
50代 女性のご相談
眼瞼黄色腫ってどんな病気?

医師の回答
眼瞼黄色腫は、上まぶたの目頭側に黄色味がかった平らな盛り上がり[隆起(りゅうき)]がみられる病気です。
〜まぶたにできた黄色っぽいふくらみ、それ「脂質」が関係しているかも!?〜 眼瞼黄色腫は、上まぶたの目頭側に黄色味がかった平らな盛り上がり[隆起(りゅうき)]がみられる病気です。
まぶたにコレステロールが沈着している状態で、半数は脂質異常症 もしくは 中性脂肪やコレステロールなどの
脂質の代謝異常を伴いますが、脂質異常症(または脂質の代謝異常)でなくても発症する場合もあります。
眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)とは、上まぶたの内側、特に目頭寄りに左右対称で現れやすい、黄色味を帯びた柔らかいふくらみや斑点のことを指します。これは皮膚内にコレステロールを含む泡沫細胞が蓄積することにより生じる皮膚の良性腫瘍の一種で、痛みやかゆみといった自覚症状はほとんどありませんが、見た目が気になるため美容目的で皮膚科を受診される方が多い疾患です。
主に40代から60代の女性に多く見られ、血液検査でLDLコレステロールや中性脂肪といった脂質の値が高い方、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病を抱えている方、また家族内に同様の症状を持つ方に多く発症します。脂質異常症(高脂血症)との関連が強く、実際に眼瞼黄色腫の患者さんの約半数が脂質代謝の異常を伴っていますが、なかには脂質の値が正常であっても発症するケースもあります。加齢や遺伝的な体質、さらには糖尿病、肝機能障害、甲状腺機能異常などとの関連も指摘されており、必ずしも脂質異常がなければ安心というわけではありません。
眼瞼黄色腫は、最初はごく小さな黄色い斑点として現れ、時間の経過とともにゆっくりと広がったり、盛り上がったりしてくることがあります。悪性化することはほとんどありませんが、複数の病変がくっついて目立つようになると、視界に入って気になったり、メイクで隠しづらくなるなど、日常生活の中で煩わしさを感じるようになることも少なくありません。
治療には主に炭酸ガスレーザー(CO₂レーザー)や外科的切除が用いられます。CO₂レーザーは比較的浅い病変に適しており、傷あとが目立ちにくく、日帰りでの処置が可能です。一方、病変が大きい場合や深部に及んでいる場合には、外科的に切除することが選択されることもあります。この場合、縫合を伴うこともありますが、再発率は比較的低く、確実な治療が可能です。なお、薬による治療では、スタチン系などの脂質異常症治療薬を内服し、血中脂質をコントロールすることが推奨されます。ただし、薬だけで既存の黄色腫が消えることは非常にまれであり、あくまで再発防止や全身の健康管理の一環として行われます。
予防や再発防止のためには、まず食生活の見直しが大切です。飽和脂肪酸や糖分を多く含む食事を控え、野菜や魚を中心としたバランスの良い食事を心がけるとともに、適度な運動を習慣化することで代謝を高めましょう。さらに、定期的な血液検査による脂質や肝機能のチェックも欠かせません。まぶたに黄色っぽい変化を感じた場合には、早めに皮膚科を受診し、眼瞼黄色腫かどうかの診断と必要に応じた治療を受けることが大切です。
見た目の変化にとどまらず、体内の脂質代謝異常や生活習慣病のサインである可能性もあるため、「しみかな?」と思っていたら実は眼瞼黄色腫だった、というケースも少なくありません。「まぶたに黄色いできものが現れてきた」「左右対称に広がってきてメイクで隠れない」「家族にも似たようなものがある」という方は、一度皮膚科での診察を受けることをおすすめします。
✅ 眼瞼黄色腫に関連するお薬
① 【脂質異常症がある場合:内服治療】
スタチン系 アトルバスタチン(リピトール)
ロスバスタチン(クレストール) LDLコレステロールを下げる(第一選択)
フィブラート系 ベザフィブラート(ベザトール)
フェノフィブラート(リピディル) 中性脂肪を下げ、HDLを上げる
EPA製剤 エパデール、ロトリガ TGを下げ、動脈硬化予防にも
🔸 脂質異常症がない場合でも予防的に使われることがある
🔸 薬だけで既存の黄色腫が消えることはまれだが、進行や再発の予防目的で使われます。
② 【外用薬:ほとんど使用されない】
現時点で黄色腫に有効な塗り薬(外用薬)は存在しません。
ハイドロキノンやステロイドなどは無効です。
美容クリームでは改善しないため、使用は推奨されません。
「もしかして眼瞼黄色腫かも…」と思ったら?
自分で判断せずに皮ふ科へ相談を!
当院では、スマホで受けられるオンライン診療も対応しています
症状の確認からお薬の処方まで、自宅から気軽にご相談ください
🔬 病院で何を調べるの?
眼瞼黄色腫そのものは皮膚の表面に現れる症状であり、本体の問題は体内の脂質代謝にあるケースも多いため、
皮膚科だけでなく内科的な検査(血液検査)もセットで行うことが重要です。
🩺 間違えやすい病気(鑑別疾患)
稗粒腫(はいりゅうしゅ)
⇒目の周りにできる白くて硬いつぶ 1つずつ独立している/白色~黄色で、押すと角質が出ることも
イボ(軟性線維腫・脂漏性角化症)
⇒やや盛り上がった肌色~茶色の良性腫瘍 色や形にばらつきあり/黄色くないことが多い
脂肪腫
⇒皮ふの下のやわらかいしこり より深部/まぶたには少ない/丸くぷにぷにしている
眼瞼がん(まれ)
⇒赤くただれたり出血する腫瘍 痛みや出血・急な拡大があれば要精査
予防のポイント
眼瞼黄色腫は自然に消えることはなく、体の中の異常が皮膚にサインとして出ていることもあります。
「コレステロールに気をつける生活」が、予防と再発防止につながります。
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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