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30代 男性のご相談

丹毒・蜂窩織炎ってどんな病気?

医師の回答

丹毒は皮膚の浅いところ、蜂窩織炎は皮膚の深いところに小さなキズから細菌が感染し炎症が起こる病気です。

〜「急に腫れた」「熱を持っている」…それ、皮膚の感染症かも!?〜
丹毒は皮膚の浅いところ、蜂窩織炎は皮膚の深いところに小さなキズから細菌が感染し炎症が起こる病気です。
全身のどの部位でもみられますがとくに顔(丹毒は耳かきや鼻いじりでよく発症します)や脚に起こりやすく、
むくみを伴った赤いはれが急速に広がり痛みます。 発熱や頭痛などの全身症状を伴うことがあります。

皮膚が突然赤く腫れてきたり、熱を持って痛みが出たり、全身に発熱やだるさを感じる…。そんな症状があるとき、「丹毒(たんどく)」や「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と呼ばれる皮膚の感染症の可能性があります。どちらも皮膚やその下の組織に細菌が感染して炎症を引き起こす病気で、早期の対応がとても重要です。

この2つは見た目や症状が似ていることも多いのですが、感染する深さや原因菌に違いがあります。丹毒は主に表皮から真皮の浅い層に感染が起こるもので、原因菌としては溶血性連鎖球菌(いわゆる溶連菌)が多く見られます。比較的、境界がはっきりした赤い腫れが特徴で、特に顔や耳まわりに起こりやすく、「鼻をいじったあとに頬が急に腫れた」といったケースも少なくありません。

一方、蜂窩織炎は真皮の深い部分から皮下脂肪層にまで感染が広がる病気で、原因菌には連鎖球菌に加えて黄色ブドウ球菌も関与することがあります。丹毒に比べて赤みの広がりに境界がなく、脚やふくらはぎなどに多く発症し、広い範囲が腫れて強い痛みや熱感を伴います。とくに脚にむくみがある方では急激に悪化することがあり、高齢者や糖尿病のある方では再発を繰り返すこともあります。

いずれも皮膚のバリアが壊れている場所、たとえば小さな傷、ひび割れ、虫刺され、水虫(白癬)などから細菌が侵入することがきっかけとなって発症します。感染が進行すると、赤み・腫れ・熱感・痛みだけでなく、発熱や全身の倦怠感といった全身症状も現れ、症状が急速に悪化する可能性があります。

治療の基本は、抗生物質(抗菌薬)の内服または点滴です。比較的軽症の場合はペニシリン系やセフェム系の抗菌薬を内服することで改善が見込めますが、発熱が強い、痛みがひどい、全身症状がある場合などは入院や点滴治療が必要になることもあります。冷却や安静も、腫れや痛みの軽減に効果的です。ただし、抗菌薬は必ず医師の指示に従い、症状が軽快しても自己判断で中断せず、決められた期間しっかりと飲みきることが重要です。中途半端な治療は再発や耐性菌の原因になります。

再発や重症化を防ぐためには、足の水虫や小さな傷を放置せず、日常的なスキンケアや保湿で皮膚のバリア機能を維持することが大切です。むくみ(浮腫)がある方には、弾性ストッキングの着用も効果が期待できます。また、がん治療中やステロイド使用中など免疫力が低下している方は特に注意が必要です。

「ふくらはぎが赤く腫れて熱を持っている」「顔が急に腫れて発熱している」「虫刺されがどんどん腫れてきた」「以前に蜂窩織炎と診断されたことがあるけれど、また同じような症状が出てきた」――こうした症状がある場合は、なるべく早く皮膚科を受診してください。

✅ 治療に使われるお薬(保険適用)
◆ ①【第一選択:抗菌薬(抗生物質)】
セファレキシン ケフレックス® 第1世代セフェム/連鎖球菌・ブドウ球菌に有効/軽症例で内服可
アモキシシリン サワシリン®、パセトシン® 溶連菌に有効。クラブラン酸との合剤(オーグメンチン®)も使用される
クラリスロマイシン クラリス® ペニシリンアレルギーの代替薬として選択肢
クリンダマイシン ダラシン® 抗毒素作用もあり、重症例や耐性菌対策に
セファゾリン(注射) セファメジンα®など 入院が必要な中等症〜重症例に点滴静注
バンコマイシン バンコマイシン® MRSA疑い時に(耐性菌が疑われる場合)使用される

📌 重症例は入院の上、点滴抗菌薬で治療されることもあります。

◆ ②【補助療法】
解熱鎮痛薬 アセトアミノフェン(カロナール®)などで痛み・発熱の緩和
ステロイド(例外的) 重度の炎症や合併症で一時的に使われることも(まれ)
保湿・スキンケア 原因となる皮膚バリアの破綻を予防・改善(傷・乾燥対策)
足の挙上 下肢の蜂窩織炎では、腫脹の軽減に効果的です

 🔬 病院で何を調べるの?

基本的な治療は抗生物質(抗菌薬)の内服または点滴です。

  • 軽症の場合:ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬を内服

  • 重症・発熱時:点滴治療が必要な場合も

  • 痛みや腫れに対して:冷却や安静が有効

  • 再発防止には:抗菌薬は必ず医師の指示通りに飲み切ること

⚠️自己判断で抗生物質を中断するのは再発や重症化の原因になります。

 

🔍 類似疾患(見た目や症状が似ている疾患)

 虫刺され(昆虫咬傷)

⇒赤く腫れてかゆみ・痛みあり 数時間~数日で改善/刺し跡があることが多い

 深在性真菌症(白癬・カンジダなど)

⇒赤くジュクジュク/かゆみ中心 境界がリング状/真菌検査で診断可能

 接触皮膚炎(かぶれ)

⇒触れた部位に赤み・かゆみ・水疱など 境界がはっきり/左右対称のことも多い

 痛風・偽痛風発作

⇒関節が急に赤く腫れて激痛/熱をもつ 関節中心/尿酸値異常あり/膿なし

 血栓性静脈炎

⇒静脈に沿って赤く腫れる/痛みあり 血管に一致/皮ふ自体よりも血管の炎症が主

 壊死性筋膜炎(緊急対応疾患)

⇒激痛・発赤・腫脹が急速に悪化/ショック症状も 重症例/痛みに対して皮膚症状が軽い場合あり/要緊急入院

 蜂巣炎後の浮腫(リンパ浮腫など)

⇒繰り返す蜂窩織炎のあとに足がむくむ 発赤・熱感はない/むくみのみ継続する

予防のポイント
足の水虫や小さな傷の早期治療
保湿ケアで皮膚バリアを守る
むくみがある方は弾性ストッキングの活用
免疫力が低下している方は日常のスキンケアと感染予防を意識

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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