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30代 女性のご相談

ヴィダール苔癬(慢性単純性苔癬)ってどんな病気?

医師の回答

首周りなどの狭い範囲の部位に対して、衣服による摩擦や金属アレルギーなど、繰り返しの刺激がきっかけでかゆみが生じる皮膚の病気です。

〜かゆくてかいているうちに、皮ふが厚くゴワゴワに…それ、「ヴィダール苔癬」かも〜

丸みを帯びた形で皮膚が赤くなり、やや盛り上がってみえます。
乾燥していたり、皮膚の色が濃くなる[色素沈着(しきそちんちゃく)]が起こったりする場合もあります。
成人期以降の女性に多くみられます。

ヴィダール苔癬(慢性単純性苔癬)は、首やすね、手足などに強いかゆみが続き、その部位を繰り返し掻きこわすことで皮膚が厚く、硬く、ゴワゴワ・ザラザラとした質感になる皮膚の慢性炎症性疾患です。

長期間同じ場所を掻いていると、皮膚が盛り上がって見えたり、色素沈着によって黒ずみが目立つようになります。

特に40代以降の女性に多く見られ、衣服の摩擦や金属アレルギー、アトピー体質、乾燥肌、ストレス、虫刺されなどが発症や悪化のきっかけになります。

かゆみが強く、無意識に掻いてしまいやすい「手が届く場所」に発症するのが特徴で、首のうしろ、うなじ、すね、足首、手首、腕、背中、腰、わき腹などに多く見られます。

ヴィダール苔癬は、「かゆい→掻く→さらにかゆくなる→皮膚が厚くなる」という悪循環に陥りやすく、放置していると皮膚のごわつきや色のくすみが慢性化するおそれがあります。

治療の基本は、まずかゆみを抑え、掻くのを止めることです。ステロイド外用薬で炎症を鎮めつつ、抗ヒスタミン薬などの内服でかゆみをコントロールし、保湿剤で皮膚を乾燥から守ります。

さらに、かゆみが強くなる要因として睡眠中の掻きこわしやストレスも大きく関与するため、生活リズムの見直しや精神的ストレスへの対応も治療の一環として重要です。予防・セルフケアのポイントとしては、乾燥を防ぐために日頃から保湿を心がけ、かゆい部分を冷やす、爪を短く切る、肌に優しい衣類を選ぶ、寝るときに手袋をつけて無意識の掻き壊しを防ぐといった対策が有効です。

また、「なんとなく同じ場所がいつもかゆい」「肌が硬く、黒ずんできた」「薬をやめるとすぐ再発する」といった症状がある場合は、慢性化のサインかもしれません。ヴィダール苔癬は自然には改善しにくいため、早めに皮膚科を受診し、適切な治療と生活指導を受けることが大切です。

✅ ヴィダール苔癬に使われる主なお薬
① 【外用薬(第一選択)】
▶ ステロイド外用薬(最も重要)

Very Strong クロベタゾール   デルモベート軟膏 厚くなった部位に短期間集中的に使用
Strong    ベタメタゾン吉草酸 リンデロンV軟膏 皮膚が薄い部位(顔など)以外で使用
Medium プレドニゾロン吉草酸 リドメックス軟膏 比較的刺激が少なく安全性高い

🔸 貼付剤(ステロイドテープ)も有効:オルテクサー、ドレニゾンテープなど
🔸 特に手で触れにくい部位や、外陰部・肛門周囲に使用されることがある

▶ 保湿剤(併用で皮膚バリア回復)

ヘパリン類似物質 ヒルドイドソフト軟膏、ヒルドイドクリームなど
ワセリン 白色ワセリン、プロペト

② 【内服薬(かゆみや精神的要因のコントロール)】
▶ 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬(かゆみ止め)

レボセチリジン ザイザル
フェキソフェナジン  アレグラ
オロパタジン アレロック

▶ 抗不安薬・睡眠導入薬(掻破を減らす目的)

エチゾラム デパス ストレスや不眠があるとき
ヒドロキシジン アタラックスP かゆみと不安に両方効果あり

③ 【その他】
治療法 コメント
ステロイド注射 局所の皮膚が著しく厚い場合、皮内注射で炎症を抑えることも
光線療法(ナローバンドUVB) 広範囲例や難治例に選択されることがある

「もしかしてヴィダール苔癬かも…」と思ったら?
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☆ ヴィダール苔癬とまちがえやすい病気リスト

 乾癬 (かんせん)

⇒厚く白いウロコ状の皮ふ かゆみは軽め/肘・膝・爪変化も

 扁平苔癬

⇒紫がかった平らなブツブツ 口の中にも白線が出ることあり

 慢性湿疹

⇒赤み+ジュクジュク 分布が広い/左右対称に出ることが多い

 白癬 (水虫)

⇒円形に広がる赤い輪 真菌検査(KOH)でカビが見つかる

 結節性痒疹

⇒硬いイボ状のかゆい結節 表面がドーム状/全身に多発しやすい

 菌状息肉症 (皮膚リンパ腫)

⇒性の赤~茶色プラーク 長年変わらず拡大/ステロイド無効

予防のポイント
皮膚を保湿して乾燥を防ぐ
就寝中の掻きこわし対策を
爪は短く整える
乾燥・冷え・急激な温度差を避ける

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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