動物の毛アレルギーってどんな病気?症状チェックと対処法を皮膚科医が解説
⚠️まずは緊急度をチェック!
◻︎息苦しさ・笛のような呼吸音・夜間に悪化する咳が続く
◻︎目が強く腫れる/視界がにじむ
◻︎広範囲の皮疹や掻き壊しが悪化し、化膿が疑われる→ 1つでも当てはまれば受診/オンライン相談を。

30代 女性のご相談
動物の毛アレルギーってどんな病気?

医師の回答
動物の毛のアレルギーとは、犬や猫などの毛やフケ、唾液や尿にふくまれるたんぱく質を体が「悪いものだ」とまちがえて反応し、鼻水やくしゃみ、目のかゆみやぜんそくなどを起こす病気で、予防には掃除や換気、動物を清潔に保つことが大切です。

〜それ、ただの“毛の舞い”じゃないかも〜
動物の毛アレルギー(ペットアレルギー)は、犬・猫などの毛やフケ、唾液・尿に含まれるたんぱく質に体が過敏に反応して、鼻炎、結膜炎、ぜんそく、皮膚症状を起こす状態です。
ふつうのホコリによる刺激症状と違い、接触や吸入のたびに繰り返しやすく、曝露が続く限り持続します。
猫の主要アレルゲンはFel d 1、犬ではCan f 1が知られ、室内や衣類に長く残ることがあります。
早めに受診し、原因確認と環境対策・薬物療法を組み合わせることが大切です。

T.Tさん
子どもの頃から猫が好きで、引っ越しを機に室内で一緒に過ごす時間が増えました。すると、来客の猫の毛が残った日や、ブラッシングの後にくしゃみと鼻水が止まらず、夜は咳で眠りが浅くなることも。掃除をしても数日おきに症状が戻るのが悩みでした。
オンラインで相談し、検査で猫のアレルゲンに反応があると判明。寝室は同室をやめ、カーテンと布団の見直し、こまめな換気を実施。必要時に内服や点鼻を使う方針で、悪化場面(抱っこ直後など)を避けるコツも学びました。無理なく続けられる対策が見つかり、夜の咳も落ち着いています。

