っています。学童期の発症が多く、女性に多くみられます。毛髪には異常はなく、
情動的な問題に起因するとされています
トリコチロマニア(抜毛癖)は、自分の髪の毛やまつげ・眉毛・体毛などを自分自身で抜いてしまう習慣的な行動が繰り返される脱毛症の一種で、皮膚疾患というよりも心因性・習慣性の側面を持つ反復行動とされています。抜毛は意識的に行うこともあれば、無意識のうちに髪を触ったり抜いたりしてしまうケースも多く、気づかないうちに症状が進行し、左右非対称で不規則な脱毛部位が目立ってくるのが特徴です。抜毛部には短く切れた毛が残ることが多く、円形脱毛症のような完全脱毛とは異なり、見た目で区別されることもあります。また、抜毛後に毛をねじったり、口に入れる・飲み込むなどの行動を伴うこともあり、テレビを見ながらや、退屈な時間、ストレスを感じたときなどに無意識に手が伸びていることも少なくありません。
この症状は、2歳〜小学生の女児に多く見られ、思春期以降や大人の女性でも繰り返されることがあるため、早期発見と適切な対応が重要です。発症の背景には、不安やストレス、緊張、環境の変化、発達特性(自閉スペクトラム症やADHD傾向)などが関連しており、皮膚の病気というよりは“こころのサイン”として現れる行動と考えられています。几帳面で感受性が強い、頑張りすぎてしまうタイプの子どもや大人に多く、習慣的なクセ行動が強化されることで悪循環に陥ることもあるため、周囲の理解が不可欠です。
皮膚科では、他の脱毛症(円形脱毛症や感染性脱毛、ホルモン異常など)との鑑別を行い、顕微鏡での毛根検査により“引きちぎられた毛根”の確認が可能です。また、頭皮にかゆみや赤み、かぶれなどがある場合には、炎症に対する外用薬の処方も行います。心理的要因が関与していると考えられる場合は、小児科・心療内科・精神科との連携が有効なこともあり、無理のないタイミングで支援を広げていくことが大切です。
治療の基本は、本人を責めたり無理にやめさせようとせず、安心できる環境を整えながら、行動療法的なアプローチや日常生活の見直しを組み合わせることです。「抜いてはダメ!」と叱るより、「不安なことある?」と寄り添う関わり方が有効で、抜毛が起こる状況や時間帯を記録することで行動のパターンを把握する手がかりにもなります。寝る前やテレビを見ている間などに手が動いてしまう場合には、リラックスできる遊びや代替行動を取り入れることで症状の緩和が期待できます。
「髪を抜くクセがやめられない」「子どもの髪が一部だけ短く不自然」「皮膚にも赤みやかぶれが出てきて心配」「人に相談できずに悩んでいる」といった不安を感じたら、まずは皮膚科で頭皮の状態を確認し、必要に応じてご本人の心理状態に寄り添ったサポートを一緒に考えていくことが大切です。
✅ 治療法
基本的には薬物療法よりも行動療法・心理療法が中心です。
皮膚科→精神科・心療内科に紹介されることが多いです。
◆ ①【行動療法(第一選択)】
ハビット・リバーサル・トレーニング(HRT) 抜毛しそうなときに代わりの行動を行わせる(例:握る、別の動作)
認知行動療法(CBT) 抜毛のトリガーとなる思考・感情パターンを理解し修正
家族教育 特に小児・思春期では家族の理解とサポートが重要
◆ ②【薬物療法(中等症〜重症例)】
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) フルボキサミン(デプロメール®)、パロキセチン(パキシル®)など
強迫症状が強い場合に使用されることあり
抗精神病薬(非定型) アリピプラゾール(エビリファイ®)など/補助的に使われる例もあり
NAC(N-アセチルシステイン)※未承認薬 海外で報告あり(酸化ストレス軽減作用)/日本では未承認・自己判断での使用不可
🔬 病院で何を調べるの?
脱毛部の形・場所・毛の切れ方
炎症やフケがあるか?
抜けた毛の状態(顕微鏡・毛根検査)
本人または家族が「抜いている自覚があるかどうか」
必要に応じて:心療内科・小児精神科への紹介
🔍 トリコチロマニアと間違えやすい類似疾患(脱毛症)
円形脱毛症⇒つるっとした円形の脱毛/自己免疫が関与 毛が根元から抜ける/炎症なし/毛根の検査でわかる
脂漏性皮膚炎による脱毛
⇒頭皮の赤み・フケ・かゆみ 頭皮に炎症/フケが多い/抗真菌治療で改善することも
白癬(しらくも)
⇒頭皮にカビ感染/かゆみ・フケ・脱毛 毛が折れてる・鱗屑あり/真菌検査で診断🔬
薬剤性脱毛(抗がん剤など)
⇒一気に脱毛/全体的に薄くなる 薬の使用歴が明確/左右対称に出ることも
先天性乏毛症・毛髪異常症
⇒幼少期から毛が細く、切れやすい 家族歴/生まれつき/全体に毛が弱い
故意の脱毛(剃毛・カット)
⇒ハサミやバリカンによる脱毛 直線的・左右対称/毛根は異常なし/本人申告が重要
接触性皮膚炎・アレルギー
⇒染毛剤・シャンプーなどが原因で炎症+脱毛 かゆみ・赤み/原因物質に心当たりがある
予防のポイント
ストレス・不安をため込まない環境づくり
抜毛のきっかけ・パターンを把握する
手を使う別の習慣に置き換える
抜毛のことを責めない対応を心がける
皮膚のかゆみや刺激は早めに治療する
リラックスできる時間・習慣をつくる
専門医のサポートを早めに取り入れる
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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