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50代 男性のご相談

股部白癬【いんきんたむし】ってどんな病気?

医師の回答

白癬菌というカビの一種が股に感染する病気で、一般的に「いんきんたむし」とも呼ばれています。 股の周囲に小さめのブツブツ[小丘疹]があらわれ、感染した場所を中心に太ももや性器周辺、足の付け根からお尻のあたりまで広がります。

〜股や太ももの内側がかゆい…それ、「いんきんたむし」かもしれません〜

股部白癬(こぶはくせん)とは、股(また)や太ももの内側、おしりのまわりなどにできる皮膚の真菌感染症で、一般的には「いんきんたむし」とも呼ばれています。これは、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が皮膚に感染して炎症を起こすことで生じます。症状としては、赤み、かゆみ、皮むけ、かさぶた、環状の発疹などが現れ、強いかゆみを伴うのが特徴です。

感染部位は主に太ももの内側や鼠径部(股のつけ根)、おしりの周辺で、陰部そのものではなくその周辺の皮膚に症状が出ます。精巣や外陰部の粘膜には通常感染しないため、陰嚢だけがかゆい場合は「陰嚢湿疹」の可能性もあります。

股部白癬は、汗をかきやすい夏場や、通気性の悪い下着を長時間着用した状態などで発症しやすくなります。また、自分の足の水虫(足白癬)や爪白癬からうつることも多く、体のほかの部位から菌が広がるケースが少なくありません。さらに、共有のタオル、バスマット、ジムや部活のロッカールームなどからの接触感染も原因となることがあります。

特に発症しやすいのは、10代〜50代の男性や、スポーツをしている人、足白癬や爪白癬を持っている人です。また、下着や運動着を長時間着用する生活スタイルの人や、免疫力が低下している人にも起こりやすい傾向があります。

症状は、梅雨や夏など汗をかきやすい時期に悪化しやすく、かゆみにより患部をかきこわすことで皮膚が傷つき、さらに炎症や感染が広がることもあります。また、市販薬を自己判断で使い続けてしまうと、かえって症状をこじらせることもあるため注意が必要です。

治療には必ず「抗真菌薬」が必要です。かゆみ止めや保湿剤だけでは完治しないため、外用薬(塗り薬)を毎日きちんと塗ることが基本となります。症状が広範囲だったり、爪や足など他の部位にも感染がある場合には、内服薬(飲み薬)が使われることもあります。また、かゆみが強い場合には抗ヒスタミン薬を併用することもあります。

見た目が改善しても、皮膚の中に白癬菌が残っていることがあるため、医師の指示があるまでしっかり治療を続けることが大切です。

再発や感染を防ぐためには、日常生活での予防も重要です。汗をかいた後は早めにシャワーを浴びて清潔に保ち、通気性の良い下着(綿素材)を選ぶようにしましょう。タオルや下着、バスマットの共用は避け、足の水虫を治療中の方は股部白癬も併せてケアする必要があります。ジムや部活などのロッカールームを使用した後は、汗をしっかり拭くか、シャワーで洗い流すように心がけましょう。

「場所が場所だけに病院に行きにくい」と感じる方も多いですが、股部白癬はごく一般的な皮膚の病気です。

◇ 股部白癬に使われるお薬(主に抗真菌薬)
① 【外用薬(塗り薬)】※通常の第一選択
・ 抗真菌薬外用(白癬菌を殺す)

テルビナフィン   ラミシールクリーム/スプレー  白癬に最もよく使われる定番
ルリコナゾール   ルリコン軟膏/クリーム     皮膚への刺激が少なく使いやすい
ラノコナゾール   ペキロン軟膏 1日1回でOK     市販薬にも類似あり
ビホナゾール    マイコスポール         抗炎症効果もある
ケトコナゾール   ニゾラールクリーム       皮膚カンジダにも有効
エフィナコナゾール ルコナック(主に爪)      ※爪白癬があれば併用することも

・ 通常 1日1回、4週間程度継続使用。
・ 見た目が治っても、2週間程度は追加して塗るのが再発防止に重要。

② 【内服薬(飲み薬)】※広範囲・難治性・再発例に
◇ 抗真菌薬内服(医師の判断で使用)

テルビナフィン     ラミシール錠    最もよく使われる飲み薬。1日1回
イトラコナゾール      イトリゾール    広範囲白癬や爪白癬にも使用される
ホスラブコナゾール   ネイリンカプセル     爪白癬向けだが皮膚型にも有効例あり

