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10代 男性のご相談

円形脱毛症ってどんな病気?

医師の回答

円形脱毛症は、ある日突然、髪の毛が円形や楕円形にごっそり抜け落ちる脱毛症です。かゆみや痛みがないまま、鏡を見て気づいたり、他人から指摘されて初めて発見されることが多く、大人だけでなく子どもや学生にも見られる疾患です。

脱毛は頭部に1か所のみ生じることもあれば、複数の脱毛斑が出る「多発型」、頭部全体の毛が抜け落ちる「全頭型」、まゆ毛・まつ毛・体毛まで抜ける「汎発型」など、重症度によって様々なタイプに分類されます。

原因は完全には解明されていませんが、近年では自己免疫反応が主な要因とされており、免疫が本来攻撃すべき外敵ではなく、自身の毛根を誤って攻撃することで脱毛が生じると考えられています。この免疫異常に加え、精神的・身体的ストレス、睡眠不足、ホルモンバランスの乱れ、薬剤、アレルギー体質、そして家族内に同様の病歴があること(遺伝的素因)なども発症の誘因になりうるとされています。

年齢・性別にかかわらず誰でも発症する可能性があり、特にストレスや疲労がたまりやすい人、花粉症やアトピーなどアレルギー体質を持つ人では、注意が必要です。軽度の円形脱毛症であれば自然に治ることもありますが、再発を繰り返したり、脱毛が広がっていく場合は、できるだけ早い段階で治療を始めることが大切です。

治療にはステロイドの塗り薬や局所注射、SADBEやDPCPなどを用いた局所免疫療法、紫外線を使った光線治療、内服薬(抗アレルギー薬やJAK阻害薬)などがあり、症状の範囲や重症度によって組み合わせて行います。JAK阻害薬(例:オルミエント、リットフーロ)は、近年日本でも承認され、特に重症型に対する新しい選択肢として注目されています。小範囲の脱毛にはステロイドの局所注射が有効ですが、皮膚の菲薄化など副作用の管理が必要なため、専門医のもとで行うことが望まれます。

【主なお薬・方法】
① 【外用薬(塗り薬)】
▶ ステロイド外用薬(炎症・免疫抑制)
・デルモベートスカルプローション
・アンテベートローション
・フルメタローション など
※小児では強さに注意して使用します。

▶ 局所免疫療法(難治性例に)
・SADBE(ジフェンシプロン)
・DPCP など
※かぶれを人工的に起こして免疫をリセットする方法。皮膚科専門施設で実施。

② 【内服薬】
▶ ステロイド内服(急速に進行する重症例などに短期)
プレドニゾロン ※副作用管理が必要

▶ 抗アレルギー薬(かゆみがある場合に補助的に)
アレグラ、アレロックなど

▶ JAK阻害薬(新しい治療選択肢/重症例向け)
・オルミエント(バリシチニブ)
・リットフーロ(リトレシチニブ) ← 2024年に日本でも承認
※特に広範囲型・難治性の円形脱毛症に有望とされます(保険適用)。

③ 【注射療法】
▶ ステロイド局所注射(皮内注射)
トリアムシノロン注射などを患部に直接注射:数ミリ〜数センチの脱毛斑に対して効果的
※皮膚が薄くなる副作用に注意しつつ、専門医で行います。

④ 【その他の治療】
・冷却療法(クライオセラピー)
・紫外線療法(ナローバンドUVB)
・カツラ・ウィッグ・頭皮ケア指導
・心因性への配慮(ストレス管理)

また、円形脱毛症と似た見た目の脱毛症には注意が必要です。

  • 頭皮のカビ(白癬菌)による「頭部白癬」では赤みやかさぶた、かゆみを伴い、KOH検査で診断されます。
  • 髪を強く結ぶことで起こる「牽引性脱毛症」
  • 無意識に髪を抜いてしまう「抜毛症」
  • 抗がん剤などの薬の副作用による「薬剤性脱毛」
  • 男性ホルモンの影響による「男性型脱毛症(AGA)」
  • 炎症性の「脂漏性皮膚炎」など
    見た目は似ていても原因も治療法も異なります。円形脱毛症の典型的な脱毛斑は、きれいな円形または楕円形をしており、皮膚に赤みやかさぶたがなく、比較的短期間で拡大するのが特徴です。

診断にはダーモスコピーを用いた毛根の状態の観察や、必要に応じて真菌検査、血液検査などが行われます。原因の見極めと適切な治療のためには、専門医による診察が不可欠です。

日常生活では、頭皮に強い刺激を与えないよう、ゴシゴシ洗いや過度なパーマ・カラーを避けること、ストレスや疲労をため込まないこと、栄養バランスの良い食事や十分な睡眠を心がけることが大切です。また、脱毛による外見上の不安を感じる方には、ウィッグや帽子などの活用も推奨されています。

「1か所だけ髪が抜けている」「まつ毛やまゆ毛まで薄くなってきた」「再発を繰り返している」「小学生の子どもに突然脱毛が見られた」など、気になる症状がある場合は、自己判断せずに早めに皮膚科を受診しましょう。円形脱毛症は感染症ではないため登校や出勤は可能ですが、症状が進行する前に治療を始めることで、回復のスピードが高まるケースも多くあります。

 

     

日本皮膚科学会|円形脱毛症ガイドライン 2024年版(PDF)
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/AAGL2024.pdf

2. 日本皮膚科学会 Q&A|脱毛症(円形脱毛症):一般の方へ向けた、やさしい表現のQ&A形式解説
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa11/q10.html
3. MSDマニュアル家庭版|円形脱毛症:病因、診断、経過、治療などが簡潔にまとめられています
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E6%AF%9B%E9%AB%AA%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E5%86%86%E5%BD%A2%E8%84%B1%E6%AF%9B%E7%97%87
https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2017/0915/p371.html

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/14-%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%AF%9B%E9%AB%AA%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%84%B1%E6%AF%9B%E7%97%87?utm_source=chatgpt.com

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK470434/

https://www1.racgp.org.au/ajgp/2018/october/common-causes-of-paediatric-alopecia?utm_source=chatgpt.com

https://dermnetnz.org/topics/trichoscopy-of-localised-noncicatricial-hair-loss