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70代 男性のご相談

褥瘡【床ずれ】ってどんな病気?

医師の回答

褥瘡は「床ずれ」とも呼ばれ、ベッドのマットや布団、車いすなどと接触する部分の皮膚(特に下に骨がある部位)に長時間続けて体圧が集中することで血流が悪くなり、皮膚や皮下組織、筋肉などが死んでしまった状態です。

〜寝たきりや車いす生活の方にできる、皮膚とその下の組織の「傷」〜
褥瘡は「床ずれ」とも呼ばれ、ベッドのマットや布団、車いすなどと接触する部分の皮膚(特に下に骨がある部位)に
長時間続けて体圧が集中することで血流が悪くなり、皮膚や皮下組織、筋肉などが死んでしまった状態です。
最初は皮膚に消えない赤みや内出血、水ぶくれができる程度ですが、進行すると皮膚が壊死し黒色に変色し
皮下脂肪や骨にまで傷が広がることがあります。 寝返りを打てないためにベッドなどと持続的に接触するお尻や骨が出ている場所などによくみられます。

褥瘡(じょくそう)とは、長時間同じ姿勢で皮膚やその下の組織が圧迫されることによって血流が悪くなり、壊死(えし)や潰瘍を起こす皮膚障害の総称です。一般に「床ずれ」と呼ばれ、高齢者や寝たきりの方、車いすを使用している方に多く発生します。進行すると赤みから始まり、びらんや潰瘍、さらに感染を伴って重症化し、命に関わることもあるため、早期発見と予防が重要です。

たとえば、仙骨部、踵、肘、肩甲骨、後頭部など骨が突出している部位に起こりやすく、病期は「Stage I〜IV」に分類されます。赤みのみの初期から深部に及ぶ壊死性病変まで多様で、進行度に応じた適切なケアが必要です。

【主な原因】

  • 長時間の圧迫による血流障害

  • 摩擦やズレによる皮膚損傷

  • おむつ・汗・排泄物による湿潤環境

  • 栄養不足や体力低下

  • 寝たきりや運動量の低下

好発部位は仙骨、踵、肘、肩甲骨、くるぶし、後頭部など、体圧が集中しやすい部分です。特に高齢者、脳血管障害や神経疾患で動けない方、糖尿病や循環障害を抱える方、やせ型や皮膚の菲薄化がある方に多く見られます。

経過としては、まず発赤が続き、やがて水ぶくれやびらんが生じ、潰瘍化して皮膚が深くえぐれることがあります。さらに進行すると壊死や感染を伴い、発熱や全身状態の悪化につながります。乾燥、摩擦、汗や失禁、栄養不良、ストレスや基礎疾患の悪化が進行因子となり得ます。早期に受診して治療や予防策をとることで、生活の質を大きく保つことが可能です。

✅ 褥瘡の治療に使われる薬剤・外用薬
◆ ①【壊死組織の除去(デブリードマン)】
ブロメライン軟膏 プロスタンディン、プロテアーゼ軟膏 タンパク分解酵素で壊死組織を溶解
カデックス軟膏 クロルヘキシジン配合 感染リスクのある壊死組織に
※外科的デブリードマン 外科的に壊死を除去 中〜重度で必要なことも

◆ ②【肉芽形成の促進】
アルギン酸塩製剤 ソーブサン®、キュアパッド® 湿潤環境を保ち、創傷治癒を促進
ハイドロコロイド製剤 デュオアクティブ®、カラヤヘックス® 適度な湿潤環境で治癒促進。表皮剥離を避ける
ハチミツ製剤 メロリン®(Medihoney)など 抗菌・保湿・肉芽促進作用あり(医療用のみ)
フィブラストスプレー® trafermin(bFGF)製剤 肉芽形成促進。保険適用あり(条件あり)

◆ ③【感染のコントロール】
外用抗菌薬 イソジンシュガーパスタ®(ヨウ素+糖)
ゲーベンクリーム®(スルファジアジン銀)など 感染兆候(悪臭・滲出液・発赤)があるとき
内服抗菌薬 セファレキシン、クラリスロマイシン など 感染が深部や全身に及ぶ時(発熱・腫脹など)に使用

