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40代 男性のご相談

乾癬ってどんな病気?

医師の回答

乾癬は、なりやすい体質に感染症や精神的ストレス、薬剤などのさまざまな要因が加わって発症すると考えられている皮膚の病気です。

〜赤く盛り上がる皮ふと白いフケ状のかさぶた、それ「乾癬」かも!?〜
乾癬は、なりやすい体質に感染症や精神的ストレス、薬剤などのさまざまな要因が加わって発症すると考えられている皮膚の病気です。
皮膚の炎症を伴い慢性の経過をとります。乾癬患者さん全体の約70~80%は尋常性乾癬です。

乾癬(かんせん)は、皮膚が赤く盛り上がり、表面に白く厚いフケのようなかさぶた(鱗屑)が付着する慢性的な皮膚疾患です。乾癬は、皮膚のターンオーバー(細胞の生まれ変わり)が異常に早くなり、角層が次々と蓄積してしまうことによって発疹が現れる病気です。他人にうつることはなく、感染症ではありませんが、慢性的に続く皮膚炎であり、見た目やかゆみ、痛みなどにより生活の質に大きな影響を与えることがあります。

乾癬は体のどの部位にも現れる可能性がありますが、特に頭皮や髪の生え際、ひじ、ひざ、すね、腰、耳のまわりなど、比較的外からの刺激を受けやすい部位に症状が出やすい傾向があります。左右対称に現れることが多く、爪や関節にも症状が出ることがあります。初期症状としては小さな赤い発疹(紅斑)から始まり、徐々に盛り上がり、乾燥した白い鱗屑が皮膚表面に付着します。ときにはフケのように見えるため、頭皮にできた場合には脂漏性皮膚炎と間違われることも少なくありません。

乾癬の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的な体質とともに、免疫系の異常な反応が大きく関与していると考えられています。つまり、もともと乾癬になりやすい体質の人が、ストレスや感染症、薬剤の影響、外傷や肥満といったさまざまな環境要因にさらされることで発症・悪化するケースが多いのです。具体的な悪化要因としては、精神的ストレス、風邪などの感染症、降圧薬や精神薬、外用ステロイドの急な中止、皮膚の擦り傷や虫刺されなどの刺激、そして肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症といった代謝性疾患が挙げられます。

乾癬は20代から50代にかけて発症することが多く、男女ともに見られます。家族に乾癬患者がいる場合や、アトピー性皮膚炎や自己免疫疾患の既往がある方もリスクが高いとされます。また、乾癬患者のおよそ7人に1人は「乾癬性関節炎(PsA)」を合併しており、関節の腫れや痛みを伴う症状が出ることがあります。これは関節リウマチと似た症状を示しますが、全く別の病気であり、鑑別診断が必要です。

乾癬の治療は、症状の程度や患者さんのライフスタイルに応じて選択されます。軽症の場合は、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬を中心に、保湿剤の併用や紫外線療法(ナローバンドUVB)でコントロールを目指します。中等症〜重症の患者には、内服薬(たとえばアプレミラスト)や、定期的に注射する生物学的製剤が用いられることもあります。生物学的製剤は、週1回〜月1回の自己注射でコントロールできるものもあり、通院の手間を減らす選択肢としても注目されています。

治療と並行して、日常生活の中でのセルフケアも非常に重要です。皮膚を清潔に保つことはもちろん、乾燥しすぎないようやさしく保湿を行いましょう。また、肥満は乾癬の悪化要因になるため、食生活を整えて体重管理を行うことが勧められます。喫煙や過度の飲酒も症状を悪化させる要因となるため、できる限り控えることが望ましいです。さらに、肌をこすらないような衣類の選び方や、ストレスマネジメントも再発予防のカギとなります。

もし「赤く盛り上がった発疹が治らない」「頭皮のフケがひどく、市販薬では改善しない」「見た目が気になって外出しづらい」といったお悩みがある場合は、それは乾癬の可能性があります。自己判断で放置するのではなく、早めに皮膚科専門医に相談することが大切です。

乾癬は完治の難しい病気ではありますが、正しい知識と適切な治療、日常生活での工夫によって、症状をうまくコントロールすることは十分に可能です。気になる症状がある場合は、早めに行動することが、将来的な悪化や合併症の予防につながります。

✅ 乾癬に使われる治療薬
① 【外用薬】(軽症〜中等症)
▶ ステロイド外用薬(炎症を抑える)

Very Strong デルモベート、ダイアコート 厚い皮膚病変、短期間使用
Strong リンデロンV、ベトネベート 中等度の病変に使用
Medium ロコイド 顔や皮膚の薄い部位に使用可能

▶ 活性型ビタミンD3外用薬(角化抑制)

カルシポトリオール ドボベット、マキサカルシトール
カルシトリオール オキサロール軟膏

※ ステロイドとビタミンD3を配合した外用薬(例:ドボベット)が主流

② 【内服薬】(中等症〜重症)

アプレミラスト オテズラ PDE4阻害薬。免疫調整、経口薬で使いやすい
シクロスポリン サンディミュン 免疫抑制作用。効果強いが副作用に注意
エトレチナート チガソン ビタミンA誘導体。膿疱性乾癬にも有効
メトトレキサート リウマトレックス 関節症性乾癬にも使用。定期的な血液検査が必要

③ 【注射薬/生物学的製剤】(重症例・関節症性乾癬に)

抗TNF-α抗体 ヒュミラ(アダリムマブ)、レミケード 乾癬性関節炎にも効果的
抗IL-12/23抗体 ステラーラ(ウステキヌマブ) 乾癬全般に適応。投与間隔が長め
抗IL-17抗体 コセンティクス(セクキヌマブ)、トルツ 発症初期にも有効。効果発現が速い
抗IL-23抗体 スキリージ、トレムフィア 効果が強く、投与回数も少ない(8~12週ごと)

🔸 生物学的製剤は注射または点滴による投与で、高額ですが高い効果が期待されます。
🔸 使用には皮膚科専門医の診断・登録が必要です。

④ 【光線療法(紫外線治療)】
ナローバンドUVB(NB-UVB)療法:全身型の紫外線照射

エキシマライト:局所照射型の紫外線装置

外用薬と併用することで効果を高める

 🔬 病院で何を調べるの?

乾癬は見た目の特徴が強い皮膚病なので、まずは皮膚科専門医による視診が最も大切です。必要に応じて皮膚生検や血液検査、関節の検査を追加し、他の病気と区別したり、合併症の有無を確認します。

 

🩺 間違えやすい皮膚病(鑑別疾患)

 貨幣状湿疹

⇒丸くて赤い湿疹+かゆみ ジュクジュクする/境界がやや不明瞭/乾癬より急性
 白癬(たむし)

⇒カビによる感染/円形に広がる赤い皮疹 真菌検査(顕微鏡)で確認可/かゆみが強いことも

 アトピー性皮膚炎

⇒幼少期から乾燥・かゆみ・湿疹 顔・首・関節の内側に出やすい/家族歴が多い

 接触皮膚炎(かぶれ)

⇒原因物質との接触で赤くただれる 原因に心当たりあり/一時的に出現する

 菌状息肉症(皮膚リンパ腫)

⇒赤い斑点が長期間消えず広がる かゆみは軽め/治療に反応しにくい/皮ふ生検が必要なことも

予防のポイント
乾癬は体質や免疫バランスに深く関わる病気ですが、
「肌を清潔に保つ」「乾燥させない」「太らない」「ストレスをためない」など、
生活の中でできる工夫が症状の安定につながります
一人ひとりの体質に合わせて、予防とケアを継続することがとても大切です。

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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