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30代 男性のご相談

痒疹ってどんな病気?

医師の回答

痒疹(ようしん)は、強いかゆみをともなうブツブツ(発疹)がくり返しできる皮膚の病気です。かゆみがとても強いため、掻いてしまうことで皮ふが厚くなったり、色が変わったりすることもあります。

〜かゆくてつい掻いちゃう…そのブツブツ、治りにくい「ようしん」かも?〜
痒疹とは、強いかゆみを伴う赤いブツブツ(丘疹:きゅうしん)や硬いしこり(結節:けっせつ)が、体のあちこちに繰り返しできる皮膚の病気です。

痒疹(ようしん)とは、強いかゆみを伴う赤い小さなブツブツ(丘疹〔きゅうしん〕)や硬いしこり(結節〔けっせつ〕)が全身に繰り返し現れる皮膚疾患です。かゆみが非常に強く、掻くことでさらに悪化しやすく、治りにくい点が特徴です。子どもから高齢者まで幅広い年齢で発症することがあり、原因が明確でない場合も少なくありません。慢性化すると日常生活に支障をきたすことがあります。

痒疹にはいくつかの病型や代表例があります。たとえば、肘や膝・太もも・おしり・背中などに出やすい典型的なタイプ、加齢に伴ってみられる老人性痒疹、アトピー性皮膚炎に似た経過をたどるタイプなどが知られています。

主な原因
  • 虫さされ、乾燥、衣類や摩擦による外的刺激

  • アトピー体質や乾燥肌などの皮膚バリア機能の低下

  • アレルギー反応やストレスによる悪化

  • 肝臓・腎臓など内臓疾患に伴う場合

  • 高齢者に多い体質変化によるもの

好発部位は肘や膝、太ももやおしり、背中など、衣類や寝具の摩擦を受けやすい部位に多くみられます。体質的にはアトピー性皮膚炎の既往や乾燥肌のある人、高齢者で皮膚が薄く乾燥しやすい人に多い傾向があります。

経過としては、初期に赤い小さなブツブツが出現し、かゆみのために掻くことで炎症が悪化してかさぶたや湿潤(しつじゅん)を伴うようになります。その後、繰り返しの刺激で皮膚が厚く硬くなる苔癬化〔たいせんか〕や色素沈着が起こることがあります。乾燥、汗、摩擦、心理的ストレス、体調不良などで悪化しやすく、早期に皮膚科を受診して適切な治療を行うことが、かゆみの軽減と生活の質の改善につながります。

✅ 痒疹の治療に使われる主なお薬

◆ ① 外用薬
薬剤        分類        使用目的・特徴

ステロイド外用薬        ロコイド®、リンデロン-V®、アンテベート®など        炎症とかゆみを抑える第一選択/病変の重症度で強さを使い分け
タクロリムス軟膏(プロトピック®)        免疫調節剤        顔や首などのステロイドを避けたい部位に/慢性化した軽症病変に
保湿剤        ヒルドイド®、ワセリン、尿素軟膏など        皮膚の乾燥・バリア機能低下を補うために必須
抗ヒスタミン外用薬(レスタミン®など)        かゆみ軽減        軽症のかゆみ補助として使用されることも

◆ ② 内服薬
分類        代表薬        使用目的

抗ヒスタミン薬        アレグラ®、ザイザル®、ビラノア® など        かゆみを抑える基本薬
抗アレルギー薬        タリオン®、ルパフィン®など        ヒスタミン以外の炎症経路にも作用
抗不安・抗うつ薬(補助的)        四環系抗うつ薬など        痒疹に伴う不眠・掻破衝動の軽減目的で使われることも
ステロイド内服(短期)        プレドニゾロンなど        炎症が強く外用で不十分なときに短期的に使用
免疫抑制薬        シクロスポリン、メトトレキサートなど        難治性の慢性痒疹に限り専門医が使用することも

◆ ③ 補助療法・その他

光線療法(ナローバンドUVB):慢性の痒疹に有効な場合あり
心理的アプローチ:ストレスや掻破癖が悪循環に関与するため
冷却療法・アイスパック:一時的なかゆみ軽減に有効
睡眠改善:就寝中の掻破を防ぐ目的で睡眠導入薬を使用することも

 🔬 病院で何を調べるの?

  •  視診・問診:皮疹の形態や分布、経過を確認します。かゆみの程度や発症のきっかけもあわせて聴取し、他の皮膚疾患との鑑別に役立ちます。
  • パッチテスト:アレルギー性接触皮膚炎の関与を調べます。皮膚に少量のアレルゲンを貼付し、48〜72時間後に反応を確認します。外用薬は事前に中止が必要です。

  • 血液検査:炎症マーカー(好酸球数やCRP)、IgE値や特異的IgEを測定し、アレルギー体質や全身性の要因を調べます。肝機能・腎機能も確認されることがあります。

  • 皮膚生検:難治性や典型的でない皮疹の場合に行います。局所麻酔で皮膚の一部を採取し、顕微鏡で病理学的に確認します。結果が出るまでに数日かかり、瘢痕が残る可能性があります。

  • 細菌培養:かき壊しによる二次感染が疑われるときに行います。滲出液や膿を採取し、原因菌と適切な抗菌薬を判定します。

  • 真菌鏡検(KOHテスト):白癬〔はくせん〕など真菌感染との鑑別のために行います。角質を採取し、顕微鏡で菌糸の有無を調べます。

🔬 間違えやすい他の病気(鑑別)
疾患名 特徴 見分けポイント

アトピー性皮膚炎
⇒子ども〜若年者に多い/乾燥肌+かゆみ 左右対称/顔・肘・膝の内側/アトピー素因がカギ

蕁麻疹(じんましん)
⇒急に赤いふくらみが出て、数時間で消える 丘疹よりも「地図状」/短時間で消える/慢性型もあり

虫刺され(反応性痒疹)
⇒特定の虫に刺されて赤くはれる 季節・刺された部位に集中/刺された記憶がヒント

皮膚そう痒症
⇒明らかな湿疹がないのに全身がかゆい 高齢者や内臓疾患に多い/湿疹がない=重要ポイント

疥癬(かいせん)
⇒ダニが皮ふに寄生してかゆくなる/夜間に悪化 手指の間・陰部など特有の部位/家族内に感染者がいることも

扁平苔癬
⇒紫色のかゆいブツブツ/口の中にも出ることがある 光沢のある丘疹/爪や口の変化/組織検査で確定

慢性湿疹(ヴィダール苔癬など)
⇒掻きすぎて皮ふがゴワゴワに厚くなる 単独の部位に集中/ストレスや慢性刺激が誘因に

予防のポイント
入浴後や就寝前にしっかり保湿する
低刺激性の石けん・洗浄料を使う
爪を短く切り、掻破を防ぐ工夫をする
綿など通気性のよい衣類を選ぶ
汗や摩擦を避けるよう心がける
規則正しい生活と十分な睡眠をとる
ストレスをためない工夫をする
かゆみが強い時は早めに皮膚科を受診する

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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