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50代 男性のご相談

唾液腺損傷(耳下腺管断裂)ってどんな病気?
症状チェックと対処法を皮膚科医が解説

⚠️まずは緊急度をチェック

◻︎ 顔面外傷後、頬の傷から透明な液体(唾液様)がにじみ続ける
◻︎ 食事のたびに頬が腫れる/膨らむ・痛む
◻︎ 頬にしこり様の膨らみ(唾液瘻)を触れる
◻︎ 受傷から48〜72時間以内の新鮮な断裂が疑われる
◻︎ 口の中の耳下腺管の出口から唾液が出ない・左右差があると言われた

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医師の回答

耳の前から口の中へと唾液を運ぶ細い管(耳下腺管)がケガなどで切れてしまう状態です。

ほっぺのキズなのに、腫れやよだれが止まらない?
実は「唾液の通り道」が切れているかも!?

唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺の3つがあり、唾液を分泌します。耳下腺は頬部にあり、耳下腺管は上顎第2大臼歯に相当する頬粘膜部に開口し、顎下腺と舌下腺は下顎部にあり、口腔底に開口します。唾液腺が損傷を受けると唾液瘻が生じることがあり、唾液腺の管が損傷を受けて詰まると、それぞれの唾液腺がはれて痛くなります。外傷で問題となるのは主に頬部にある耳下腺および耳下腺管の損傷です。 耳下腺の損傷においては顔面神経の損傷を合併することもあります。

K.Tさん

夕食の準備中に頬を切り、傷は浅いと言われ安心していました。ところが食事で頬がぱんと張り、透明な液がにじむのが続きました。冷やすと一時的に引くものの、翌日また同じ状態に。

受診すると耳下腺管が傷ついているとのこと。検査で漏れの部位が分かり、処置後は腫れが落ち着きました。「小さい傷でも変だと思ったら早めに相談」が学びでした。

30秒セルフチェック/診断チャート

01

症状の出方・強さ

顔の傷から透明な液体がにじみ続く

食事・会話で頬が腫れる/膨らむ

しこり様の膨らみ(唾液瘻)を感じる

02

経過・持続

外傷・切り傷・処置後に発生

時間経過で漏れが続く/食事で悪化

03

随伴症状・背景

交通事故・転倒・ペット/小児のひっかきなどの頬部外傷

美容処置・腫瘍切除などの手術後

小児の口腔内裂傷・乳歯外傷の後

結論

該当が多い:要受診
該当が少ない:迷う場合も早めに相談

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唾液腺損傷(だえきせんそんしょう)とは?

唾液腺損傷(だえきせんそんしょう)とは、唾液を作る組織である唾液腺や、唾液を口腔内へ運ぶ導管が切れたり傷ついた状態の総称です。特に耳の下にある耳下腺と、その導管である耳下腺管(ステノン管)の断裂は、顔面の外傷後によく発生します。症状としては、顔の傷から透明な液体がにじみ出る、食事や会話時に腫れや違和感が出るなどが特徴で、放置すると唾液瘻(だえきろう)と呼ばれる慢性的な漏出路を形成することもあります。

たとえば、頬部の裂傷や切り傷、交通事故での顔面外傷、ペットや小児によるひっかき傷、美容処置や皮膚腫瘍切除時の誤損傷などが代表例です。小児では乳歯外傷や転倒による口腔内裂傷でも起こることがあります。

【主な原因】

  • 顔面(特に頬部)の外傷や裂傷

  • 交通事故や転倒などによる頬部の強打

  • ペットや小児によるひっかき傷

  • 美容処置や皮膚腫瘍切除時の誤損傷

  • 小児の口腔内裂傷や乳歯外傷

好発部位は頬の中央付近で、耳下腺管が浅い層を走行しているため、見た目には小さな傷でも断裂に至ることがあります。なりやすいのは顔面外傷を負った方や、美容外科処置・口腔内外科処置を受けた方、小児の転倒や歯外傷による裂傷を経験したケースです。

