
30代 女性のご相談
多形紅斑ってどんな病気?

医師の回答
多形紅斑は、円形で中心の色が濃く、外側は色が薄い赤い斑点ができる病気で、目玉のようになります。
〜急に出てくる「赤い丸い発疹」…ウイルスや薬がきっかけかも!?〜 多形紅斑は、円形で中心の色が濃く、外側は色が薄い赤い斑点ができる病気で、目玉のようになります。
多形滲出性紅斑(たけいしんしゅつせいこうはん)ともいわれます。ヘルペスウイルスやマイコプラズマ、
薬剤などさまざまな原因で生じますが、原因が不明な場合も多いです。
腕、脚、手のひら、足の裏などに左右対称にあらわれます。春秋の季節の変わり目にみられるものは、
若年~中年の女性に多く、2~4週間で自然治癒することが多いですが、薬剤性による場合などで、重症化して、
水ぶくれができたり、粘膜にただれができたりする場合もあり注意が必要です。
多形紅斑(たけいこうはん)は、赤く丸い発疹が手足や顔などに突然あらわれる皮膚の病気で、「ターゲット状」または「標的状」と呼ばれる特徴的な見た目をしています。 発疹は左右対称に出現しやすく、手のひら・足の裏・腕・脚・顔まわりなどに目立つことが多いです。発疹の中心が濃く、外側に向かって薄くなるため、まるで目玉のような見た目になるのが特徴です。
多形紅斑の主な原因は、単純ヘルペスウイルス(HSV)やマイコプラズマなどの感染症、抗生物質や解熱鎮痛剤などの薬剤によるアレルギー反応です。ワクチン接種や風邪のあとに起こることもありますが、なかには明確な原因が見つからないケースも少なくありません。特に、ヘルペスウイルスに関連した多形紅斑は繰り返し発症することがあり、再発予防のために抗ウイルス薬を使用するケースもあります。
症状としては、赤い丸い発疹が突然現れ、かゆみやピリピリとした刺激感を伴うことがあります。軽症であれば発疹のみで自然に治まることが多く、通常は2~4週間ほどで治癒します。ただし、重症化すると水ぶくれができたり、口の中や目などの粘膜にも炎症やただれが起こる場合があり、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)などの重篤な皮膚疾患との区別が必要になるため注意が必要です。
治療は、原因に応じて行われます。ウイルスが関与している場合は抗ウイルス薬(アシクロビルなど)を使用し、マイコプラズマ感染がある場合は抗生物質を投与します。薬剤が原因と考えられる場合は、原因薬の中止が最優先で、その薬を今後使用しないようにすることも重要です。かゆみや炎症が強い場合には、抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬などで症状を和らげます。
多形紅斑を再発しないようにするには、誘因(ヘルペス、薬、風邪、ストレスなど)を避ける生活習慣や、必要に応じて抗ウイルス薬の予防内服を行うことが勧められます。また、「どんな時に、どこに、どのような発疹が出たか」を記録しておくと、再発時の診断や予防に役立ちます。
「急に手に赤い丸い発疹が出た」「かゆみがあるけどいつもの湿疹とは違う」「最近飲み始めた薬と関係あるかも?」といった場合は、自己判断せず、できるだけ早めに皮膚科を受診しましょう。特に、口や目にまで症状が及んでいる場合は、重症化のリスクがあるため注意が必要です。
✅ 治療に使われる薬
軽症の多形紅斑は、原因除去+対症療法(かゆみや炎症を抑える)が基本です。
◆ ①【軽症~中等症:外来治療】
抗ヒスタミン薬 アレグラ®、タリオン®、ザイザル®など かゆみや蕁麻疹様症状を抑える
外用ステロイド ロコイド®、キンダベート®など 紅斑や炎症部位に塗布(広範囲には適さない)
内服ステロイド プレドニゾロン®など 中等症で全身症状がある場合に短期使用することもあり
抗ウイルス薬(再発型に) バルトレックス®(バラシクロビル)など ヘルペスが原因と考えられる再発例で使用
◆ ②【重症例(入院管理が必要)】
ステロイド点滴 メチルプレドニゾロン(ソル・メドロール®など) 炎症を強力に抑制(SJS/TENで使用)
免疫抑制剤 シクロスポリンなど 重症例でステロイドと併用されることもあり
抗ウイルス薬 アシクロビル、バラシクロビル 原因がHSV(単純ヘルペス)と判明した場合
補液・輸液 水分・電解質バランスの補正が必要(粘膜病変・食事困難時など)
その他 眼科・耳鼻科・婦人科など多診療科連携が必要な場合も
「もしかして多形紅斑かも…」と思ったら?
自分で判断せずに皮ふ科へ相談を!
当院では、スマホで受けられるオンライン診療も対応しています
症状の確認からお薬の処方まで、自宅から気軽にご相談ください
🔬 病院で何を調べるの?
発疹の特徴(視診)と症状の経過(問診)を中心に診断
ウイルス・感染症・薬剤が原因かを見極める
重症型(SJSなど)との区別が必要な場合もある
必要に応じて血液検査やウイルス検査、皮膚生検を実施
🔍 多形紅斑と間違えやすい類似疾患
蕁麻疹(じんましん)⇒ミミズ腫れのような発疹/かゆみが強い 数時間で消える/形が変わりやすい/“的”状にはならない
接触皮膚炎(かぶれ)
⇒接触部位に赤く腫れた発疹/かゆい 原因物質に接触した部位に限定/左右非対称
薬疹(薬によるアレルギー反応)
⇒飲み薬後に全身に発疹/発熱を伴うことも 内服歴の有無/分布が広い/白血球異常など
寒冷蕁麻疹
⇒冷えたあとに発疹・かゆみ 冷風や冷水後に出る/短時間で消える
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)
⇒多形紅斑に似てるが重症/粘膜症状+高熱あり 目・口のただれ/皮むけ/全身状態が悪い/入院が必要
丹毒(たんどく)・蜂窩織炎(ほうかしきえん)
⇒細菌感染による発赤・腫れ・熱感 痛みが強く発熱あり/左右非対称/皮膚が熱をもつ
紅斑性狼瘡(SLE)
⇒日光で悪化/関節痛など全身症状 慢性経過/血液検査で抗核抗体陽性
真菌感染(体部白癬など)
⇒丸い赤い発疹が広がる/フチが目立つ 中央が治ってフチが残る“リング状”/真菌検査で区別可能
予防のポイント
① 原因ウイルス(特にヘルペス)の再発を防ぐ
② 原因となった薬を避ける(薬剤性の場合)
③ 風邪・感染症後の体調管理をしっかりと
④ 免疫バランスを整える生活を心がける
⑤ 発疹の写真・記録を残しておく
💡こんなときは早めの受診を
赤い丸い発疹が突然出た
ヘルペスのあとに発疹が出てきた
以前と同じような発疹を繰り返している
粘膜(口・目など)にもただれや炎症が出ている
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
ヒフメドの編集チームは、皮膚疾患で悩む方に向けて専門的かつ最新の情報を分かりやすく届けることを目指しています。
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