
20代 女性のご相談
汗疹ってどんな病気?

医師の回答
多量に汗をかいたとき、皮膚の表面にある汗の出口が詰まり、汗が皮膚の中にたまることで小さな発疹ができ、これが炎症を引き起こすことであせもが発生します。


汗疹(あせも)は、汗をかいたあとに皮膚に小さな赤いブツブツやかゆみ、水ぶくれが現れる皮膚トラブルで、正式には「汗腺(汗を出す管)が詰まって炎症が起こる状態」のことを指します。
多量に汗をかいたとき、皮膚の表面にある汗の出口が詰まり、汗が皮膚の中にたまることで小さな発疹ができ、これが炎症を引き起こすことであせもが発生します。あせもは赤ちゃんから大人まで幅広い年齢層に見られますが、特に汗をかきやすく皮膚が薄い赤ちゃんや小さな子どもに多く、顔、首まわり、背中、わき、胸、肘・膝の内側、おしりやおむつの中など、汗がたまりやすく蒸れやすい部位にできやすいのが特徴です。
女性では、下着のゴム部分や胸の下などに見られることもあります。原因の多くは暑さや湿度、長時間汗をかいたままにしていたこと、通気性の悪い服の着用、寝汗や風邪などによる発汗などが挙げられます。
あせもには種類があり、かゆみのない透明な水ぶくれができるタイプは皮膚を清潔に保っていれば2〜3日で自然に治ることがほとんどですが、かゆみのある赤い発疹や水ぶくれを伴うタイプは、掻きむしることで細菌感染を起こし、「とびひ」に進行してしまうリスクもあります。
あせもは夏の暑い季節や運動後、寝汗をかいた朝、汗や皮脂、ホコリが皮膚にたまったとき、または汗を吸わない素材やぴったりした衣類を着ていたときなどに悪化しやすいため注意が必要です。
軽度のあせもであれば、汗をこまめに洗い流したり、涼しい環境で過ごすことで自然に改善することが多いですが、かゆみや炎症が強い場合にはステロイド外用薬(塗り薬)の短期使用が有効です。
もし掻き壊してしまって化膿した場合には、抗菌薬の塗り薬や内服薬による治療が必要になることもあります。
予防としては、汗をかいたら早めに洗ったり拭き取る、通気性のよい綿素材の服を選ぶ、運動後は着替えをこまめにする、保湿ケアで皮膚のバリア機能を整える、エアコンや扇風機を活用して蒸れない環境をつくることが大切です。
もしあせもがなかなか治らない、赤みが広がってきた、かゆくて眠れない、ジュクジュクと湿疹化してきたといった場合には、自己判断せず皮膚科を受診することが重要です。
💊 汗疹(あせも)に使われる主なお薬
① 【かゆみ・赤みがある場合(紅色汗疹)】
☆ 軽症の場合:弱いステロイド外用薬(短期使用)
一般名 商品名の例 備考
ヒドロコルチゾン ロコイド軟膏 比較的安全、顔にも使いやすい
クロベタゾン キンダベート軟膏 軽症向け
プレドニゾロン吉草酸 リドメックス軟膏 乳幼児にも処方あり・ 通常は1日1〜2回、2〜3日で使用終了。長期連用は避けます。
② 【かゆみが強い場合】
☆ 抗ヒスタミン薬の外用 or 内服(必要時)
外用薬 例 備考
クロタミトン オイラックス軟膏 かゆみ止め作用あり(軽度)内服薬 一般名 商品名(例)
抗ヒスタミン薬 フェキソフェナジン アレグラ
抗ヒスタミン薬 レボセチリジン ザイザル③ 【湿疹化・ジュクジュクしている場合】
☆ ステロイド+抗菌薬の合剤
薬剤名 商品名 備考
ベタメタゾン+ゲンタマイシン リンデロンVG軟膏 感染合併の可能性があるとき
ヒドロコルチゾン+抗菌薬 テラ・コートリル軟膏 軽症例で短期使用④ 【保湿・皮膚保護(予防や回復期)】
白色ワセリン、プロペト:肌を保護ヘパリン類似物質:保湿と軽い抗炎症作用(ヒルドイドなど)
☆ 市販薬(軽いあせも用)
商品名 成分 特徴
ポリベビー軟膏 酸化亜鉛、グリチルリチン酸 赤ちゃんにもOK、保護&抗炎症
ムヒベビー クロタミトン、グリチルリチン酸 かゆみ・炎症を抑える
ベビーパウダー タルクなど 予防目的に(汗を吸収)※塗りすぎ注意
あせも?実は見た目がそっくりでも、治療法が全然ちがうこともあるんです!
類似疾患にきをつけて!
あせもの種類(実は3タイプある!)
タイプ 特徴 出やすい人
⇒紅色汗疹(赤いあせも) 最も一般的。赤くてかゆみがある 子ども・大人ともに
⇒白色汗疹(白いあせも) 小さな白いブツブツ。かゆみなし 赤ちゃんによく見られる
⇒水晶様汗疹(すいしょうようかんしん) 小さな水ぶくれ/透明で痛みもかゆみもなし 汗を大量にかいたあとに出ることがある
◆あせもと間違えやすい病気(鑑別疾患)
疾患名 特徴 あせもとの違いポイント
接触皮膚炎(かぶれ) 洗剤や服の素材が原因で赤くなる かぶれは左右対称/触った所に一致する
カンジダ性間擦疹 おしりや太ももの付け根に赤くジュクジュク+小さな赤い斑点 抗真菌薬が必要/あせもとは治療が異なる
アトピー性皮膚炎 肌が乾燥しやすく、季節を問わずかゆい 首・ひじ・膝裏など特定部位に出やすい
毛包炎 毛穴に細菌が入り赤いブツブツ/押すと痛い あせもよりしこり感や膿を持ちやすい
薬疹・ウイルス疹 お薬やウイルスによって出る発疹 全身に広がる/発熱や全身症状を伴うことも
◆治療とケアのポイント
皮膚を清潔&乾燥に保つ(シャワー・汗の拭き取り)
通気性の良い服・速乾素材の肌着
軽度:市販の抗炎症ローション・亜鉛華軟膏など
かゆみや赤みが強いとき:皮膚科でステロイド外用薬/抗ヒスタミン薬などを処方
◆ 皮膚科に相談すべきサイン
- ブツブツが膿を持ってきた/ジュクジュクしている
- 1週間以上治らない/悪化している
- 赤ちゃんや高齢者の皮膚がただれている
- 毎年あせもがひどく、日常生活に支障が出ている
→ 重症化・感染予防のためにも早めの診察が安心です!
◆ 予防のためにできること
- 汗をかいたらすぐふく or シャワーで流す
- ベビーパウダーや保湿剤は肌の状態に合わせて使う
- 入浴後は保湿ケアも忘れずに!
気になる方は、皮膚科での検査・診察を受けてみましょう!
監修薬剤師/公衆衛生学修士 畔原 篤Atsushi Azehara
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
執筆者
ヒフメドの編集チームは、皮膚疾患で悩む方に向けて専門的かつ最新の情報を分かりやすく届けることを目指しています。
アトピーや皮膚感染症といった疾患の基礎知識から、治療・生活管理の実用的なコツ、最新の治療事情まで幅広くカバー。読者が記事を読むことで「すぐに役立てられる」情報提供を心がけています。