経過としては、初期には唾液が皮膚からにじみ出たり顔が腫れたりし、食事中に悪化することがあります。進行するとしこりのような膨らみを伴い、慢性化すれば皮膚表面に唾液瘻を形成します。乾燥、唾液分泌の増加(酸味・刺激物の摂取)、摩擦や感染が悪化因子となります。早期に診断・修復を行うことで唾液の流れが保たれ、生活の質を大きく損なわずに済みます。

応急処置(今日できること)

応急対応は疾患により異なります。自己判断での処置は避け、症状が強い/拡大する/痛む場合は医師に相談してください。

一般的な唾液腺損傷治療に使われる薬

① 【基本情報と特徴】
▶ 耳下腺は、大唾液腺のひとつで、耳の前から頬にかけて位置する腺組織です。
▶ 唾液は耳下腺管(Stensen管)を通って、上顎第2大臼歯(奥歯)の頬側粘膜に開口します。
主な原因 顔面裂創(ナイフ・ガラスなど)・手術(腫瘍摘出)・咬傷・交通外傷など
好発部位 頬部中央(耳前〜口角にかけての範囲)に走行するStensen管(耳下腺管)の損傷が多い
典型的症状 ① 頬の腫れ・膨隆(唾液瘻) ② 食事中の唾液漏れや頬部膨張 ③ 創部から透明液体が持続的ににじむことも
合併しやすい損傷部位 顔面神経枝(特に頬筋枝)・顔面動静脈・皮膚創傷と同時損傷を伴うことが多い

② 【診断の手順・所見】
臨床所見の確認 創部から唾液様の透明・泡状の分泌液がにじむ/食事で腫れるなどが典型所見
開口部観察 頬粘膜のStensen管開口部(第2大臼歯部)からの唾液分泌の左右差、または分泌なしを確認
按圧試験(耳下腺圧迫) 耳前部を押して、創部や口腔内からの唾液漏出があるかを観察
尿試験紙・アミラーゼ検査 漏出液が唾液かどうかを確認(アミラーゼ高値なら唾液由来)
造影検査・超音波・CTなど 唾液腺造影・シンチ・CT・エコーなどで走行や漏出部位を確認することもある(専門施設)

③ 【治療の原則(断裂の深さ・時期による)】
新鮮断裂(48〜72時間以内) 耳下腺管の吻合術(再建手術)+ステントチューブ挿入が基本。専門施設での処置が望ましい
古い断裂/再建困難例 瘻孔閉鎖術/耳下腺摘出術/唾液抑制療法などが選択されることがある
軽度の創部損傷 自然閉鎖が可能な場合もあり、数日間の安静・抗菌薬・圧迫固定で保存的経過観察

④ 【外科的治療・処置内容】
耳下腺管吻合術 顕微鏡下で管どうしをつなぎ直す微細な縫合手術。皮膚切開と局所麻酔または全麻下で実施
ステントチューブの挿入 シリコンチューブを唾液管内に2〜4週間留置し、通過性を保つ
創部縫合・感染予防処置 皮膚裂創がある場合、表層・真皮の多層縫合+ドレーン設置 or 閉鎖が行われる
感染予防(抗菌薬投与) セフェム系/ニューキノロン系内服が一般的。創感染・腺炎予防が目的
唾液分泌抑制(必要時) 抗コリン薬(プロパンテリンなど)で一時的に唾液分泌を抑制することもある

病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:外傷の部位や皮膚からの唾液漏出を確認します。食事中の変化や透明液の性状を観察することで導管損傷を疑う手がかりになります。

  • 触診・圧迫テスト:耳下腺を圧迫して唾液の出口を確認します。導管が切れていれば皮膚や傷口から唾液がにじみ出るため、局在把握に有用です。

  • 通水テスト(色素・生理食塩水):口腔内の耳下腺管開口部から液体を注入し、外傷部からの漏出を確認します。簡便で局所診断に役立ちます。

  • 超音波検査(エコー):耳下腺や導管周囲の液体貯留、断裂部位を描出します。非侵襲的で繰り返し実施可能です。

  • CT・唾液腺造影:損傷の範囲や走行異常を詳細に把握します。造影剤を導管内に注入し、造影画像で漏出や断裂部を確認できます。手術計画立案に有効ですが、造影剤アレルギーに注意が必要です。

