汗アレルギー(コリン性蕁麻疹)ってどんな病気?症状チェックと対処法を皮膚科医が解説
⚠️まずは緊急度をチェック!
◻︎ 息苦しさ、めまい、喉の締め付け感など全身症状がある
◻︎ 運動後に全身に蕁麻疹が広がる、腹痛・嘔気を伴う(運動誘発アナフィラキシーの可能性)
◻︎ 発疹が広範囲・頻回で仕事や学業に支障がある
◻︎ かき壊しや色素沈着など二次トラブルが強い→ 1つでも当てはまれば受診/オンライン相談を。

50代 女性のご相談
汗アレルギー(コリン性蕁麻疹)ってどんな病気?

医師の回答
汗アレルギー(コリン性蕁麻疹)とは、自分の汗が出たときに体がその刺激を「悪いものだ」とまちがえて反応し、肌に小さな赤いぶつぶつやかゆみがあらわれる病気で、予防には汗をかいたら早めにふき取ったりシャワーで流したりして清潔に保つことが大切です。

〜それ、ただの汗疹(あせも)じゃないかも〜
コリン性蕁麻疹〔こりんせいじんましん〕(汗アレルギー)は、
運動・入浴・暑熱・緊張などで体温が上がり汗をかいた直後に、小さな赤い膨疹とかゆみが出る状態です。
通常は数十分〜1〜2時間で自然に消えますが、くり返すとかき壊しや生活の質の低下につながります。
まれに運動誘発アナフィラキシーを見分ける必要があるため、頻回や重症の場合は早めの受診を勧めます。
発汗刺激、アセチルコリン、自己汗への過敏反応などが関与すると考えられています。

W.Hさん
夏場の部活や熱いシャワーのあと、胸から首にかけて米粒ほどの赤いぶつぶつがびっしり出て、刺すようなかゆみに悩みました。しばらくすると消えるため放置していましたが、回数が増え夜も眠れない日がありました。
オンラインで相談し、運動や入浴が誘因になるコリン性蕁麻疹と説明を受けました。汗をかいたらすぐ洗い流す、通気性の良い服に変えるとともに、抗ヒスタミン薬でコントロール。焦らず対応する大切さを学び、今は発作がかなり減りました。

