
20代 男性のご相談
猫ひっかき病ってどんな病気?

医師の回答
猫ひっかき病は、バルトネラ・ヘンセレという細菌に感染することで発症する病気です。
〜猫と遊んだあとに腫れやしこり…それ、細菌感染のサインかも!?〜 猫ひっかき病は、バルトネラ・ヘンセレという細菌に感染することで発症する病気です。
バルトネラ・ヘンセレは、猫だけでなく犬にも寄生するため、人が猫や犬にひっかかれたり、咬まれたりすることで感染します。
手や腕をひっかかれた場合はわきの下のリンパ節が、脚をひっかかれた場合は太ももの付け根のリンパ節が、それぞれ腫れます。
このほか、微熱や体重減少、食欲不振などが起こることもあります。
多くの場合は、数ヵ月程度で症状が改善されます。
猫ひっかき病とは、猫にひっかかれたりかまれたりした後に、皮膚やリンパ節に炎症を起こす細菌感染症です。原因となるのはバルトネラ・ヘンセレという細菌で、主に子猫の爪や唾液に存在します。感染後は数日から数週間で皮膚の赤みや腫れ、リンパ節のしこり、発熱や倦怠感などの全身症状が出現することがあります。一般に小児や若年者に多く見られますが、高齢者や免疫力の低下した方では重症化することもあります。
たとえば、ひっかかれた部位に腫れや膿が生じる型、近くのリンパ節が痛みを伴って腫れる型、肝臓や脾臓に炎症が及ぶ型などがあり、まれに眼の炎症や神経症状を合併することも知られています。
【主な原因】
感染している猫にひっかかれる
感染している猫にかまれる
傷口を猫に舐められる
特に子猫や野良猫、外に出る猫が保菌していることが多い
好発部位は、手や腕など猫に接触しやすい部位で、そこから近いリンパ節(わきの下、首、鼠径部など)が腫れる傾向があります。なりやすいのは小児や若年者で、免疫力が低い方では重症化しやすいとされます。
経過としては、まず受傷部位に発赤や腫脹が出て、数日から2週間後にリンパ節腫脹が目立ってきます。悪化すると化膿や全身症状が加わり、長引くと慢性炎症や膿瘍形成につながります。乾燥や掻破、免疫低下などが症状を悪化させる要因となり得ます。早期に受診し治療を行うことで、生活の質を保ちながら合併症を防ぐことが期待できます。

✅ 治療に使われるお薬(軽症例でも処方されることがある)
基本的に自然治癒することが多いが、症状が強い/長引く場合には抗菌薬を使用。
アジスロマイシン(ジスロマック®) 第1選択/短期投与で効果あり
ドキシサイクリン 成人・重症例/眼症状・神経症状への対応にも
シプロフロキサシン 重症例や他薬剤が使えないときの代替
NSAIDsなど 解熱・鎮痛のために併用されることもある
◆ 病院で何を調べるの?
視診・問診:猫にひっかかれた、かまれたといった受傷歴を確認し、皮膚やリンパ節の状態を観察します。発症の経緯を知ることで診断の大きな手がかりになります。
血液検査(バルトネラ抗体):感染を示す抗体の有無を調べます。結果が出るまでに日数を要する場合があり、急性期と回復期での抗体価の変化を確認することもあります。
画像検査(超音波・CT):リンパ節や肝臓・脾臓の腫れを確認します。合併症や重症例では重要な情報となり、治療方針決定に役立ちます。
細菌培養検査:膿や滲出液がある場合に実施し、二次感染の有無を確認します。抗菌薬の選択を適切にする目的があります。
皮膚生検:典型的でない皮疹や長引く病変に行うことがあります。局所麻酔で組織を採取し、病理学的に炎症や感染の特徴を確認します。瘢痕が残る可能性がある点に注意が必要です。
🔍 猫ひっかき病と間違えやすい!類似疾患(鑑別)
蜂窩織炎(ほうかしきえん)⇒細菌感染で赤く腫れて熱をもつ/急に悪化 広がりが速い/高熱あり/痛み強い/抗生剤が必要
皮膚結核・結核性リンパ節炎
⇒リンパ節がしこりに/膿がたまる 進行が遅く/慢性的に続く/血液・画像検査で確認
非結核性抗酸菌症
⇒水槽・動物との接触で感染/皮膚が潰瘍に 水仕事歴/膿やしこり/特殊な培養が必要
リンパ節炎(ウイルス性)
⇒風邪・ウイルス感染によるリンパ腫れ 猫との接触なし/咽頭炎や風邪症状あり
悪性リンパ腫
⇒無痛のリンパ節腫脹が続く/体重減少 発熱・だるさが続く/組織検査で診断
接触皮膚炎・外傷
⇒赤み・腫れ・かゆみ/掻いた後に腫れる リンパ節腫れはない/傷が原因と明確に分かる
狂犬病(ごくまれ)
⇒動物の咬傷後に神経症状 海外での犬や野生動物の咬傷歴/発症すれば重篤
予防のポイント
猫と遊ぶときは手でじゃれさせず、おもちゃを使う
猫の爪を定期的に切る
ひっかかれたらすぐに流水と石けんで洗い、消毒する
猫に顔や傷口をなめさせない
外猫や野良猫との接触は避ける
猫のノミ対策や健康チェックを定期的に行う
免疫力が低下している場合は猫との接触に特に注意する
掻き壊しや不衛生な環境を避け、皮膚を清潔に保つ
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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