30秒セルフチェック/診断チャート
STEP 1|症状の出方・強さ
・ くしゃみ・鼻水、目のかゆみ・充血が動物と接触/同室で強い
・ 咳・喘鳴(ぜんめい)や息苦しさが出る/夜間に悪化する
・ 皮膚のかゆみ・湿疹が出て掻き壊しやすい
STEP 2|経過・持続
・ 曝露の数分〜数時間で出現し、通年性に反復
・ 掃除不足や同室飼育で長引きやすい
STEP 3|随伴症状・背景
・ 猫(Fel d 1)、犬(Can f 1)などへの感作が疑われる
・ 寝具・衣類・室内表面にアレルゲンが残り再飛散する
・ アレルギー体質/アトピー性皮膚炎・喘息がある
—— 判定 ——
該当が多い:要受診
該当が少ない:迷う場合も早めに相談
動物の毛アレルギーとは、犬や猫などの動物由来たんぱく質(毛・フケ・唾液・尿に付着)が鼻水・くしゃみ、目のかゆみ、せき・喘鳴、皮膚のかゆみや湿疹を引き起こすアレルギー疾患の総称です。症状は曝露の数分〜数時間で出やすく、通年性に反復します。猫ではFel d 1、犬ではCan f 1など特定成分が主因で、短毛・長毛の差は小さいとされます。
たとえば、鼻炎型、結膜炎型、気道過敏で咳・ぜんそくが目立つ型、皮膚炎型(掻破で苔癬化〔たいせんか〕に移行)などがあります。原因動物は猫、犬、ウサギ、ハムスター、モルモットなどで、毛そのものより毛やフケに付いたアレルゲンが問題になります。
【主な原因】
猫主要アレルゲンFel d 1、犬主要アレルゲンCan f 1によるIgE介在反応。
室内環境・衣類・寝具への付着と再飛散(猫撤去後も数か月残存)。
室内清掃不足や換気不良、寝室での同室飼育による曝露量増加。
高濃度曝露時の誘発(抱っこ・顔周りの接触、ブラッシング直後など)。
好発部位・なりやすい人としては、アレルギー体質やアトピー性皮膚炎のある人、子ども〜若年層、室内で長時間ペットと過ごす人が挙げられます。症状は鼻・眼・気道・皮膚に出やすく、寝室や布団・カーペット・カーテン・ソファなどで悪化しやすいです。
進行・経過は、初期にくしゃみ・鼻水・目のかゆみが出て、繰り返すと夜間咳や喘鳴、皮膚の掻破・滲出、慢性化で苔癬化に至ることがあります。悪化因子は高曝露、掃除不足、寝室同室、乾燥や冷気、ストレス、感染などです。受診の目安・危険サインは、
(1)呼吸が苦しい、笛のような呼吸音がする、夜間悪化が続く(気道症状)、
(2)目が強く腫れる・視界がにじむ(結膜炎重症化)、
(3)広範囲の皮疹や掻破で化膿が疑われる場合です。
早期受診により原因特定と環境・薬物の最適化でコントロールしやすくなります。
応急処置(今日できること)
応急対応は疾患により異なります。自己判断での処置は避け、症状が強い/拡大する/痛む場合は医師に相談してください。
✅ 主な治療薬(動物の毛アレルギー)
① 外用薬(皮ふ症状がある場合)
▶ ステロイド外用薬(炎症を抑える)
アトピー性皮膚炎や湿疹の悪化時に使用。強さや部位に応じて調整。
強さ 主な薬剤名 商品名(例)
Very Strong モメタゾンフランカルボン酸 フルメタ など
Strong ベタメタゾン吉草酸エステル リンデロン-VG など
Medium ヒドロコルチゾン酪酸エステル ロコイド など
Weak プレドニゾロン プレドニン軟膏 など
▶ タクロリムス軟膏(非ステロイド免疫抑制剤)
プロトピック軟膏
顔・首などの敏感部位に使用されやすい
▶ JAK阻害薬外用
コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)
小児にも使える新しいタイプの非ステロイド薬
▶ 保湿剤(第一選択)
ヘパリン類似物質(ヒルドイドなど)
ワセリン
尿素含有製剤(刺激があるため注意)
② 内服薬(鼻炎・かゆみ・ぜんそく症状に)
▶ 抗ヒスタミン薬(第一選択)
セチリジン(ジルテック)
フェキソフェナジン(アレグラ)
オロパタジン(アレロック)
ロラタジン(クラリチン)
ポララミン など
▶ 抗ロイコトリエン薬
モンテルカスト(シングレア)
鼻炎や喘息症状に有効
▶ 点鼻薬(鼻炎症状に)
ステロイド点鼻薬(ナゾネックス、アラミストなど)
抗ヒスタミン点鼻薬
▶ 吸入薬(喘息症状に)
吸入ステロイド薬(フルチカゾン、ブデソニドなど)
吸入配合薬(ICS+LABA:アドエア、シムビコートなど)
▶ ステロイド内服(重症例・短期使用)
プレドニゾロン
③ 特殊療法
▶ アレルゲン免疫療法
犬や猫の毛・フケを対象とした免疫療法は日本ではまだ限られており、実施できる施設が限られています。
※ハウスダストや花粉と違い、舌下錠は未承認。
④ 注射薬(重症例)
