
20代 女性のご相談
乳児血管腫/いちご状血管腫ってどんな病気?

医師の回答
皮膚の表面や内部にできる「赤あざ」の一種で、未熟な毛細血管が増殖してあらわれる良性の腫瘍(しゅよう)です。見た目が赤く、いちごのような外観から、「いちご状血管腫」とも呼ばれています。

〜赤ちゃんの肌に赤くふくらんだアザ…それは「いちご状血管腫」かもしれません〜
見た目が赤く、いちごのような外観から、「いちご状血管腫」とも呼ばれています。
一般的に生後1~4週に円形、楕円形の「赤あざ」があらわれます(赤あざには生まれたときから見られる単純性血管腫もあります)。
全身のどの部位でもみられますが、特に首から上に多発します。
表面がただれている、出血がみられる、目や鼻の近くに腫瘤がみられる場合などは、あとが残ったり、
視力や呼吸機能に影響を及ぼすことがあるためすぐに治療が必要になります。
乳児血管腫(にゅうじけっかんしゅ)は、生後まもなく赤ちゃんの皮膚に現れる赤あざの一種で、「いちご状血管腫」とも呼ばれる良性の腫瘍です。
これは未熟な毛細血管が皮膚内で異常に増殖することによって生じ、特に頭部・顔・首といった見える部位に多く発生します。
生後1週間〜1か月ごろに赤いふくらみとして目立ちはじめ、3~6か月頃に最も大きくなる増殖期を迎えた後、自然に小さくなる退縮期に移行します。
約90%以上の乳児血管腫は、特別な治療をしなくても7歳ごろまでに目立たなくなるとされています。見た目はいちごのように赤く盛り上がっており、皮膚の表面にできる浅在型のほか、皮膚の下に青っぽくふくらむ深在型もあります。
原因ははっきりとは解明されていませんが、胎児期の血管発達異常が関係していると考えられ、特に早産児や低出生体重児、女児にやや多くみられます。ほとんどの場合、自然に経過を見るだけで問題ありませんが、目や鼻・口の近くにできて視力や呼吸などの機能に影響する場合、急速に大きくなる場合、出血やただれを起こしている場合、あるいは見た目の変形や将来的な傷跡が懸念される場合には、早期の医療介入が必要です。
治療法としては、現在もっとも一般的で効果が高いとされるのが「経口β遮断薬(プロプラノロール)」による内服治療で、血管の増殖を抑えて腫瘍の縮小を促します。
また、赤みが残った場合にはレーザー治療を行ったり、まれに手術が必要になることもあります。いずれにしても、医師による正確な診断と経過観察のもとで方針を判断することが大切です。
家庭でのケアとしては、患部を清潔に保ち、衣類との摩擦や爪によるひっかき傷に注意することが必要です。また、紫外線から守るためのスキンケアや、出血時の正しい処置(清潔なガーゼでの圧迫)も重要です。
経過を観察する際は、定期的に写真を撮って変化を記録しておくと診察時にも役立ちます。「この赤いふくらみは自然に治るの?」「いちご状血管腫かどうか見分けがつかない」「治療が必要なのか不安」といったお悩みがある場合は、皮膚科や小児皮膚科での診察をおすすめします。
✅ 使用される主なお薬
① 【内服薬:プロプラノロール(第一選択)】
プロプラノロール ヘマンジオルシロップ(国内初の専用製剤) 乳児血管腫の第一選択治療薬(保険適用あり)
▶ 特徴・使い方
β遮断薬:血管収縮作用により血管腫を縮小させる
通常は生後5週以降から使用可能(体重など条件あり)
1日2回内服(朝・夕)、6ヶ月以上継続することが多い
効果判定は数週間で可視化されることが多い
▶ 使用にあたっての注意
低血糖、徐脈、気管支喘息のリスクがあるため、医師の指導・管理下での使用が必須
初回投与時は入院・モニター下で行う施設もあります
② 【外用薬:軽症・小さな病変に】
薬名 商品名 特徴
チモロールマレイン酸塩 (オフラベル使用) 眼科用β遮断薬(点眼薬)を皮膚に外用として使用する方法。小さい浅在性病変に。
🔸 チモロール点眼液を綿棒などで患部に塗布する方法。
🔸 保険適用外(オフラベル使用)ですが、多くの皮膚科で経験的に使用されています。
③ 【その他の治療法(薬以外)】
方法 説明
レーザー治療(Vビームレーザーなど) 表在性で赤みが強いタイプに有効。内服との併用もあり。
外科的切除 非常にまれ。腫瘍が大きく残存して機能障害がある場合などに選択。
❌ 効果が期待できない or 不適切な薬
薬 コメント
ステロイド外用薬 以前は使用されていたが、現在はβ遮断薬が第一選択。外用ステロイドは基本的に無効。
抗生物質 感染を伴わない限り不要
美白剤 効果なし
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🔬 病院で何を調べるの?
① 視診(見た目の確認)
医師が血管腫の大きさ・色・盛り上がりの程度・形・部位などを直接観察します。
多くの場合、視診のみで診断が可能です。
② 経過の確認(写真や問診)
発症時期や大きくなるスピード、家族が感じた変化について詳しく聞き取ります。
保護者が撮影した成長記録の写真があれば、それを参考に進行の早さを判断します。
③ 部位によっては機能への影響も評価
目や鼻・口の近くにある場合、視力・呼吸・授乳・発語の影響がないかをチェックします。
顔の中心部やまぶた、耳の近くなどにある場合は特に慎重に診ます。
④ 必要に応じて検査を実施
血管腫が深部まで広がっている疑いがある場合、または多発型や合併症が疑われる場合は、以下の検査を行うことがあります:
エコー検査(超音波):
皮膚の下の血管の広がりや深さを確認するのに使います。赤ちゃんへの負担が少なく、安全です。MRI検査(ごくまれ):
深在型で頭部にあり、神経や脳との関連が疑われる場合などに行うことがあります。血液検査(極めてまれ):
全身性の血管異常や内臓病変が疑われる場合のみ実施されます。
🩺 乳児血管腫と間違えやすい病気(鑑別疾患)
サーモンパッチ(新生児斑)⇒額・うなじに赤い薄いしみ/泣くと濃くなる 自然に消える/盛り上がらない/出生時からある
毛細血管奇形(単純性血管腫)
⇒薄い赤紫の平らなあざ/一生消えない 出生時からあり、盛り上がらず、退縮もしない
青色母斑・蒙古斑
⇒青みのあるあざ/背中・おしりに多い 赤くない/成長とともに自然に消えることが多い
カポジ型血管内皮腫
⇒重度のまれな血管腫/出血・血小板減少を伴う 出血や内臓合併症があることも/要早期治療
血管肉腫
⇒高齢者に多い悪性腫瘍 赤ちゃんには非常にまれ/急速に拡大+出血が目立つ
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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