
50代 男性のご相談
薬疹ってどんな病気?

医師の回答
薬疹(やくしん)は、薬を飲んだり、塗ったりした後に、皮ふに赤みやかゆみ・ブツブツなどの症状が出る反応のことです。


〜飲んだ薬や使った薬で、肌にブツブツやかゆみが出ることがあります〜
薬疹とは、薬が原因で起こる皮ふのトラブルです。
飲み薬(内服薬)やぬり薬、注射、点滴など、体に入った薬に対して体が反応して、皮ふに赤み・かゆみ・発疹などの症状が出ます。
薬疹(やくしん)とは、内服薬や外用薬、注射、点滴など体に投与された薬に反応して、皮膚に発疹やかゆみ、赤みなどを引き起こす皮膚疾患の総称です。どの薬でも起こる可能性があり、服薬後数時間から数週間後に症状が出ることもあります。多くはアレルギー反応に関連しており、一度起こると同じ薬で再発しやすい特徴があります。重症化すると、全身の粘膜や臓器に影響が及ぶこともあるため注意が必要です。
薬疹の病型には、じんましん型、発疹型、紅斑(こうはん)型、固定薬疹、光線過敏型など多様なタイプがあります。重症例では、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死融解症、薬剤性過敏症症候群などが代表的です。
主な原因
薬成分に対する免疫反応(アレルギー機序)
薬物代謝や排泄異常による体内蓄積
ウイルス感染が関連して免疫が過剰に反応
肝臓・腎臓など内臓疾患に伴う場合
好発部位は全身どこにでも起こり得ますが、体幹や四肢、顔に発疹が出ることが多く、口腔内や眼などの粘膜にも症状が現れることがあります。なりやすい人は、アレルギー体質のある方、免疫が弱っている方、肝臓や腎臓に機能低下がある方です。
経過は、初期には小さな紅斑やかゆみで始まり、掻破や炎症の広がりで全身化することがあります。悪化因子としては再投薬、紫外線、感染、ストレス、発熱などが挙げられます。慢性化すると色素沈着や皮膚の苔癬化(たいせんか)が残る場合もあります。早期に受診して原因薬を特定し中止することが、生活の質を大きく守るポイントとなります。

✅ 薬疹の治療に使われるお薬
◆ ① 軽症〜中等症の場合(紅斑型・固定薬疹など)
薬剤 分類 特徴
抗ヒスタミン薬 アレグラ®、タリオン®、ザイザル® など かゆみやアレルギー反応を抑える
外用ステロイド薬 ロコイド®、キンダベート® など 局所の炎症を抑える
内服ステロイド(短期) プレドニゾロン(例:10〜30mg/日) 全身発疹やかゆみが強いときに短期で使用
◆ ② 重症型(SJS/TEN/DRESSなど)
※ 必ず入院管理(皮膚科・救命科)が必要です
治療 内容
原因薬の即時中止 最重要/過去に使って問題なかった薬でも起こることあり
全身ステロイド療法 メチルプレドニゾロン点滴(ソルメドロール®)など
免疫抑制剤 シクロスポリン、IVIG(免疫グロブリン静注)など/重症例に適応
支持療法
・輸液、栄養管理
・創傷管理(火傷に準じる)
・感染予防(抗菌薬)
・眼科・耳鼻科・泌尿器科の粘膜ケア
血液浄化療法 血漿交換・PE療法(DRESSやTENの重症例で検討されることも)
🔬 病院で何を調べるの?
視診・問診:発疹の種類や分布、服薬歴の確認を行い、薬疹かどうかを推定します。薬の開始時期と症状発現の関係を整理することが重要です。
血液検査:白血球数や肝腎機能、炎症マーカーを測定し、全身への影響を確認します。特に重症薬疹では臓器障害の有無を早期に把握できます。
パッチテスト:皮膚に原因と疑われる薬の成分を塗布し、48〜72時間後に反応を観察します。外用薬が原因のときに有用ですが、全ての薬で判定できるわけではありません。
リンパ球刺激試験(DLST):血液中のリンパ球に薬剤を加えて反応を見る検査で、アレルギー性機序を確認します。結果は数日で出ますが、すべての薬疹に適合するわけではありません。
皮膚生検:局所麻酔をして皮膚の一部を採取し、顕微鏡で炎症の特徴を調べます。類似疾患(膠原病や感染症)との鑑別に役立ちます。
細菌培養・真菌検査:発疹部に膿やびらんがある場合、二次感染を否定するために行われます。
🔬 間違えやすい他の病気(鑑別)
疾患名 特徴 見分けポイントウイルス発疹(麻疹・風疹・突発性発疹など)
⇒発熱+体に赤い発疹/子どもに多い 病歴や接触歴/薬の内服なしでも出る/ウイルス検査で確認蕁麻疹(じんましん)
⇒数時間で出て消える膨らんだ赤み・かゆみ 急に出て急に消える/境界明瞭/薬疹は日単位で続く乾癬・湿疹・アトピー性皮膚炎
⇒慢性的な炎症やかゆみ/繰り返す 薬との関係が不明/ステロイドで改善しやすい膠原病(全身性エリテマトーデスなど)
⇒顔の赤み・全身の皮疹/関節痛・倦怠感 薬に関係なく長期間続く/血液検査で鑑別可能薬剤熱(発疹を伴わないことも)
⇒薬の副作用で発熱だけが出る 発疹がないが原因薬との時間的関連がヒント
予防のポイント 原因となった薬をお薬手帳やスマホに記録しておく 新しい薬を処方される際に薬疹の既往を必ず伝える 市販薬やサプリメントも自己判断で使用しない 保湿と低刺激のスキンケアで皮膚バリアを守る 発疹やかゆみが出たら早めに服薬を中止せず受診する 紫外線や発熱時の服薬は注意して観察する 家族にアレルギー体質がある場合は特に慎重に薬を使用する 同じ薬を再度使わないよう医療機関に情報共有する
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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