
40代 女性のご相談
爪甲剥離症ってどんな病気?
症状チェックと対処法を皮膚科医が解説
⚠️まずは緊急度をチェック
◻︎ 爪が急に変形・割れる、下にしこりがある(爪母腫瘍の可能性)
◻︎ 出血や黒・茶・緑などの急な色の変化がある(感染や出血の可能性)
◻︎ 爪の白い浮きが広がり、痛みや不快感が強い
◻︎ 手汗・動悸・体重変化など全身症状を伴い、爪が先端から浮く(甲状腺疾患の関与の可能性)
◻︎ 足の水虫があり、爪も白濁・厚く・もろくなっている(爪白癬の可能性)
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医師の回答
爪甲剥離症は、皮膚と付着している爪が先端から剥がれ、浮き上がった状態をいいます。
「爪が白く浮いてきた…」
そんなときは“爪甲剥離症”かも!?
爪甲剥離症は、皮膚と付着している爪が先端から剥がれ、浮き上がった状態をいいます。
多くは、原因のわからない特発性のものですが、全身疾患によるもの、皮膚疾患によるもの、外部からの刺激によるもの、感染症によるもの、光線過敏症 によるものなど、さまざまなことが原因になることがわかっています。
爪が先端から剥がれて浮き上がり、剥がれていない部分よりも白く、あるいは黄ばんでみえるようになります。女性に多くみられることが特徴です。


M.Nさん
30秒セルフチェック/診断チャート
01
症状の出方・強さ
爪が先端(または側縁)から白く浮き、黄ばみがかる
浮いた部分に空洞ができ、爪がもろく割れやすい
押すと違和感や軽い痛みがある/感染で茶色〜緑に変色
02
経過・持続
最初は一部だが、日々少しずつ範囲が拡大している
引っかかりや欠けが増え、日常生活で支障が出てきた
03
随伴症状・背景
外傷歴、ネイル・除光液の使用、水・洗剤の反復使用がある
足の水虫、乾癬、甲状腺疾患の指摘や症状がある
窮屈な靴、立ち仕事などで爪先への圧迫が強い
結論
該当が多い:要受診 該当が少ない:迷う場合も早めに相談
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爪甲剥離症とは?
爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)とは、爪が皮膚の下にある爪床〔そうしょう〕から浮いてはがれ、白っぽく見えるようになる状態の総称です。主に手足の爪に起こり、先端や側縁から剥がれ始め、空洞ができたり爪がもろくなったりするのが特徴です。痛みは少ないことが多いですが、放置すると爪全体が脱落したり、細菌感染を合併して変色や不快感を生じる場合があります。原因には外的刺激や全身性疾患が関わることもあり、生活習慣や健康状態を反映するサインとなることがあります。
たとえば、手指の外傷による爪甲剥離症、ジェルネイルや除光液など化学的刺激によるもの、水や洗剤を日常的に使うことによる慢性刺激、真菌感染による爪白癬、乾癬や甲状腺疾患に伴う爪変化などがあります。
【主な原因】
外傷や圧迫:衝撃や靴の締め付けなど
ネイル関連:ジェルネイルのオフや除光液の刺激
慢性的な水・洗剤曝露:手荒れ職業や家事労働
真菌感染:爪白癬によるもの
全身性疾患:乾癬、甲状腺疾患、鉄欠乏など
薬剤の副作用:抗生物質や抗がん剤など
好発部位は手足の爪ですが、利き手や頻用する指、長時間の立位や運動で圧迫されやすい足趾に多い傾向があります。特に家事・美容関連の仕事や立ち仕事、窮屈な靴を履く人、また乾癬や甲状腺疾患をもつ人に生じやすく、高齢者では爪の乾燥や変形により発症しやすくなります。
進行は、初期に先端から白く浮く変化が現れ、次第に剥がれが拡大します。悪化すると爪が割れやすくなり、押すと違和感や痛みを伴うこともあります。さらに細菌感染を合併すると爪が茶色や緑色に変色し、爪の脱落に至る場合もあります。乾燥、摩擦、靴の圧迫、ストレスや全身の健康状態の影響が悪化因子となります。早めに皮膚科で診断・治療を受けることで、爪の再生や感染予防、生活の快適さを保つことが可能です。
応急処置(今日できること)
ネイル・除光液・ジェルオフを中止し、摩擦や圧迫を避ける
手足を清潔・乾燥に保ち、入浴後は爪根元・周囲を保湿(尿素軟膏、ワセリンなど)
家事は手袋を使用し、洗剤刺激を減らす
浮いた先端は伸ばしすぎず短く整える(引っかかり・二次感染予防)
爪下は優しく洗浄し、よく乾かす/靴の圧迫には保護パッドも活用
痛みや変色、拡大があれば早めに皮膚科へ
一般的な蚊アレルギー治療に使われる薬
◆ ①【原因除去・環境改善】
外的刺激を避ける マニキュア・除光液・ジェルネイルを中止。爪先への圧迫・摩擦も避ける
手足を乾燥・清潔に保つ 湿潤環境は感染・悪化の原因になる
保湿ケア 尿素軟膏、ワセリンなどを爪の根元・周囲に使用
手袋使用 洗剤などによる刺激を避けるため、家事時に活用
◆ ②【薬物療法(原因に応じて)】
爪白癬 内服抗真菌薬:イトリゾールカプセル、ラミシール錠
外用薬:クレナフィン液、ルコナック液など KOH検査や培養で真菌陽性確認が必要
乾癬・扁平苔癬 外用ステロイド or 活性型ビタミンD3 爪母(爪の根元)まで届きにくいため改善はゆっくり
接触皮膚炎 ステロイド外用薬、アレルゲン除去 パッチテストで原因特定することもあり
甲状腺疾患 ホルモン補充や抗甲状腺薬など 内科受診が必要なことも
◆ ③【補助療法・処置】
浮いた部分の短縮(切除) 引っかかり・二次感染予防。伸ばしすぎないよう管理
爪下の洗浄・乾燥 湿った状態が続くとカビや細菌が繁殖しやすいため重要
保護パッドの使用 靴や外力による刺激予防に役立つ
治療方針
🔸 基本は原因の除去+爪の保護が中心です。
🔸 原因によっては薬物治療が行われます。

病院で何を調べるの?
