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伝染性紅斑【りんご病】ってどんな病気?

医師の回答
伝染性紅斑は「りんご病」とも呼ばれるヒトパルボウイルスB19による感染症で子どもに多くみられます。

〜ほっぺが真っ赤に!風邪のような症状のあとに出る発疹にご注意〜 伝染性紅斑は「りんご病」とも呼ばれるヒトパルボウイルスB19による感染症で子どもに多くみられます。
感染後10~20日で微熱やかぜのような症状があらわれます。頬がりんごのように赤くなり、手足に網目状の赤いブツブツがみられます。
かゆみを伴うこともあり、これらの症状は1週間前後で消えます。腕や脚にむくみのある赤み、紫色にみえるあざなどがみられることがあります。
発疹が見られる頃にはすでに感染力はなくなっています。
妊婦が感染すると胎児水腫を起こすことがあります。
伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)は、ヒトパルボウイルスB19というウイルスによって引き起こされる感染症で、特に乳幼児から学童期の子どもに多くみられます。頬が赤くなる特徴的な発疹の様子から「りんご病」とも呼ばれています。一度かかると免疫がつきますが、まれに大人にも感染し、特に妊婦が感染した場合には胎児への影響があるため注意が必要です。
感染経路は飛沫感染(咳やくしゃみ)や接触感染(鼻水・唾液など)で、感染から4〜14日の潜伏期間を経て、まず微熱、咳、鼻水、だるさ、関節痛など風邪に似た症状があらわれます。この段階が最も感染力が強く、発疹が出る頃にはすでに感染力はほとんどなくなっているとされています。
風邪様の症状の1〜2日後に、両頬がりんごのように赤くなる紅斑があらわれ、その後、腕や脚・体幹にレース状または網目状の発疹が広がります。発疹はかゆみを伴うこともありますが、通常は1週間前後で自然に消えます。再度発疹が出る「再燃」もまれにありますが、一時的です。子どもの場合、全身状態は比較的良好なことが多いです。
治療法としては、ウイルスに対する特効薬はなく、発熱や関節痛に対する解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)や、かゆみに対する抗ヒスタミン薬・外用薬などの対症療法が基本です。水分補給と安静を心がければ、通常は1〜2週間で自然に回復します。
登園・登校については、発疹が出たあとは感染力がないため基本的には可能とされていますが、施設の判断に従いましょう。体調が悪い場合やかゆみが強い場合には無理をせず休むことが勧められます。家庭では手洗い・うがいを習慣化し、タオルや食器の共有は避けるなど、感染予防を徹底することが重要です。
特に注意が必要なのが妊婦です。妊娠中にパルボウイルスに感染すると、胎児に貧血や胎児水腫(全身のむくみ)を起こすリスクがあります。妊娠中に流行地域へ出向く、あるいは家庭内で発症者が出た場合は、早めに産婦人科・内科・皮膚科などで抗体検査や超音波検査を受けることが勧められます。
✅ 治療に使われるお薬
ウイルス感染症のため、特効薬やワクチンはありません。
対症療法が基本です。
◆ 小児・軽症例(ほとんどがこのタイプ)
発熱・頭痛など アセトアミノフェン(カロナール®)などで解熱・鎮痛
かゆみ(まれ) 弱めの抗ヒスタミン薬(内服・外用)で対応することも
◆ 成人・妊婦・持病がある場合は注意
成人女性 手首・膝などの関節痛が強く出ることあり(数週間続くことも)/NSAIDsやステロイド内服が処方されることもあり
妊婦 妊娠中(特に20週未満)の感染で胎児貧血・流産のリスクあり → 定期的なエコー・血液検査が必要
基礎疾患あり(溶血性貧血など) 一過性の赤血球産生停止による重度の貧血(赤芽球癆)を起こすことがあり、入院管理・輸血などを要する場合も
🔬 病院で何を調べるの?
お子さんで典型的な発疹がある場合:診察と問診のみで診断できることが多いです。
大人で関節痛が強く発疹がない場合や、妊婦の場合:血液検査でのウイルス抗体チェックが推奨されます。
🔍 間違えやすい!類似疾患一覧
風疹(ふうしん)
⇒微熱+顔から始まる赤い発疹 発疹は顔→全身/リンパの腫れあり/ワクチン未接種歴あり
麻疹(はしか)
⇒高熱+全身に赤い発疹/目の充血・咳 発熱が強く、発疹前から咳・鼻水・目の症状/重症化しやすい
薬疹(薬による発疹)
⇒飲み薬が原因で全身に発疹 薬の服用歴あり/左右対称に出ることが多い
多形紅斑(たけいこうはん)
⇒ターゲット(標的)状の発疹/四肢に出やすい くり返す/薬や感染が引き金/発疹がやや立体的
川崎病(かわさきびょう)
⇒高熱+目・唇・手足の赤み/心臓に注意 5日以上の高熱/手足のむくみ/BCG跡が赤くなるなど
溶連菌感染症(ようれんきん)
⇒咽頭痛+赤い発疹(猩紅熱) 舌が赤くなる(いちご舌)/抗生剤が必要/のどの痛み強い
アレルギー性皮膚炎
⇒かゆみ+発疹/左右非対称も 原因に心当たりあり/かゆみが強い/顔に限定されにくい
予防のポイント
1. こまめな手洗い・うがい
2. 咳エチケットを守る
3. 共有物に注意する
4. 体調不良のときは無理をしない
5. 妊婦さんは人混み・感染流行に注意
発疹が出ている時期には感染力はほぼなくなっています。
そのため、発疹後の登園・登校は可能とされることが多いですが、施設ごとの方針に従いましょう。
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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