30秒セルフチェック/診断チャート
STEP 1|症状の出方・強さ
・運動・入浴・暑熱・緊張・辛味・飲酒後に数分で出る
・直径数mmの点状〜小さな膨疹が多数
・強いかゆみ・チクチク感がある
STEP 2|経過・持続
・多くは30〜60分(〜2時間)で自然に消える
・同じ誘因でくり返し出る(再現性がある)
STEP 3|随伴症状・背景
・息苦しさ、めまい、腹痛など全身症状の有無
・若年成人に多い、アトピー・アレルギー体質の有無
・暑熱、運動、ストレスなど悪化因子の関与
—— 判定 ——
該当が多い:要受診
該当が少ない:迷う場合も早めに相談
コリン性蕁麻疹とは、発汗や体温上昇をきっかけに、数分で始まる直径数mmの小さな膨疹(ぶつぶつ)と強いかゆみ・チクチク感を引き起こす蕁麻疹の一型です。運動、入浴、暑い環境、緊張やストレスなどの状況で再現性があり、多くは数十分〜1時間程度で自然に消えます。10〜30代に多く発症するとされます。
たとえば、運動や入浴直後に胸・首・上腕など汗をかきやすい部位に点状の膨疹が出るタイプ、ストレスや辛味・飲酒などでも誘発されるタイプがあります。病型として、汗アレルギー型、汗管閉塞型、減汗(無汗)合併型、アセチルコリン過敏型といった分類が提案されています。
【主な原因】
体温上昇に伴うアセチルコリンの関与で肥満細胞からヒスタミンが放出される。
自己の汗成分に対する即時型過敏反応(汗アレルギー仮説)。
汗管閉塞や減汗・無汗に伴う発汗異常。
情動ストレスや急激な温度変化。
好発部位・なりやすい人:胸部、頸部、上腕など汗の出やすい部位に出やすく、若年成人に多い傾向があります。アトピー性皮膚炎やアレルギー体質の人で、汗に対する過敏反応が確認されることがあります。
進行・経過と悪化因子、受診の目安・危険サイン、早期受診の利点:症状は誘因後数分で出現し、30〜60分前後で消退しますが、反復で掻破・色素沈着などの二次トラブルが生じることがあります。悪化因子は暑熱、運動、入浴、辛味・飲酒、ストレスなどです。息苦しさ、めまい、全身のじんましんや腹痛など全身症状を伴う場合は運動誘発アナフィラキシーなど鑑別が必要です。頻回・広範囲・日常生活に支障がある場合は早期受診で誘発試験や薬物調整の検討が可能です。
応急処置(今日できること)
- 汗をかいたら早めに洗い流す(シャワー・着替え)
- 吸汗性・通気性のよい衣服にする
- ストレス・緊張を避ける工夫をする
- 爪を短く整え、かき壊しを防ぐ
✅ 主な治療薬(汗アレルギー/コリン性蕁麻疹)
① 外用薬(皮ふ症状のサポートに)
▶ ステロイド外用薬
モメタゾン(フルメタ®)
ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド®)
👉 強いかゆみや炎症がある部分に短期間使用
▶ 保湿剤
ヘパリン類似物質(ヒルドイド®)
ワセリン
👉 バリア機能を整え、刺激を減らす
② 内服薬(基本治療)
▶ 抗ヒスタミン薬(第一選択)
セチリジン(ジルテック®)
フェキソフェナジン(アレグラ®)
オロパタジン(アレロック®)
ロラタジン(クラリチン®)
👉 かゆみや蕁麻疹の発作を予防・軽減
▶ 増量療法
👉 通常量で効果不十分な場合、医師の判断で倍量まで増量可能
▶ 抗コリン薬(重症例に)
プロパンテリン(プロバンサイン®)など
👉 発汗自体を抑える効果があり、症例によって使用
▶ ステロイド内服(短期・重症例)
プレドニゾロン
👉 発疹や全身症状が強い場合に限定使用
③ 注射薬(難治例)
▶ オマリズマブ(ゾレア®)
IgE抗体を標的とする生物学的製剤
👉 通常治療でコントロールできない重症蕁麻疹に使用可能
④ セルフケア・予防
汗をかいたら早めに洗い流す(シャワー・着替え)
吸汗性・通気性のよい衣服を着用
ストレスや緊張を避ける工夫をする
爪を短くしてかきこわしを防ぐ
📌 まとめ
第一選択 → 抗ヒスタミン薬内服でコントロール
効果不十分 → 増量療法や抗コリン薬を検討
重症 → ゾレア注射を含めた治療
外用薬は補助的、最重要は「汗をためない・早めに洗う」セルフケア!
◆ 病院で何を調べるの?
視診・問診(誘因聴取):発症状況(運動・入浴・暑熱・情動)、出現までの時間、持続時間を整理し、再現性の有無を確認します。多くは誘因後短時間で出て短時間で消える点が手掛かりです。
誘発試験(運動負荷・温浴負荷):安全管理下で運動や温浴により体幹温を上げ、症状を再現できるかを確認します。診断に有用で、その場で皮疹の出現を評価します(当日判定)。
受動加温試験(ホットバス等):運動が難しい場合に温浴のみで誘発するかをみて、運動誘発アナフィラキシーとの鑑別に役立てます(ホットバスで誘発されればコリン性、運動のみで誘発なら他を疑う)。
自己汗皮内テスト:採取した自分の汗を皮内注射し短時間で膨疹反応の有無をみます。コリン性蕁麻疹の一部(約3分の2)で陽性が報告され、汗アレルギー関与の推定に役立ちます。実施可否は医療機関により異なります。
アセチルコリン/メサコリン負荷試験:コリン作動性刺激への反応性をみる補助的検査で、病型の推定に用いられます(専門施設で選択)。
血液検査(総IgE・炎症所見など):他の蕁麻疹・アレルギー疾患の併存や二次感染の可能性を評価します。特異的な決め手には乏しいため、診断は臨床像と誘発試験が中心です。
皮膚生検:非典型例や鑑別が難しい場合に行うことがあります。瘢痕の可能性や部位選択に注意します。
温熱じんましん
⇒温かい物に触れると局所にじんましん 汗ではなく「温度刺激」が原因
寒冷じんましん
⇒冷たい物に触れると発症 寒さが原因で、汗は関与しない
接触皮膚炎(かぶれ)
⇒汗や衣類の摩擦で赤くかゆい 特定の部位に限局/水ぶくれあり
アトピー性皮膚炎
⇒慢性的なかゆみと湿疹 季節や汗に関係なく続く
汗疱(かんぽう)湿疹
⇒手足に小さな水ぶくれ 局所的で、汗アレルギーより持続的
運動誘発アナフィラキシー
⇒運動後に全身じんましん・息苦しさ 食事や薬+運動が誘因で重症化
⚠️緊急度をチェック! ◻︎ 息苦しさ・喉の違和感、めまいがある ◻︎ 運動後に全身じんましんと腹痛・嘔気を伴う ◻︎ 発疹が広範囲・頻回で日常生活に支障
→ 1つでも当てはまれば受診/オンライン相談を。
受診の目安(タイムライン)
- 当日〜翌日:息苦しさ、めまい、腹痛など全身症状を伴う/運動誘発アナフィラキシーが疑われる
早めに受診:発作が頻回、広範囲、生活に支障がある/自己対処で改善しない
様子見可:軽症で短時間に自然消退し、セルフケアで落ち着く場合(悪化・再発時は相談)
予防のポイント 汗をためない:汗をかいたら早めに洗い流す・着替える 通気性・吸汗性の高い服を選ぶ ストレス・緊張を和らげる工夫をする 爪を短くし、掻破を防ぐ
FAQ
Q1. 汗疹(あせも)との違いは?
A1. コリン性蕁麻疹は発汗直後に数分で出て短時間で消える点状の膨疹が特徴です。汗疹は小水疱や紅斑が持続しやすく、局所に限局します。迷うときは受診で確認しましょう。
Q2. 運動は続けてもいいですか?
A2. 全身症状がなければ、汗をすぐ洗い流す・衣服の工夫などセルフケアを徹底し、症状が強い日は無理を避けましょう。発作が頻回・重い場合は運動前後の対策と薬物調整について医師に相談してください。
Q3. 薬はいつまで飲みますか?
A3. 抗ヒスタミン薬が基本で、症状や季節・運動習慣に合わせて継続します。効果不十分なら増量療法や他の選択肢を医師が検討します。自己判断での中断・長期使用は避けてください。
Q4. 検査は必要ですか?
A4. 臨床像で判断することが多いですが、必要に応じて運動・温浴などの誘発試験、自己汗皮内テスト、専門施設での負荷試験が選ばれます。適応は医師が判断します。
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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