視診・問診:爪の白い浮きや剥離範囲、変色の有無を観察します。発症時期や生活習慣の聞き取りをあわせ、原因の推定に役立ちます。
真菌検査(KOH直接鏡検):爪白癬を疑う場合に行い、採取した爪片を顕微鏡で観察します。数十分で判定可能で、抗真菌薬治療の必要性を判断します。
真菌培養検査:顕微鏡で明らかでない場合に行い、菌の種類を確定します。培養に数週間かかりますが、再発や治療抵抗例の評価に有用です。
血液検査(甲状腺機能・鉄・栄養指標):全身性疾患が疑われる場合に実施し、甲状腺ホルモンや鉄欠乏の有無を調べます。爪症状の背景にある体調を把握する目的です。
ダーモスコピー(皮膚鏡):爪の色調や微細構造を拡大して観察します。爪白癬や乾癬との鑑別、血流や色素沈着の有無を確認できます。非侵襲的で繰り返し利用できる点が利点です。
皮膚生検(必要時):爪母や周囲皮膚の異常が疑われる場合に実施します。局所麻酔下で組織を採取し、数日後に病理診断が得られます。まれですが瘢痕が残る可能性があります。
「爪甲剥離症」と似ている症状の病気(鑑別疾患)
爪白癬(つめみずむし)
爪が白濁・厚く・もろくなって浮いてくる 顕微鏡検査で真菌(カビ)を確認/かゆみや足の水虫あり
乾癬性爪病変
爪の変形・くぼみ・剥離・厚み/乾癬の皮膚症状あり 頭皮・ひじなどにカサカサした発疹があることが多い
薬剤性変化(抗がん剤など)
爪がはがれる・黒くなる/複数の爪に同時に変化 治療歴・服薬歴の確認が大事/左右対称なことが多い
接触皮膚炎(かぶれ)
爪まわりの赤み・乾燥/その後爪が浮く 洗剤・ジェルネイル・除光液など使用歴あり
甲状腺疾患(バセドウ病など)
爪が先端から浮く/手汗・動悸・体重変化なども 全身症状をともなう/血液検査で診断
爪母腫瘍(良性・悪性)
爪が変形・割れる/下にしこり 急速に変化/出血や色の変化があれば要注意
外傷性剥離・爪下出血
爪下に血がたまる/黒くなる 内出血として紫〜黒/時間とともに上に移動する
爪甲剥離症の特徴をチェック!
◻︎ 爪が急に変形・割れる、下にしこりがある(爪母腫瘍の可能性)
◻︎ 出血や黒・茶・緑などの急な色の変化がある(感染や出血の可能性)
◻︎ 爪の白い浮きが広がり、痛みや不快感が強い
◻︎ 手汗・動悸・体重変化など全身症状を伴い、爪が先端から浮く(甲状腺疾患の関与の可能性)
◻︎ 足の水虫があり、爪も白濁・厚く・もろくなっている(爪白癬の可能性)
▶︎ これらに当てはまれば、「爪甲剥離症」や関連する疾患の可能性があります
⚠️緊急度をチェック!
◻︎ 出血や黒・茶・緑などの急な色の変化
◻︎ 痛みが強い、範囲が拡大している
▶︎ 1つでも当てはまれば受診/オンライン相談を
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受診の目安(タイムライン)
当日〜翌日:急速な変形や出血・明らかな色の変化、しこりを触れる
早めに受診:範囲拡大が続く、痛み・不快感がある、爪白癬・乾癬・甲状腺疾患の関与が疑われる
迷う場合:原因の見当がつかない、刺激を避けても改善しない場合は早めに相談を
予防のポイント
爪への強い衝撃や圧迫動作を避ける/窮屈な靴は避ける
ネイルや除光液の使用間隔をあけ、刺激を減らす
水仕事はゴム手袋を使用し、洗剤刺激を防ぐ
入浴後や就寝前に爪・周囲を保湿
爪は清潔を保ち、深爪を避ける
体調不良や甲状腺疾患は放置せず治療を受ける
異常が続く場合は早めに皮膚科を受診
FAQ
Q1. 爪甲剥離症は放置するとどうなりますか?
Q2. 何科を受診すればよいですか?
Q3. どんな検査をしますか?
Q4. 家でできるケアは?
監修薬剤師/公衆衛生学修士
畔原 篤 Atsushi Azehara
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
執筆者
ヒフメドの編集チームは、皮膚疾患で悩む方に向けて専門的かつ最新の情報を分かりやすく届けることを目指しています。アトピーや皮膚感染症といった疾患の基礎知識から、治療・生活管理の実用的なコツ、最新の治療事情まで幅広くカバー。読者が記事を読むことで「すぐに役立てられる」情報提供を心がけています。