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20代 女性のご相談

手湿疹ってどんな病気?

医師の回答

手湿疹は、乾燥、ひび割れ、赤み、かゆみ、水ぶくれ、じゅくじゅくなど、多岐にわたります。

〜手のひら・指先のかゆみ、カサカサ、ひび割れ…つらい手荒れの正体です〜
手湿疹とは、手に起きる慢性的な湿疹のことです。
カサカサ、赤み、かゆみ、水ぶくれ、ひび割れなど、さまざまな症状が出て、悪化すると痛みや出血、日常生活への支障が出ることも。

手湿疹(てしっしん)とは、手のひらや指に赤み、かゆみ、乾燥、ひび割れ、水ぶくれなどを引き起こす慢性的な湿疹の総称です。家事や仕事で日常的に手を使うため刺激を受けやすく、軽い手荒れとして始まっても悪化すると痛みや出血を伴い、日常生活に支障が出ることがあります。特に水や洗剤に触れる機会が多い人、アトピー体質や乾燥肌の人に発症しやすいのが特徴です。

たとえば、手のひらや指先にみられる乾燥型、指の間や甲にみられるかぶれ型、水ぶくれを伴う湿潤型などがあります。仕事や生活習慣によって「主婦湿疹」「職業性湿疹」と呼ばれることもあります。

主な原因
  • 頻繁な手洗いや水仕事による皮膚バリアの低下

  • 洗剤やシャンプーなど化学物質による刺激や接触アレルギー

  • アルコール消毒の多用による乾燥

  • ゴム手袋やプラスチック製品との接触によるかぶれ

  • 季節の変わり目や乾燥した空気による悪化

好発部位は手のひら、手の甲、指先、指の間で、特に水や洗剤に触れる機会の多い主婦、調理業、医療・介護職などに多くみられます。アトピー体質や乾燥肌の人もかかりやすい傾向があります。

経過は、初期に軽い乾燥や赤みが出現し、悪化するとかゆみやひび割れ、水ぶくれ、じゅくじゅくした滲出を伴うことがあります。慢性化すると皮膚が厚く硬くなる苔癬化〔たいせんか〕を起こすこともあります。乾燥や摩擦、汗、アルコール消毒、ストレスなどが悪化因子となります。早めに皮膚科を受診し、治療や生活改善を行うことで症状の長期化や再発を防ぎやすくなります。

✅ 治療に使われるお薬

◆ ① 外用薬(塗り薬)
分類        薬剤名        用途・特徴

ステロイド外用薬                
・ロコイド®(弱め)                
・キンダベート®(中程度)                
・リンデロンV®(やや強め)                
・デルモベート®(最強クラス)                

炎症・かゆみを抑える。症状に応じて強さを使い分ける。
角化が強ければ強めを使用。                

保湿剤                
・ヘパリン類似物質(ヒルドイド®)                
・尿素クリーム(パスタロン®)                
・ワセリン                

ステロイドと併用が基本。保湿でバリア機能を補うことが治療の柱。                
角質溶解外用薬        サリチル酸ワセリンなど        厚くなった角質を柔らかくして薬効を高める(医師処方)
抗真菌薬        ルリコン®、ラミシール®など        水虫との鑑別が必要な場合に使用

◆ ② 内服薬(補助的)

分類        例        用途
抗アレルギー薬        アレグラ®、アレジオン®など        かゆみを抑える
抗ヒスタミン薬        ジルテック®、タリオン®など        掻破行動(ひっかき)を防ぐ
ビタミン剤        ビタミンB群、ビオチンなど        皮膚代謝改善の補助として使用されることも

✅ 生活上の注意・スキンケア

対策        内容
手袋着用(2重構造)        水仕事時は「綿手袋+ゴム手袋」の2重が基本。湿気がこもらないように。
手洗い後の保湿        石けん後やアルコール後はすぐに保湿。
低刺激のハンドソープ        弱酸性・無香料タイプ推奨
アルコール手指消毒の頻度を調整        代わりに石けん洗浄&保湿で対応することも検討
こまめな保湿        朝・夜・手洗い後ごとに保湿剤を使用
刺激物との接触を避ける        洗剤、紙、染毛剤、植物、ラテックスなどに注意

 🔬 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:皮疹の形態や分布、症状の経過を確認します。生活習慣や使用している洗剤・手袋なども聞き取り、原因の手がかりを得ます。診察室ですぐに行える基本的な検査です。

  • パッチテスト:接触アレルギーの有無を調べます。疑われる物質を背中に貼り付け、48〜72時間後に反応を判定します。検査前は外用薬を中止する必要があり、生活上の注意も伴います。

  • 真菌鏡検(KOH検査):症状が白癬〔はくせん〕などの真菌感染と似ている場合に鑑別のため行います。皮膚の一部を採取し顕微鏡で観察する簡便な方法です。即日判定が可能です。

  • 細菌培養検査:じゅくじゅくや膿を伴う場合、二次感染が疑われるときに行います。採取した分泌液を培養し、原因菌や有効な抗菌薬を調べます。結果判明まで数日を要します。

  • 血液検査:アトピー体質やアレルギー関与が疑われるときに行われます。総IgEや特異的IgE、炎症マーカーを測定し、体質や炎症の程度を把握します。重症例や難治例の評価に有用です。

🔬 間違えやすい他の病気(鑑別)
疾患名 特徴 見分けポイント

アレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)
⇒金属・化粧品・植物などが原因 特定の物に触れた後に出現/範囲がハッキリしていることも

刺激性接触皮膚炎
⇒石けん・消毒液などの刺激物による炎症 繰り返すことで悪化/非アレルギー性/手荒れ型が多い

白癬(手の水虫)
⇒手のひら・指にカサカサ・皮むけ/かゆみあり 片手だけ/抗真菌薬が効く/検査で診断可能

汗疱(かんぽう/小さな水ぶくれ)
⇒手のひら・指にプチプチと水泡/かゆみ強い 春~夏に多い/左右対称/水泡が出るのが特徴

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
⇒手のひら・足の裏に膿をもった小さなブツブツ 繰り返す/膿は無菌/爪の変形・関節炎を伴うことも

アトピー性皮膚炎
⇒幼少期からの乾燥+かゆみ/季節で悪化 全身に症状/家族歴や他の部位の湿疹がヒントに

予防のポイント
日焼け止め(SPF30以上)を毎日使用する
強い日差しを避け、帽子や衣服で紫外線を防ぐ
足裏・手のひら・爪のホクロの変化を定期的に観察する
鏡や家族の協力で背中や見えにくい部位もチェックする
ABCDEルール(形・境界・色・大きさ・変化)を意識して確認する
摩擦や圧迫が繰り返される部位のホクロに注意する
怪しいしみやホクロを見つけたら早めに皮膚科を受診する
家族歴がある場合は特に定期的な検診を受ける

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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