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50代 男性のご相談

下腿潰瘍ってどんな病気?

医師の回答

下腿潰瘍は、血液の流れが障害されることで皮膚がただれる病気です。血液の流れが障害される原因はさまざまですが、糖尿病や喫煙などにより動脈の流れが悪くなる場合と、肥満や妊娠、立ち仕事、体質などにより静脈の流れが悪くなる場合があります。

〜すねやふくらはぎに治らないキズ…それ、「下腿潰瘍」かも?〜
下腿潰瘍とは、ふくらはぎから足首にかけての皮膚にできた潰瘍(皮膚の深い傷)が、
血流の悪さなどを原因として長期間治らない状態
を指します。
特に高齢者や、血管・代謝系の疾患を持つ方に多くみられる慢性的な皮膚疾患です。

下腿潰瘍(かたいかいよう)は、ふくらはぎから足首にかけての皮膚が傷つき、長期間にわたって治らずにただれてしまう病気です。皮膚にできたかさぶたがすぐ崩れたり、ジュクジュクとした滲出液が出て湿った状態が続くことが多く、高齢者や血液の流れが悪くなっている方に多く見られます。主な原因は脚の血流障害で、特に静脈の逆流によって血液がうまく心臓に戻れなくなり、足に滞ってしまう「静脈うっ滞性潰瘍」が最もよく見られます。これは、下腿静脈瘤(かたいじょうみゃくりゅう)やうっ滞性皮膚炎といった慢性的な血管の不調が背景にあることが多く、立ち仕事や妊娠、肥満、長時間の座位なども誘因となります。

一方で、動脈硬化や糖尿病による血流障害が原因となる「動脈性潰瘍」や「糖尿病性壊疽」もあります。これらは足先やつま先にできやすく、強い痛みが特徴です。動脈が原因の場合は脚を下げると痛みが強くなりますが、静脈が原因の場合は逆に脚を上げると楽になることが多く、症状の出方に違いがあります。

下腿潰瘍の症状としては、すねの内側やくるぶし周辺に赤みやかゆみ、むくみ、茶色っぽい色素沈着が現れ、それが徐々に皮膚の損傷へと進行して潰瘍になります。特にふくらはぎの内側、足首周辺に集中して発生することが多く、軽い擦り傷や虫刺されがきっかけで悪化する場合もあります。いったん潰瘍になると、数週間から数か月以上にわたって治りにくくなり、感染のリスクも高まります。

治療には、皮膚の創傷ケアと血流障害の根本治療の両方が必要です。潰瘍部分には外用薬や滲出液を吸収するパッド、感染があれば抗菌薬を使用します。また、かさぶたの下に壊死組織がある場合は、医療機関でデブリードマン(壊死組織の除去)を行うこともあります。根本的な原因が静脈うっ滞である場合は、弾性ストッキングや圧迫療法が有効であり、静脈瘤の手術や血管治療を血管外科と連携して行うこともあります。糖尿病や動脈硬化が関与している場合は、血糖値の管理や生活習慣の見直しが重要になります。

再発を防ぐためには、日常生活での予防やセルフケアも欠かせません。弾性ストッキングの着用、長時間の立ちっぱなしや座りっぱなしを避けること、毎日の足の清潔と保湿、小さな傷を放置せず早めに処置することなどがポイントです。むくみや色素沈着などの初期サインが見られた場合は、皮膚科への早期相談が大切です。

「ずっと足がむくんでいる」「すねの傷がなかなか治らない」「赤く湿って、しみるような痛みがある」などの症状がある方は、下腿潰瘍の可能性があります。放置すると悪化しやすいため、早めの受診が必要です。

✅ 下腿潰瘍に使われるお薬(共通)
① 【外用薬(塗り薬)】
▶ 潰瘍面の状態に応じた薬剤選択が重要

ハイドロコロイド系 デュオアクティブ、ハイドロサイト 湿潤環境を保持し創傷治癒を促進
銀含有被覆材 アクアセルAg、アルギン酸銀など 感染・バイオフィルム対策
ブクラデシンナトリウム軟膏 アクトシン軟膏 肉芽形成を促進(保険適用)
トレチノイントコフェリル軟膏 オルセノン軟膏(角質溶解) 難治性潰瘍に使うことがある
スルファジアジン銀   ゲーベンクリーム 感染予防と抗菌作用、滲出液が多い潰瘍に有効
プロスタグランジンE1軟膏 プロスタンディン軟膏など 血流改善を期待して使用されることも(動脈性)

② 【内服薬・全身治療薬】
▶ 感染がある、または深部に及ぶ場合に使用

抗菌薬(内服) セファレキシン、クラリス、バクタなど 感染対策(膿、赤み、熱感があるとき)
抗菌薬(点滴) セファゾリン、アンピシリン・スルバクタムなど 重症感染・蜂窩織炎を伴うとき
抗血小板薬・抗凝固薬 アスピリン、シロスタゾールなど 動脈性潰瘍や血流障害合併例に

③ 【補助療法・その他】

圧迫療法 医療用弾性包帯・ストッキング(静脈うっ滞潰瘍に第一選択)
デブリードマン 壊死組織・膿などの除去(外科的・酵素的)
フットケア 糖尿病患者では定期的な角質・爪管理が重要
高圧酸素療法・陰圧閉鎖療法 難治例に選択されることもある

 🔬 病院で何を調べるの?

足白癬かどうかを調べるには「KOH検査(顕微鏡検査)」を行います🧪
皮膚の表面のカケラを取って、白癬菌(カビ)がいるかをチェックします。
数分で結果がわかりますので、気軽にご相談ください

 

 ◇下腿潰瘍と間違えやすい病気(鑑別疾患)

 うっ滞性皮膚炎(湿疹)

⇒皮ふが茶色く硬くなり、かゆみやただれを伴う 皮膚バリア低下+静脈うっ滞が背景/潰瘍化しやすい

 糖尿病性潰瘍

⇒足先〜足裏にできやすい/しびれ・感覚鈍麻あり 血糖コントロール不良+深い潰瘍に注意

 動脈性潰瘍

⇒指先〜くるぶしにできやすく、激しい痛みを伴う 足が冷たい・脈が触れないなどの血流低下あり

 壊疽性膿皮症(かいそせいのうひしょう)

⇒赤く腫れたあと壊死→潰瘍へ急速に進行/とても痛い 難治性で基礎疾患(膠原病・潰瘍性大腸炎)が関係することが多い

 感染性潰瘍

⇒細菌感染が主原因/膿・悪臭・発熱を伴うことも 抗菌薬で改善/ただし放置で悪化しやすい

 血管炎・膠原病

⇒免疫異常によって皮ふが壊死→潰瘍化 関節痛・発熱・全身症状を伴うこともあり

予防のポイント

 1. 弾性ストッキングを着用する

 2. 長時間同じ姿勢を避ける

 3. 足を清潔に保ち、毎日保湿する

 4. 小さな傷や虫刺されも放置しない

 5. むくみ・色素沈着・皮膚の変色を見逃さない

 6. 生活習慣病のコントロール

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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