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40代 男性のご相談

毛孔性苔癬ってどんな病気?

医師の回答

毛孔性苔癬は、皮膚の毛穴に角質が詰まってできる、ザラザラとした小さなブツブツが特徴の皮膚疾患です。

〜二の腕や太ももの「ぶつぶつ」、実はよくある皮膚の状態です〜
毛孔性苔癬とは、皮膚の毛穴に角質(古い角質)がたまって盛り上がり、小さなぶつぶつやざらつきが目立つ皮膚の状態です。
特に二の腕の外側や太もも・おしり・背中にできやすく、思春期から若い世代に多く見られます。

毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)とは、毛穴に角質がたまって盛り上がり、小さなぶつぶつやざらつきを引き起こす皮膚の良性変化の総称です。特に二の腕の外側や太もも・おしり・背中に出やすく、思春期から若年成人に多い傾向があります。かゆみや痛みはほとんどなく、健康に大きな影響は与えませんが、見た目が気になり相談される方が少なくありません。遺伝的な要因が関係することが多く、不潔さが原因ではない点が特徴です。

たとえば、二の腕の外側に出る赤みを帯びた小さなぶつぶつ、太ももやおしりにみられる茶色みを帯びたざらつき、背中に広がる細かな丘疹などが代表的です。これらは毛穴の角質が厚くなる角化異常に関連して起こります。

主な原因
  • 毛穴に角質がたまりやすい体質(角化異常)

  • 乾燥肌やアトピー体質による皮膚バリアの弱さ

  • 遺伝的要素(家族に同様の症状があることが多い)

好発部位は二の腕・太もも・おしり・背中などで、特に10代から30代の女性に多くみられます。乾燥肌の方やアトピー素因を持つ方では出やすい傾向があります。

経過としては、初期は赤みを伴う細かな丘疹がみられ、悪化するとざらつきが強くなり、掻いたり紫外線を受けたりすると色素沈着として跡が残ることがあります。長期化すると皮膚が硬くみえる苔癬化〔たいせんか〕を伴う場合もあります。乾燥や摩擦、日焼けは悪化因子となりやすいため注意が必要です。早期に保湿や皮膚科での外用治療を始めることで、見た目の改善や色素沈着の予防につながります。

✅ 治療法

命に関わる疾患ではなく、美容的な理由で治療希望されることが多いです。
根治は難しいですが、スキンケア+角質ケア+保湿でかなり改善可能です。

◆ 外用治療(第一選択)
薬剤        作用        備考

尿素配合クリーム(ウレパール®, パスタロン®など)        角質軟化・保湿        最も基本的な外用剤/広範囲にも使いやすい
サリチル酸ワセリン        角質溶解        医療機関で処方/刺激が出ることもあるので注意
ヘパリン類似物質外用薬(ヒルドイド®など)        保湿・血行促進        乾燥対策として併用されることが多い
トレチノイン外用(ビタミンA誘導体)        角質ターンオーバー促進        自費処方(刺激感や赤みあり)/医師管理下で使用
アダパレンゲル(ディフェリン®)        毛穴詰まりの改善        ニキビ治療薬/オフラベルで使われることも

 🔬 病院で何を調べるの?

  • 視診・触診:皮膚の色調やぶつぶつの分布を観察します。典型的な部位に一致していれば診断の参考になります。痛みやかゆみの有無も確認されます。

  • 問診:発症時期や家族歴、乾燥肌やアトピー体質の有無を確認します。生活習慣やスキンケア方法も把握することで原因特定に役立ちます。

  • ダーモスコピー(皮膚鏡検査):毛穴の角栓や丘疹の詳細を拡大して観察します。ニキビや毛包炎との鑑別に有効です。

  • 皮膚生検(必要時):典型的でない場合や他の角化異常症が疑われるときに行います。局所麻酔下で皮膚の一部を採取し、病理組織学的に確認します。小さな瘢痕が残る可能性があります。

  • 血液検査(補助的):直接診断には用いませんが、合併するアトピー性皮膚炎やアレルギー体質の有無を確認するために行うことがあります。IgE値や炎症マーカーを調べることがあります。

🔬 間違えやすい他の病気(鑑別)
疾患名 特徴 見分けポイント

尋常性ざ瘡(ニキビ)
⇒白ニキビ・赤ニキビ・膿をもつことも 痛みやかゆみがある/顔・胸・背中にできやすい

脂漏性湿疹
⇒かさかさ+赤み/皮脂の多い部位に多い 頭皮・耳まわり・鼻・胸元にできる/かゆみあり

毛のう炎(毛包炎)
⇒毛穴の感染による赤いぷつぷつ ふれると痛い/膿がたまる/バリア低下後に発生

汗疱(あせも)
⇒皮膚の下に小さな水ぶくれ/かゆみあり 透明でつるっとした粒/手足・汗の多い部位に出やすい

毛孔性紅色粃糠疹(こうしょくひこうしん)
⇒毛穴周囲に赤み+皮むけ 全身に広がる/かさかさ・落屑が目立つ

魚鱗癬(ぎょりんせん)
⇒遺伝性の皮膚がかさかさして厚くなる病気 全身に乾燥・うろこ状/幼少期から明らか

予防のポイント
入浴時にナイロンタオルで強くこすらない
保湿剤を毎日塗り、乾燥を防ぐ
尿素やヘパリン類似物質入りの保湿剤を適切に使用する
紫外線対策を行い、色素沈着を防ぐ
スクラブやピーリングを過度に使わない
規則正しい生活習慣で皮膚の健康を保つ
かゆみがある場合は掻かず、外用薬で調整する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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