「唾液腺損傷」と似ている症状の病気(鑑別疾患)

唾液腺炎(耳下腺炎・顎下腺炎)

細菌やウイルスで唾液腺に炎症が起こる 発熱・全体的な腫れ・ごはんを食べると腫れる/痛む

顎下腺嚢胞(ラヌーラなど)

唾液の出口がふさがって溜まる 口の中(舌の下など)にぷっくりしたふくらみができる

ガマ腫(がましゅ)

顎下腺または舌下腺からの唾液が漏れて、皮下にたまる 口の中だけでなく、首のあたりまで腫れることもある

頬粘膜裂傷

傷だけで唾液腺は切れていない 表面的な切り傷で、唾液の持続的な漏れはなし

歯性膿瘍(歯の根の感染)

虫歯などからの感染で頬が腫れる 痛みが強く、歯ぐきの腫れ・膿・熱があることが多い

唾石症(だせきしょう)

唾液腺の中に石(唾石)ができる 食事中の痛み・繰り返す腫れ/画像検査で石が見えることあり

唾液腺損傷の特徴をチェック!

◻︎ 顔面外傷後、頬の傷から透明な液体(唾液様)がにじみ続ける
◻︎ 食事のたびに頬が腫れる/膨らむ・痛む
◻︎ 頬にしこり様の膨らみ(唾液瘻)を触れる
◻︎ 受傷から48〜72時間以内の新鮮な断裂が疑われる
◻︎ 口の中の耳下腺管の出口から唾液が出ない・左右差があると言われた

▶︎ これらに当てはまれば、「唾液腺損傷」や関連する疾患の可能性があります

⚠️緊急度をチェック!

◻︎ 外傷後、透明な液が傷から出続ける
◻︎ 食事のたびに頬が腫れる/膨らむ
◻︎ 受傷から48〜72時間以内の新鮮な断裂が疑われる
◻︎ 唾液瘻を思わせる膨らみがある
 

▶︎ 1つでも当てはまれば受診/オンライン相談を

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受診の目安(タイムライン)

当日〜翌日:外傷直後から透明液の持続漏出/食事で腫れる・痛む/唾液瘻が疑われる

早めに受診:しこり様の膨らみが続く、外傷や手術後に違和感が残る

様子見可:表在の小さな創で持続漏出がない場合。ただし症状が出現・増悪したら受診

予防のポイント

  • 顔面の異常を感じたらすぐに受診する
  • 十分な睡眠をとり免疫力を保つ
  • ストレスをため込まない生活習慣を心がける
  • 感染症(特に帯状疱疹)への注意と早期治療
  • 寒冷刺激や過度な疲労を避ける
  • 目の乾燥を防ぐために保湿や点眼を活用する
  • リハビリやストレッチを継続して表情筋を保つ

FAQ

Q1. 食事のたびに頬が腫れて傷から水のような液が出ます。耳下腺管断裂のサインですか?

「食事で腫れる」「透明な液の持続漏出」は典型的所見です。似た病気もあるため、早めの評価を受けてください。

Q2. 新鮮な断裂はいつまでに治療が必要ですか?

一般に48〜72時間以内の新鮮断裂では、管の吻合術とステント留置が基本とされます。早期受診が重要です。

Q3. どんな検査をしますか?

視診・触診、耳下腺圧迫での漏出確認、口腔内からの通水テスト、漏出液のアミラーゼ確認、超音波やCT、唾液腺造影などで部位・程度を評価します。

Q4. 自然に治ることはありますか?

軽度の創部損傷では自然閉鎖が可能な場合もありますが、断裂は外科的修復が検討されます。自己判断せず医師に相談を。

監修薬剤師/公衆衛生学修士

畔原 篤 Atsushi Azehara

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

執筆者

ヒフメドの編集チームは、皮膚疾患で悩む方に向けて専門的かつ最新の情報を分かりやすく届けることを目指しています。アトピーや皮膚感染症といった疾患の基礎知識から、治療・生活管理の実用的なコツ、最新の治療事情まで幅広くカバー。読者が記事を読むことで「すぐに役立てられる」情報提供を心がけています。