・ 飲み薬を使う際は、肝機能検査(血液検査)を行うのが一般的です。

③ 【補助的に使われる薬】

抗ヒスタミン薬                  アレグラ、ザイザルなど                 かゆみが強い場合の補助内服
抗菌薬                                    ゲンタシン軟膏など                           二次感染(掻き壊し)があるとき
ステロイド+抗真菌薬     リンデロンDP+抗真菌剤など       炎症と感染が同時にあるときのみ短期使用(単独のステロイドはNG)

× 注意:使ってはいけない薬
ステロイド単独(リンデロン、ロコイドなど)
→ かゆみが一時的におさまっても、白癬菌が悪化・広がることがあり要注意です。

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当院では、スマホで受けられるオンライン診療も対応しています
症状の確認からお薬の処方まで、自宅から気軽にご相談ください

 🔬 病院で何を調べるの?

✅ 1. 視診(見た目の観察)

まず医師が皮膚の状態を目で見て確認します。
股部白癬は、赤く広がる輪状の発疹・かゆみ・皮むけなどが特徴で、太ももの内側やそけい部(股のつけ根)に左右対称に見られることが多いです。

ただし、湿疹やカンジダ、接触皮膚炎など似た症状の疾患も多いため、視診だけでは確定できない場合もあります。

✅ 2. 皮膚の一部を採取して顕微鏡検査(KOH検査)🔬

確定診断のために、皮膚の表面を少し削り取り(角質検査)、顕微鏡で白癬菌(カビ)を確認します。
「KOH(ケーオーエイチ)法」と呼ばれる方法で、菌の有無を短時間で調べられる簡便な検査です。

👉 白癬菌が確認できれば“股部白癬”と確定診断となり、抗真菌薬での治療が開始されます。

✅ 3. 必要に応じて培養検査

ごくまれに、診断が難しい場合や他の感染症が疑われる場合には、皮膚片を培養して菌の種類を特定することもあります。ただし、結果が出るまでに数日〜数週間かかることがあります。

✅ 4. 足や爪のチェック(同時感染の確認)

股部白癬の患者さんの多くに、**足白癬(足の水虫)や爪白癬(爪の白癬菌感染)**が同時に存在します。
医師は股部だけでなく、足の裏・指の間・爪の状態もチェックし、必要があればその部位の治療もあわせて行います。

✅ 5. 湿疹との見極め(鑑別診断)

皮膚のかゆみや赤みがあると、湿疹やカンジダ症、接触皮膚炎、陰嚢湿疹などとの区別が必要になります。
→ 顕微鏡検査で白癬菌が見つからなければ、他の皮膚炎の可能性が高くなります。

📝 検査の流れ(来院時のイメージ)
  1. 問診:かゆみの部位・期間・症状の経過などを確認

  2. 視診:発疹の形や分布を確認

  3. 皮膚採取 → 顕微鏡検査

  4. 必要なら足や爪の確認/追加検査

 

いんきんたむしと間違えやすい病気って?
「これ、いんきんたむしかな?」と思っても、実は別の病気だった!ということもあります⚠️

・ カンジダ間擦疹

⇒赤みが強くジュクジュク+小さなポツポツ(衛星病変) 抗真菌薬でも白癬菌とは別の薬が必要/こすれる部分に左右対称

・ 接触皮膚炎(かぶれ)

⇒新しい下着・洗剤などが原因で赤くただれる 境界がくっきり/原因物質が思い当たることが多い

・ 逆(内)乾癬

⇒乾癬が股・わきなどに出たタイプ/赤みが鮮やか、かゆみ軽度 白い粉状の鱗屑が少ない/膝・肘・頭皮の乾癬歴を確認

・ 疥癬(かいせん)

⇒夜間かゆみが強く、体幹や手首にもブツブツ ダニのトンネルが手指間などにあり、KOH検査で虫体検出

・ エリスロプラスマ(紅色陰癬)

⇒細菌(コリネバクテリウム)感染で赤〜茶色のパッチ ウッド灯でコーラルレッドに蛍光/かゆみは軽度

・ 汗疹(あせも)

⇒細かな赤いブツブツ、夏に悪化 輪っか状にならない/数日で軽快することが多い

・ Hailey-Hailey病

⇒家族歴あり・股やわきに痛みとびらん 慢性再発性/真菌検査陰性、他部位にも線状びらん

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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