✅ 栄養・全身管理に使われる薬剤・補助食品
タンパク補助 エンシュア・ラコールなど(経口栄養)
亜鉛補給薬 ノベルジン®、ポラプレジンク
ビタミン剤 ビタミンC・E・B群など
高カロリー輸液 ソリタT3号・エルネオパなど(重症例)

✅ 外用薬の選び方の一例(目安)
発赤のみ(ステージI) ワセリン・保湿剤・除圧
水疱・びらん(ステージII) アルギン酸塩、ハイドロコロイド製剤、抗菌外用薬
潰瘍・壊死(ステージIII〜IV) デブリードマン+外用抗菌薬+湿潤療法
感染が明らか 抗菌薬内服 or 点滴+局所消毒

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:皮膚の色調、潰瘍の深さ、滲出液や感染の有無を確認します。発症の経過や生活状況を聞き取り、リスク評価に役立ちます。
  • 圧迫解除テスト:皮膚の赤みを押して戻るかを確認し、虚血性の発赤かどうかを判断します。Stage分類の参考になります。
  • 細菌培養検査:滲出液や壊死部から検体を採取し、感染菌を特定します。適切な抗菌薬選択のために行われ、結果判明まで数日を要します。
  • 血液検査:炎症反応(CRP)、栄養状態(アルブミン、総蛋白)、血糖値などを確認します。全身の健康状態を把握し、治癒力の評価や合併症管理に有用です。
  • 皮膚生検:病変が典型的でない場合や悪性腫瘍との鑑別が必要なときに行われます。局所麻酔下で皮膚組織を採取し、数日後に病理診断結果が得られます。
  • 画像検査(超音波・MRI):深部への進展や骨への感染(骨髄炎)が疑われる場合に行います。治療方針の決定に役立ちます。

🔍 褥瘡と似ている!間違いやすい皮膚疾患(類似疾患)

 皮膚カンジダ症

⇒湿って赤い発疹/かゆみあり/白っぽいふやけた皮膚も 通気性の悪い部位/おむつ内によく出る/かゆみ強め

 接触皮膚炎(かぶれ)

⇒おむつ・テープ・軟膏などの刺激で赤くただれる 原因物と接触した場所に一致して出る/圧迫とは無関係

 いわゆる“おむつかぶれ”

⇒高齢者や乳児の股部・おしりに赤みや湿疹 汗・尿・便・摩擦が主因/広範囲で浅い炎症が多い

 壊死性軟部組織感染症

⇒急激に悪化/発熱・強い痛み・腫れ/命にかかわることも 褥瘡に見えても痛みの強さ・急速な進行が異常!早期対応が重要

 深部静脈血栓症による皮膚潰瘍

⇒下肢の浮腫+血流障害で皮膚が壊死 褥瘡と違い血流障害が主因/圧とは無関係

 静脈うっ滞性皮膚炎・潰瘍

⇒足首周りに茶色い色素沈着+潰瘍 立ち仕事・下肢静脈瘤が背景に/慢性むくみがヒント

 皮膚脆弱性による皮膚裂傷(スキン・テア)

⇒高齢者の薄くなった皮膚がちょっとの刺激で裂ける ずれ(シアー)による裂け目+出血が見られる/圧とは異なる原因

 悪性腫瘍の皮膚転移・潰瘍

⇒非典型的な皮膚潰瘍が治らない 褥瘡と思っていたらがんの皮膚転移だったという例も/生検で診断確定

予防のポイント
2時間ごとの体位変換を心がける
体圧分散マットやクッションを使用する
皮膚を清潔に保ち、排泄物はすぐに処理する
保湿剤で皮膚の乾燥を防ぐ
バランスの取れた食事で栄養を確保する
十分な水分を摂取する
シーツや衣類のしわを伸ばし摩擦を減らす
異常を見つけたら早めに医師や塾層師に相談する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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