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50代 男性のご相談

自家感作性皮膚炎ってどんな病気?

医師の回答

自家感作性皮膚炎は、からだの一部分の皮膚炎などが悪化した後に全身に複数の小さな発疹ができる病気です。

〜「別の場所までかゆくなってきた…」それ、“自家感作”かも!?〜
自家感作性皮膚炎は、からだの一部分の皮膚炎などが悪化した後に全身に複数の小さな発疹ができる病気です。
原因となる皮膚の病気として、脚の血流が滞って起きる皮膚の炎症(うっ滞性皮膚炎)、かぶれ、
コイン型の赤いブツブツ(貨幣状湿疹)、アトピー性皮膚炎、やけどなどがあります。
原因となる皮膚の病気が悪化して2週間~数週間で発症します。 からだや腕、脚を中心に、点状の赤い発疹や盛り上がりのある
水っぽい発疹などが左右対称にあらわれるのが特徴です。強いかゆみを伴い、時に発熱や食欲不振、倦怠感などもあらわれます。

自家感作性皮膚炎(じかかんさせいひふえん)とは、もともと一部にあった湿疹や皮膚炎をきっかけに、離れた別の場所にまで新しい湿疹が広がってしまう皮膚炎の総称です。最初の部位とは接触していないのに症状が現れるのが特徴で、これは「うつった」のではなく、炎症に反応して免疫システムが過敏になることによると考えられています。強いかゆみや赤みを伴うため日常生活に支障をきたすこともあります。

たとえば、手湿疹やかぶれ、虫刺され、水虫(白癬)などが最初のきっかけとなり、数日から数週間後に腕や脚、体幹、顔、首などに左右対称に赤いブツブツが広がることがあります。医学的には「自家感作反応(オートエクゼマティゼーション)」とも呼ばれ、アレルギーの一種ですが感染性はなく、人にうつることはありません。

【主な原因】

  • 手湿疹や接触皮膚炎をきっかけに炎症が拡大する

  • 虫刺されやかさぶたの刺激による免疫反応

  • 水虫(白癬)などの感染性皮膚炎が引き金となる

  • かきこわしたアトピー性皮膚炎から広がる

  • 強い炎症により免疫が全身的に過敏になる

好発部位は腕、脚、体幹、顔、首などで、初発部位と離れた場所に出現します。アレルギー体質やアトピー素因をもつ人、強いかゆみや炎症のある皮膚炎を治療中の人に多くみられ、途中で治療を中断してしまうと発症しやすい傾向があります。

経過としては、最初に限局した湿疹が現れ、その後数日〜数週間で別部位に突然発疹が広がります。本来の患部が改善していても新しい湿疹が出ることがあり、慢性化すると苔癬化〔たいせんか〕(皮膚が厚く硬くなる変化)に至ることもあります。乾燥や掻破、ストレス、睡眠不足なども悪化因子となりやすいため、早期に受診し原因の皮膚炎をコントロールすることが生活の質の維持につながります。

✅ 自家感作性皮膚炎に使われる治療薬
◆ ①【外用薬(塗り薬)】
ステロイド外用薬 ロコイド、ベトネベート、リンデロンV、デルモベートなど 炎症・かゆみを抑える主力。病変の強さに応じて使い分け
亜鉛華軟膏/非ステロイド外用薬 亜鉛華単軟膏など 滲出・びらんがある部位に使用されることもあり
保湿剤 ヒルドイド、プロペト、ワセリン 皮膚バリアの回復と再発予防に重要

◆ ②【内服薬】
抗ヒスタミン薬/抗アレルギー薬 アレグラ、ザイザル、ポララミンなど かゆみ・掻破防止
ステロイド内服薬(中等度以上) プレドニゾロン 広範囲・重度の場合に短期間使用されることも
抗菌薬(原発巣に感染がある場合) セフェム系、ペニシリン系など 蜂窩織炎、膿瘍、細菌性湿疹などの合併時

◆ ③【原発病変への対応(最も重要)】
原因となっている皮膚病(湿疹、感染、かぶれ、潰瘍など)をしっかり治療しないと再燃を繰り返す
原発病変の除去・適切な治療が、全身の自家感作性病変の改善につながる

 ◆ 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:皮膚の状態や分布、かゆみの経過を観察し、最初の皮膚炎と新たな発疹の関連を確認します。どのようなきっかけで発症したかを詳細に聞き取ることが診断に役立ちます。

  • パッチテスト:接触皮膚炎が関与していないかを調べる検査です。背部にアレルゲンを貼付し、48〜72時間後に判定します。外用薬の使用を一時中止する必要がある点に注意します。

  • 真菌鏡検(KOH法):水虫(白癬)が原因となっていないかを確認します。皮膚の鱗屑を採取し顕微鏡で菌を確認する簡便な検査です。感染性皮膚炎を除外するうえで重要です。

  • 血液検査:総IgEや特異的IgE抗体、炎症マーカーを測定し、アレルギー体質や全身的な炎症の程度を把握します。重症例や再発例では治療方針を決める参考になります。

  • 皮膚生検:診断が難しい場合や他の皮膚疾患との鑑別が必要な場合に行われます。局所麻酔下で小さな皮膚片を採取し、組織学的に炎症の特徴を確認します。結果まで数日を要し、瘢痕が残る可能性があります。

  • 細菌培養検査:強い滲出液や膿がある場合に実施し、二次感染の有無を調べます。感染があると皮膚炎がさらに悪化するため、抗菌薬の選択に有用です。

 ◇間違えやすい!自家感作性皮膚炎と似た病気(類似疾患)

 水虫(白癬)+汗疱型白癬

⇒足のかゆみ・皮むけ・水疱がきっかけで手や体にも赤い湿疹 最初の原因が白癬菌感染/検査(顕微鏡)が必要!

 接触皮膚炎(かぶれ)

⇒アレルゲンや刺激物に触れてできる赤み・かゆみ 原因物質がある場所にだけ湿疹が出る/時間がたってから全身に出ることも

 多形紅斑(たけいこうはん)

⇒ぶつぶつが丸く広がる輪のような形/薬・ウイルスがきっかけ 明らかにリング状の発疹が特徴的/かゆみが強くないことも

 薬疹(薬による発疹)

⇒内服薬の副作用で全身に発疹/発熱やかゆみを伴うことも 薬を使った直後に発疹出現/血液検査で確定する場合あり

 アトピー性皮膚炎

⇒全身の乾燥・かゆみ/乳児期から経過あることが多い 左右対称・長期経過・家族歴などで判断

 蕁麻疹(じんましん)

⇒赤くてふくらむ発疹/数時間で消える/かゆみが非常に強い 突然出て、すぐ消えるのが特徴/毎日場所が変わる

 カンジダ・疥癬などの感染症

⇒かゆみ・発疹が広がるが、微生物感染が原因 病原体が確認できる/他人にうつる可能性あり

予防のポイント
かゆみがあっても掻かず、手袋やカバーで予防する
毎日保湿を行い皮膚バリアを整える
治療薬は医師の指示どおりに継続する
刺激の少ない石けんやシャンプーを選ぶ
十分な睡眠をとり、ストレスをためない
水虫など感染症があれば早めに治療する
季節や環境による乾燥を避け、加湿器を活用する
皮膚炎が広がった場合は早めに皮膚科を受診する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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