▶ デュピクセント(デュピルマブ)
IL-4/IL-13阻害抗体。アトピー性皮膚炎や喘息の合併に有効。
▶ ゾレア(オマリズマブ)
IgE抗体を抑える薬。重症喘息や重度のアレルギー性鼻炎に使われることがあります。
📌 まとめ
皮ふ症状 → 外用薬+保湿剤
鼻炎 → 抗ヒスタミン薬+点鼻薬
喘息 → 吸入薬
重症例 → 生物学的製剤(デュピクセント・ゾレア)
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・問診:症状の部位・時間帯・曝露状況(飼育歴、寝室同室、清掃頻度)を整理します。何に触れると悪化するか、他の通年性アレルゲン(ダニ・カビ等)との重なりも把握でき、治療計画に直結します。
皮膚プリックテスト(SPT):目的はIgE介在の即時型反応の有無確認です。15分前後で判定でき、感度・特異度が高いとされますが、抗ヒスタミン薬内服中は反応が弱くなるため中止期間が必要です。
特異的IgE(血液):犬・猫などの全抽出抗原に対するIgEを測定し、数日〜1週間で結果が得られます。薬の影響を受けにくく、SPTと併用で診断精度が上がります。
コンポーネント診断:猫(Fel d 1、Fel d 4 等)や犬(Can f 1、Can f 5/6 等)の分子単位で感作を評価し、重症度や免疫療法の適応検討に役立つことがあります。保険適用や実施可否は医療機関で確認が必要です。
呼吸機能検査(スパイロメトリー、可逆性試験等):咳・喘鳴がある場合に気流制限や気管支拡張薬反応性を評価します。ぜんそく併発の把握に有用で、当日判定可能です。
鼻・気道誘発試験(施設限定):原因アレルゲン曝露で症状再現性をみる検査です。リスクに配慮して専門施設で実施され、適応は限定されます。
鑑別のための追加検査:ダニ・カビ・ハウスダストの同時感作評価(血液・SPT)、結膜炎や皮膚症状での細菌培養(化膿時)などを行うことがあります。状況によりパッチテストで接触皮膚炎の関与を検討する場合もあります。
ハウスダストアレルギー
⇒ダニ・カビ・ホコリで鼻炎やぜんそく ペットがいない環境でも症状が出る
ダニアレルギー
⇒ダニの死がい・フンで鼻炎やぜんそく 季節や掃除状況で悪化/ペット不在でも出る
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)
⇒春や秋に症状が強い 季節限定で発症/ペットに関係なし
風邪(ウイルス性鼻炎)
⇒発熱・のどの痛み・1〜2週間で軽快 発熱や全身倦怠感が目立つ/長期化しない
アレルギー性結膜炎(別の原因)
⇒目のかゆみや充血が中心 ペットと無関係に症状が出ることあり
接触皮膚炎(かぶれ)
⇒犬猫の毛ではなく洗剤・香料で赤み・かゆみ 接触部位だけに出やすい/全身症状は少ない
⚠️緊急度をチェック! ◻︎息苦しさや笛のような呼吸音、夜間の増悪 ◻︎目の強い腫れ・視界のにじみ ◻︎広範囲の皮疹や化膿の疑い → 1つでも当てはまれば受診/オンライン相談を。
受診の目安(タイムライン)
- 当日〜翌日:呼吸が苦しい/夜間の咳や喘鳴が続く、目の腫れが強い、広範囲の皮疹・化膿が疑われる
早めに受診:症状を繰り返す・持続する、寝室で悪化する、日常生活に支障が出る、アトピー性皮膚炎や喘息の合併がある
様子見可:軽い鼻水や目のかゆみが一過性で、曝露回避で速やかに軽快する
予防のポイント こまめな掃除と換気、寝具・カーテン・カーペット・ソファの見直し 寝室での同室飼育は避ける、抱っこ直後・ブラッシング直後など高曝露場面に注意 動物を清潔に保ち、室内・衣類への付着と再飛散を減らす
FAQ
Q1. 短毛種ならアレルギーは起こりにくい?
A1. 主因は毛の長さではなく、毛やフケ・唾液に含まれるアレルゲンです。短毛・長毛の差は小さいとされます。
Q2. 猫を手放しても症状が残るのはなぜ?
A2. 室内や衣類・寝具に付着したアレルゲンが数か月残存し再飛散するため、清掃・換気の徹底が重要です。
Q3. どんな検査で分かりますか?
A3. 問診・視診に加え、皮膚プリックテスト、特異的IgE検査、必要に応じコンポーネント診断、呼吸機能検査などを組み合わせて評価します。
Q4. 免疫療法は受けられますか?
A4. 犬・猫アレルゲンの免疫療法は実施できる施設が限られ、日本では舌下錠は未承認です。適応や可否は医療機関で確認してください。
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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